雇用調整助成金の申請書類が簡素化


新型コロナウイルス拡大による緊急事態宣言により危機に陥っている中小企業にとって、従業員の休業手当を支払うための「雇用調整助成金」は雇用を守るための命綱と言えます。ただ申請手続きが難しいという声が相次いでいます。申請手続きを始めて数週間経っても、何度も追加の書類を求められ、受理されたのかどうかもわからないというケースもあるようです。これまで雇用調整助成金の特例措置について紹介してきましたが、そもそも申請ができない企業が多いのが実情です。

5月6日にようやく厚生労働省から、雇用調整助成金の申請手続の更なる簡素化についてお知らせがありました。

雇用調整助成金の申請書類等を大幅に簡素化

新型コロナウイルス感染症に係る雇用調整助成金の特例措置に関する申請書類等については、大幅に簡素化し、事業主の申請手続きの負担軽減と支給事務の迅速化を図りましたとのことです。

記載事項を約5割削減

73事項→38事項に削減(▲35事項)

  • 残業相殺制度を当面停止(残業時間の記載不要に)
  • 自動計算機能付き様式の導入により記載事項を大幅に削減

記載事項の大幅な簡略化

  • 日ごとの休業等の実績は記載不要(合計日数のみで可)

添付書類の削減

  • 資本額の確認の「履歴事項全部証明書」等を廃止
  • 休業協定書の労働者個人ごとの「委任状」を廃止
  • 賃金総額の確認のための「確定保険料申告書」を廃止(システムで確認)

添付書類は既存書類で可

  • 生産指標→「売上」が分かる既存の書類で可
  • 出勤簿や給与台帳でなくても、手書きのシフト表や給与明細でも可

計画届は事後提出可能(~6月30日まで)

【計画届に必要な書類】休業の場合

書類名 簡素化内容(記載事項29事項→21事項(▲8事項))
様式第1号(1)休業等実施計画(変更)届 事後提出(申請時に提出)を可能に(~6/30(火)まで)
様式特第4号 雇用調整事業所の事業活動の状況に関する申出書 ・確認書類は「売上」が分かる既存書類のコピーで可に
売上簿、営業収入簿、会計システムの帳票などで可)
様式第1号(3) 休業・教育訓練計画一覧表 ・作成不要(様式第5号(3)として提出可)
様式1号(4)雇用調整実施事業所の雇用指標の状況に関する申出書 ・作成不要
確認書類①休業協定書・教育訓練協定書 ・労働者代表選任届に添付を求めていた個別の委任状を不要に
確認書類②事業所の状況に関する書類 既存の労働者及び役員名簿のみで可
・中小企業の人数要件を満たせば、資本額を示す書類は不要に

【支給申請に必要な書類】休業の場合

書類名 簡素化内容(記載事項44事項→17事項(▲27事項)
様式特第7号支給申請書 ・自動計算機能付き様式とし、記載事項を大幅に削減
・事業所の所在地等の記載は省略可
様式特第8号助成額算定書 ・自動計算機能付き様式とし、記載事項を大幅に削減
残業相殺の停止により、残業時間の記載不要に
様式特第9号休業・教育訓練計画一覧表 日付毎の記載は不要とし、日数合計のみで可
残業相殺の停止により、残業時間の記載不要に
様式特第6号支給要件確認申立書 ・「はい」「いいえ」を簡易に回答可能な様式に変更
確認書類①労働保険料に関する書類 添付不要
確認書類②労働・休日及び休業・教育訓練の実績に関する書類 ・出勤簿、タイムカード以外にも、手書きのシフト表などでも可
・給与台帳以外にも、給与明細の写しなどでも可

助成金の申請はなぜ難しい?

助成金は「融資」ではなく「支給」されるものであり、返済の必要はありません。 そのため、不正受給防止のため申請書類が多く複雑になっているという理由もあると思います。申請書類には専門用語が多く計算方法が分かりにくいので、社会保険労務士に依頼しないと難しいのが実情です。
会社をよく知る社会保険労務士と顧問契約を結んだ企業は問題ありませんが、今回のコロナ禍において依頼するスポット契約の場合、会社の実情すべてを一からチェックした上申請しなければならず不可能に近いでしょう。

現在、労働局の相談コーナーには申請を希望する人たちが殺到し「3密」の状態を作りだしてしまっていますね。予測できない事態が起こり国も大変なのはわかりますが、助成金の申請が難しいのは今回に限ったことではなく、こういった状態になることは“予測できた”のではないでしょうか。

新型コロナウイルス感染拡大の影響で倒産した企業数が、全国で114社に急増したことが東京商工リサーチの調べで分かりました。一番危機に陥るのは社会保険労務士と顧問契約を結ぶこともできない中小・零細企業であることも“予測できた”はずです。今回の簡素化を最初から導入するなど、できなかったのかと思ってしまいますね。

企業の資金繰りは日増しに悪化しており、倒産の増加傾向は続く恐れがあると言われています。ぜひスピード感を持って経済対策を行ってほしいと思います。


雇用調整助成金の申請書類を簡素化します(厚生労働省)加工して作成