【有給休暇の計画的付与】働きやすく休みやすい職場環境に

「有給休暇の計画的付与」とは、年次有給休暇の付与日数のうち5日を除いた残りの日数について、労使協定を結べば、計画的に有給休暇取得日を割り振ることができる制度です。

有給休暇は、労働基準法で定められた労働者に与えられた権利ですが、これまでは有給休暇取得にためらいを感じるという意見が多くありました。有給休暇の計画的付与制度を利用すれば、前もって計画的に休暇取得日を割り振るため、労働者はためらいを感じることなく有給休暇を取得することができます。
この記事は、有給休暇の計画的付与のメリットや付与方式について解説します。

有給休暇の計画的付与 導入のメリット

有給休暇の計画的付与は、使用者にとっても、労働者にとってもメリットのある制度です。

使用者のメリット

有給休暇をためらいなく取得できるようになり、年間の休暇計画も立てやすくなります。個別の都合に合わせた休暇の調整がしやすく、働きやすい環境が提供されます。

労働者のメリット

ためらいを感じずに、有給休暇を取得でき、年間の休暇計画も立てやすくなります。

有給休暇計画的付与の日数

有給休暇付与日数から5日を除いた残りの日数を計画的付与の対象にできます。
例)労働者の有給休暇の付与日数が11日の場合
6日=労使協定で計画的に付与可能
5日=労働者が自由に取得可能

有給休暇 計画的付与の方式

有給休暇の計画的付与には、一斉付与方式、交替制付与方式、個人別付与方式などの方式があります。企業や事業場の実態に応じた方法で活用しましょう。

企業や事場全体の一斉付与方式

全労働者に対して同一の日に有給休暇を付与する方式(例えば製造業など、操業をストップさせて全労働者を休ませることができる事業場などで活用されています。)

班・グループ別の交替制付与方式

班・グループ別に交替で有給休暇を付与する方式(例えば、流通・サービス業など、定休日を増やすことが難しい企業・事業場などで活用されています。)

有給休暇付与計画表による個人別付与方式

個人別にも導入することができます。夏季、年末年始、ゴールデンウィークのほか、誕生日や結婚記念日など労働者の個人的な記念日を優先的に充てるケースがあります。

有給休暇付与計画表による個人別付与方式の例を紹介します。

例① 夏季、年末年始に有給休暇を計画的に付与し、大型連休とします。

夏季や年末年始に計画的付与の年次有給休暇を組み合わせることで、大型連休を実現できます。この方法は、企業や事業場全体で一斉に休業する「一斉付与方式」や、班・グループごとに交替で取得する「交替制付与方式」で広く活用されています。

年次有給休暇を計画的に付与

例② ブリッジホリデーとして連休を設けます。

暦の関係で休日が飛び石となっている場合に、休日の橋渡し(ブリッジ)として計画的年休を活用し、連休とすることができます。

例えば、土曜日・日曜日・祝日を休日とする事業場で、祝日が火曜日にある場合、前日の月曜日に計画的に年次有給休暇を付与すれば、土曜日・日曜日を含めて4連休となります。
また、ゴールデンウィークでも、祝日と週末の間に年次有給休暇を計画的に付与することで、10日前後の連続休暇を実現できます。
このように、年次有給休暇の計画的な取得を推進することで、労働者が長期休暇を取りやすくなります。

ブリッジホリデー

例③ 閑散期に有給休暇の計画的付与日を設け、年次有給休暇の取得を促進します。

年間を通じた業務の繁閑があらかじめ予測できる場合、閑散期に計画的付与を実施することで、業務への支障を抑えながら有給休暇の取得率を向上させることができます。

アニバーサリー休暇

~土日・祝日にプラスワン休暇して、連続休暇に~

土日・祝日に有給休暇を1日足して連続休暇とする「プラスワン休暇」もあります。

労使協調のもと、有給休暇を組み合わせて、3日(2日)+1日以上の休暇を実施しましょう。

有給休暇計画的付与の導入手順

就業規則への規定

制度を導入する場合には、まず、就業規則に「有給休暇計画的付与制度」に関する規定を設ける必要があります。

例えば、「労働者代表との間に協定を締結したときは、その労使協定に定める時季に計画的に取得させることとする」といった内容を記載します。
就業規則の規定例として、「(年次有給休暇)第○条 (前略) ・ 前項の規定にかかわらず、労働者代表との書面による協定により、各労働者の有する年次有給休暇日数のうち5日を超える部分について、あらかじめ時季を指定して取得させることがある。」という文例が挙げられています。

労使協定の締結

実際に計画的付与を行う場合、労働者の過半数で組織する労働組合、または労働者の過半数を代表する者との間で、書面による労使協定を締結する必要があります。

  • 計画的付与の対象者(例:育児休業や産前産後の休業に入る予定の者、定年退職予定の者などを除く)

  • 対象となる年次有給休暇の日数(5日を超える日数)

  • 計画的付与の具体的な方法(一斉付与、交替制付与、個人別付与など)

  • 年次有給休暇の付与日数が少ない者の扱い(有給の特別休暇とするか、休業手当を支払う)

  • 計画的付与日の変更に関する事項

ただし、労使協定は、所轄の労働基準監督署に届け出る必要はありません。

年次有給休暇取得計画表の作成

  • 労働者が職場の上司や同僚に気兼ねなく年次有給休暇を取得するため、職場で年次有給休暇取得計画表を作成し、労働者ごとの休暇取得予定を明示します。

  • 年度別や四半期別、月別などの期間で個人ごとの年次有給休暇取得計画表を作成し、年次有給休暇の取得予定を明らかにすることで、職場内において取得時季の調整がしやすくなります。

  • 計画表の作成と併せて、年次有給休暇の取得を前提とした業務体制の整備や、取得状況のフォローアップを行うことなどによって、年次有給休暇を取得しやすい職場づくりに努めることが重要です。

有給休暇計画的付与に関する注意点

年次有給休暇の付与義務

  • 使用者は、労働者が雇入れの日から6か月間継続勤務し、その6か月間の全労働日の8割以上を出勤した場合、原則として10日の年次有給休暇を与えなければなりません。

  • 年次有給休暇が10日以上付与される労働者に対して、使用者は、年次有給休暇を付与した日(基準日)から1年以内に5日について、取得時季を指定して年次有給休暇を取得させなければなりません。

計画的付与の対象とならない休暇

時間単位の年次有給休暇は、計画的付与の対象となりません。

労働者の自由な取得の尊重

計画的付与制度を導入する際には、労働者が自由に取得できる年次有給休暇を最低5日間確保する必要があります

計画的付与日の変更

計画的付与日を変更する場合は、労使間で協議が必要です。

有給休暇の管理

  • 使用者は、労働者ごとに年次有給休暇管理簿を作成し、3年間保存しなければなりません。

  • 年次有給休暇管理簿には、時季、日数、基準日を労働者ごとに明らかにする必要があります。

有給休暇の計画的付与を行うには、従業員全員の有給休暇を把握し管理する必要があります。
有給休暇の付与は基準日や付与期間が従業員によって異なり、ただでさえ管理が煩雑ですので、勤怠管理システムの活用をお勧めします。

勤怠管理システムなら、入社日や従業員毎に設定した基準日を基に、労働基準法に基づいた有給休暇の付与・消滅を自動で行うことができたり、次期の付与予定まで一覧で表示され、すべての従業員の付与や取得状況などが把握しやすく、効率的な管理が可能となります。

担当者が休暇中でも業務が回るような仕組みに

チーム

有給休暇の計画的付与を活用する方法はいろいろありますが、誰かが休暇で不在となっても業務が回るような仕組みが必要です。

厚生労働省において、年次有給休暇の取得が進んでいる企業にヒアリングを行ったところ、1週間ごとにミーティングを行い、労働者の業務の進行状況について、所属長(課長など)のみならず、同僚も把握し、仕事を個人ではなくチームで行うことで、労働者が休暇で不在となっても業務が回るよう取り組まれている状況が分かりました。
仕事をチームで行い、チームの中で仕事の進行状況について情報共有することで、休みやすい仕組みにすることが大切です。

仕事の属人化が多いと思われる中小企業では、チーム制自体が難しいかもしれませんので、ダブルアサインメント(一業務二人担当制)という方法もあります。

ダブルアサインメントとは、通常1人で担当する業務を2人で分担して行う手法です。業務の属人化を防ぎ、担当者が不在になった場合のリスクを回避することを目的としています。不測の事態から企業と個人を守る重要なリスク対策としても有望視され、注目を集めています。

【有給休暇の計画的付与】働きやすく休みやすい職場環境に:まとめ

この記事では、有給休暇の計画的付与の導入手順や注意点、さらには具体的な活用事例を紹介しました。
多様な働き方が求められる現代において、有給休暇の取得促進は、企業にとっても従業員にとっても重要な課題です。有給休暇の計画的付与制度を活用することで、働きやすい職場をつくり、従業員の満足度向上や生産性向上、ひいては企業全体の活性化に繋げていきましょう。

厚生労働省「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」
https://www.mhlw.go.jp/content/000463186.pdfを加工して作成