年次有給休暇の基本ルールから管理方法まで|実務のポイントを徹底解説

年次有給休暇は、一定の要件を満たした労働者に付与される休暇制度です。正社員だけでなく、パート・アルバイト、シフト制で働く従業員なども対象になることがあります。雇用形態だけで判断せず、継続勤務期間、出勤率、所定労働日数などを確認したうえで、年次有給休暇を正しく付与・管理しなければなりません。
また、年次有給休暇を運用する際は、年5日の取得義務、時季指定、計画的付与、時間単位年休、年次有給休暇管理簿など、実務上のルールも押さえておく必要があります。
この記事では、年次有給休暇の発生要件、付与日数、付与に関する基本ルールを中心に、企業が有給休暇を管理するときのポイントをわかりやすく解説します。
Contents
1. 年次有給休暇の基本
年次有給休暇とは
年次有給休暇とは、一定の要件を満たした労働者に対して付与される、賃金が支払われる休暇のことです。労働者が心身を休めながら働き続けられるように設けられている制度であり、企業は対象となる従業員に対して、法律で定められた日数の年次有給休暇を付与しなければなりません。
年次有給休暇は、原則として労働者が希望する時季に取得できる休暇です。取得時季に関する詳しい考え方は、後ほど解説します。
年次有給休暇が付与される条件
年次有給休暇は、すべての従業員に入社直後から自動的に付与されるわけではありません。基本的には、次の2つの条件を満たした場合に付与されます。
雇入れの日から6か月継続して勤務していること
その期間の全労働日の8割以上出勤していること
この条件を満たした従業員には、原則として10日の年次有給休暇が付与されます。その後は、継続勤務年数に応じて付与日数が増えていきます。
「継続勤務」とは、同じ事業場に在籍している期間を指します。たとえば、定年後に再雇用された場合なども、勤務の実態によっては継続勤務として扱う必要があります。
また、出勤率を計算するときには、業務上のけがや病気による休業、育児休業、介護休業など、出勤したものとして扱う期間があります。単純に出勤日だけで判断できないケースもあるため、勤怠情報を正確に管理しておくことが大切です。

2. 年次有給休暇の付与日数
入社から6か月継続勤務し、全労働日の8割以上出勤している場合、最初に10日の年次有給休暇が付与されます。その後も継続して勤務し、出勤率の要件を満たしていれば、勤続年数に応じて付与日数が増えていきます。通常の労働者の場合、付与日数は最大で20日です。

パート・アルバイトにも有給休暇は付与される
年次有給休暇は、正社員だけの制度ではありません。パート・アルバイトなど、所定労働日数が少ない従業員であっても、一定の条件を満たせば年次有給休暇が付与されます。
ただし、週所定労働時間が30時間未満で、かつ週所定労働日数が4日以下の場合などは、所定労働日数に応じて付与日数が少なくなります。たとえば、週1日勤務の従業員と週4日勤務の従業員では、付与される年次有給休暇の日数が異なります。
雇用形態だけで判断せず、所定労働時間や所定労働日数をもとに、付与対象者と付与日数を確認する必要があります。

(※)表中太枠で囲った部分に該当する労働者は、2019年4月から義務付けられている「年5日の年次有給休暇の確実な取得」の対象となります。
年次有給休暇の付与に関する基本ルール
年次有給休暇を適切に管理するためには、付与日数だけでなく、付与日や基準日の考え方も整理しておく必要があります。年次有給休暇は、原則として雇入れの日から6か月を経過した日に初めて付与されます。この日が、年次有給休暇を管理するうえでの基準日です。
たとえば、4月1日に入社した従業員が、6か月継続勤務し、全労働日の8割以上出勤している場合、10月1日に10日の年次有給休暇が付与されます。その後も要件を満たしていれば、翌年10月1日に11日、その翌年10月1日に12日というように、継続勤務年数に応じて付与日数が増えていきます。
企業によっては、法律上の基準日よりも前に年次有給休暇を付与したり、全従業員の基準日を統一したりすることもあります。このような前倒し付与や一斉付与を行う場合は、年5日の取得義務の起算日や管理期間が複雑になりやすいため、あらかじめ運用ルールを整理しておくことが大切です。
3. 年次有給休暇の取得・繰越し・賃金のルール
年次有給休暇は原則として労働者が希望する時季に取得する
年次有給休暇は、原則として労働者が希望する時季に取得できます。従業員が具体的な日を指定して有給休暇を申請した場合、企業は基本的にその日に取得させる必要があります。
ただし、同じ時季に多くの従業員が休暇を希望し、業務に大きな支障が出る場合などには、使用者が別の時季に変更できることがあります。これが「時季変更権」です。もっとも、時季変更権はいつでも自由に使えるものではありません。単に「忙しいから」「人手が足りないから」という理由だけで、当然に認められるものではないため、慎重な判断が求められます。
時季変更権の行使条件や、従業員とのトラブルを防ぐための注意点は、以下の記事で詳しく解説しています。
年次有給休暇は翌年度に繰り越される
年次有給休暇の請求権の時効は2年です。そのため、付与された年度に取得されなかった年次有給休暇は、翌年度に繰り越されます。ただし、発生から2年を過ぎた年次有給休暇は時効により消滅します。従業員ごとの付与日、取得日数、残日数、消滅予定日を正確に把握しておきましょう。
有給休暇の消滅を防ぐ方法や、取得しやすい職場づくりについては、以下の記事で詳しく解説しています。
年次有給休暇を取得した日の賃金
年次有給休暇を取得した日は、賃金を支払わなければなりません。支払い方法は、次の3つのいずれかです。
平均賃金
所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金
健康保険法に規定する標準報酬月額の30分の1に相当する金額
このうち、標準報酬月額の30分の1に相当する金額を用いる場合は、労使協定が必要です。また、どの方法で支払うかは、その都度従業員ごとに自由に選ぶものではありません。あらかじめ就業規則などに定めておき、その方法に沿って支払います。
有給休暇を取得した従業員への不利益な取扱いは禁止
年次有給休暇を取得した従業員に対して、不利益な取扱いをしないようにしなければなりません。
たとえば、有給休暇を取得した日を欠勤扱いにして賃金を減額したり、精皆勤手当や賞与の算定で不利に扱ったりすることは避ける必要があります。
有給休暇は、法律で認められた労働者の権利です。取得したことによって従業員が不利になるような運用をしてしまうと、休暇を取得しにくい職場環境につながります。
年次有給休暇の買い上げには注意が必要
次有給休暇は、労働者に休暇を取得させるための制度です。そのため、取得させる前に会社が有給休暇を買い上げ、労働者に休ませないという運用は認められません。一方で、退職時に未取得のまま残っている年次有給休暇や、法定日数を上回って会社が独自に付与している休暇については、実務上、買い上げが検討されるケースもあります。
ただし、買い上げを前提にして有給休暇の取得を妨げるような運用は避けましょう。有給休暇は、本来、労働者が休むための制度であることを前提に管理することが大切です。
4. 年5日の取得義務と会社側の対応
年5日の有給休暇取得義務
年10日以上の年次有給休暇が付与される従業員については、企業が年5日を確実に取得させる必要があります。
対象となるのは、正社員に限られません。年10日以上の年次有給休暇が付与される場合には、管理監督者、有期雇用労働者、パート・アルバイトなども対象に含まれます。従業員ごとに基準日を把握し、その日から1年以内に5日以上の年次有給休暇を取得できているか確認します。
すでに従業員が自ら5日以上取得している場合は、使用者が時季を指定する必要はありません。一方、取得日数が5日に満たない場合は、企業側が時季を指定して取得させます。
年5日取得義務の対象者や、前倒し付与・計画的付与がある場合の考え方については、以下の記事で詳しく解説しています。
会社が時季指定を行う場合
年5日の取得義務を果たすために、企業が従業員の有給休暇取得時季を指定することがあります。これを「時季指定」といいます。時季指定を行う場合、企業は従業員の意見を聴取し、できる限りその希望に沿うよう努める必要があります。また、使用者による時季指定を実施する場合は、対象となる労働者の範囲や時季指定の方法などについて、就業規則に記載しておきます。
時季指定の具体的な進め方や、就業規則への記載例については、以下の記事をご確認ください。
有給休暇を前倒し付与する場合
企業によっては、法律上の基準日よりも前に年次有給休暇を付与することがあります。これを「前倒し付与」といいます。たとえば、入社日に有給休暇を一部付与したり、全従業員の基準日を統一するために前倒しで付与したりするケースです。
前倒し付与は、従業員にとって休暇を取得しやすくなるメリットがあります。一方で、年5日の取得義務の起算日や管理期間が複雑になりやすい点には注意が必要です。特に、前倒しで10日以上の年次有給休暇を付与する場合は、年5日の取得義務との関係を整理しておきましょう。
前倒し付与時の考え方や管理方法については、以下の記事で図解を交えて解説しています。
有給休暇の計画的付与
年次有給休暇には、従業員が自分で取得日を指定する方法だけでなく、企業があらかじめ取得日を計画的に決める方法もあります。これを「計画的付与」といいます。計画的付与を導入すると、企業は繁忙期を避けて休暇を設定しやすくなり、従業員も休暇を取得しやすくなります。
ただし、年次有給休暇のすべてを計画的付与の対象にできるわけではありません。従業員が自由に取得できる日数として、5日は必ず残しておく必要があります。
計画的付与の導入方法や労使協定のポイントについては、以下の記事をご覧ください。
5. 時間単位年休・半日有給の運用
時間単位年休とは
年次有給休暇は、原則として1日単位で取得するものです。ただし、労使協定を締結することで、年5日の範囲内で時間単位の取得が可能になります。これを「時間単位年休」といいます。時間単位年休を導入すると、通院、子どもの学校行事、家族の介護など、短時間だけ休みたい場面に対応しやすくなります。
一方で、導入には就業規則への記載や労使協定の締結が必要です。また、管理方法が複雑になりやすいため、残日数だけでなく、残時間も正確に把握できる体制を整えましょう。
時間単位年休の導入条件や活用方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
時間単位年休は年5日の取得義務に含められない
時間単位年休を導入している企業では、年5日の有給休暇取得義務との関係に注意が必要です。時間単位年休は、柔軟な休暇取得に役立つ制度ですが、年5日の確実な取得義務には含められません。
年5日の取得義務では、労働者本人の請求による取得、使用者による時季指定、計画的付与による取得などが対象になります。一方、時間単位年休として取得した分は、確実な取得が必要な5日から差し引くことができません。
そのため、企業は1日単位・半日単位での取得状況と、時間単位年休の取得状況を分けて管理します。特に、時間単位年休の利用が多い従業員については、年5日の取得義務を満たしているかを別途確認しましょう。
半日有給と時間有給の違い
実務では、「半日有給」と「時間有給」を混同しやすい場面があります。半日有給は、1日分の有給休暇を午前・午後など半日単位で取得する運用です。
一方、時間単位年休は、労使協定を締結したうえで、1時間単位などで年次有給休暇を取得できる制度です。どちらも柔軟な休暇取得につながりますが、制度の位置づけや必要な手続きは異なります。
半日有給と時間有給の違いや併用時の注意点については、以下の記事をご確認ください。
6. 年次有給休暇の管理方法
有給休暇の申請理由を聞いてもよい?
有給休暇の申請時に、従業員へ理由を確認している企業もあります。しかし、年次有給休暇は原則として労働者が希望する時季に取得できる休暇です。取得理由によって、企業が取得の可否を判断するものではありません。
実務上、業務調整のために簡単な理由を確認する場面はあります。ただし、従業員が答えたくない理由をしつこく聞いたり、理由によって取得しづらい雰囲気をつくったりすることは避けるべきです。
有給休暇の申請理由を聞く際の注意点については、以下の記事で詳しく解説しています。
年次有給休暇管理簿とは
労働者ごとに年次有給休暇管理簿を作成し、保存する必要があります。
年次有給休暇管理簿とは、年次有給休暇の取得時季、取得日数、基準日を労働者ごとに明らかにした書類です。管理簿は、労働者名簿や賃金台帳とあわせて作成することもできます。また、必要なときに出力できる仕組みであれば、システム上での管理も可能です。
保存期間は、当該年次有給休暇を与えた期間中およびその期間の満了後5年間です。ただし、当分の間は3年間とされています。年5日の取得義務への対応だけでなく、付与漏れや残日数の管理ミスを防ぐためにも、年次有給休暇管理簿を活用して取得状況を正確に把握しておきましょう。
企業が年次有給休暇を管理するときのポイント
年次有給休暇を適切に運用するには、制度を理解するだけでなく、日々の管理体制を整えることが重要です。特に、次の項目は正確に管理しておきましょう。
従業員ごとの入社日
年次有給休暇の基準日
付与日数
取得日数
残日数
年5日の取得状況
時季指定の有無
計画的付与の実施状況
時間単位年休の取得時間
消滅予定日
これらを手作業で管理していると、付与漏れや取得日数の計算ミスが発生しやすくなります。特に、パート・アルバイトが多い職場、前倒し付与を行っている企業、時間単位年休を導入している企業では、管理が複雑になりやすいため注意が必要です。
勤怠管理システムなどを活用し、付与・取得・残日数を一元管理できる体制を整えておくと、担当者の負担軽減にもつながります。
有給取得率が低い企業に多い課題
有給休暇の制度が整っていても、実際には取得率が伸びない企業もあります。その背景には、人手不足で休みにくい、上司や同僚に遠慮して申請しにくい、業務が属人化している、取得状況を管理できていないといった課題が挙げられます。
有給取得率を高めるには、単に「休みましょう」と呼びかけるだけでは不十分です。業務の分担、取得計画の見える化、管理職への周知、勤怠管理システムの活用など、休みやすい環境を整えることが大切です。
人手不足が深刻な企業での有給取得率改善については、以下の記事で詳しく解説しています。
年次有給休暇に関するよくある質問
- 年次有給休暇はいつから付与されますか?
原則として、雇入れの日から6か月継続勤務し、その期間の全労働日の8割以上出勤した場合に付与されます。通常の労働者の場合、この条件を満たすと10日の年次有給休暇が付与されます。
- パート・アルバイトにも有給休暇はありますか?
あります。所定労働日数が少ないパート・アルバイトにも、条件を満たせば年次有給休暇が付与されます。ただし、週所定労働時間が30時間未満で、週所定労働日数が4日以下の場合などは、所定労働日数に応じて付与日数が変わります。
- 時間単位年休は年5日の取得義務に含められますか?
含められません。時間単位年休として取得した分は、年5日の確実な取得義務から差し引くことができません。そのため、1日単位・半日単位での取得状況と、時間単位年休の取得状況は分けて管理する必要があります。
- 年次有給休暇管理簿は必要ですか?
必要です。労働者ごとに年次有給休暇管理簿を作成し、取得時季、取得日数、基準日を記録します。保存期間は、当該年次有給休暇を与えた期間中およびその期間の満了後5年間です。ただし、当分の間は3年間とされています。
年次有給休暇の基本ルールから管理方法まで|実務のポイントを徹底解説:まとめ
年次有給休暇は、一定の要件を満たした労働者に付与される休暇制度です。雇入れの日から6か月継続勤務していること、全労働日の8割以上出勤していることを確認し、継続勤務年数や所定労働日数に応じて、正しい日数を付与する必要があります。
また、年5日の取得義務、時季指定、計画的付与、時間単位年休、年次有給休暇管理簿など、有給休暇の運用には確認すべきルールが複数あります。特に、パート・アルバイトが多い企業や、前倒し付与・時間単位年休を導入している企業では、基準日や取得日数の管理が複雑になりやすいため注意が必要です。
有給休暇を適切に管理することは、法令対応だけでなく、従業員が安心して休める職場づくりにもつながります。まずは、自社の付与状況や取得状況を確認し、必要に応じて管理方法を見直してみましょう。
年次有給休暇の管理には勤怠管理システムの活用を
年次有給休暇を正しく管理するには、従業員ごとの入社日、基準日、付与日数、取得日数、残日数、消滅予定日を正確に把握する必要があります。さらに、年5日の取得義務、前倒し付与、時間単位年休などを運用している場合は、手作業での管理が複雑になり、確認漏れや計算ミスが起こりやすくなります。
勤怠管理システムを活用すれば、有給休暇の付与・取得・残日数を一元管理しやすくなり、担当者の負担軽減にもつながります。有給休暇の管理に不安がある場合は、勤怠管理システムの導入や運用方法の見直しも検討してみましょう。
出典:厚生労働省「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」(https://www.mhlw.go.jp/content/001140963.pdf)を加工・要約して作成


