【運送業】ストレス解消の取り組み

運送業の運転従事者を対象とした調査では、業務に関連したストレスや悩みとして、バス運転手では「長時間労働の多さ」、タクシー運転手では「売上・業績等」、トラック運転手では「仕事での精神的な緊張・ストレス」がそれぞれ第1位に挙げられました。
運送業のトラックやバス、タクシーの運転手は、いずれの場合も多くの利用者や貨物を目的地まで安全に届ける重要な機能を担っており、雇用する企業には責任が生じます。この記事では、運送業の運転従事者がどんな悩みを抱えているか、またストレス解消の取り組み例を紹介します。
Contents
【運送業】業務に関連したストレスや悩みの内容
過労死等防止対策白書によると、運送業の運転従事者の悩みとして、以下の内容が上位に挙げられました。
| バス運転者 | タクシー運転者 | トラック運転者 | |
| 第1位 | 長時間労働の多さ (48.0%) | 売上・業績等 (49.7%) | 仕事での精神的な緊張・ ストレス(42.5%) |
| 第2位 | 仕事での精神的な緊張・ ストレス(44.5%) | 仕事での精神的な緊張・ ストレス(35.1%) | 職場の人間関係 (28.3%) |
| 第3位 | 休日・休暇の少なさ (39.3%) | 利用客からの苦情等 (33.3%) | 長時間労働の多さ (23.1%) |
※平成29年版過労死等防止対策白書
※「業務や業務以外のストレスや悩みがあった」と回答したバス運転者173人、タクシー運転者336人、トラック運転者1159人の回答結果に基づく
- 精神障害の労災認定事案では、トラック運転手では「恒常的な長時間労働」、タクシー運転手やバス運転手では乗客からの暴力等の「乗客に関連した問題」によるものが多くなっています。(平成30年版過労死等防止対策白書より)
- 自動車運転従事者における長時間労働の背景には、慢性的な人員不足等がありますが、顧客や発注者からの発注条件等取引上の都合により、その措置が円滑に進まない等、様々な取引上の制約が存在する場合もあるという指摘もありました。
【運送業】ストレス解消の取り組み例
トラックやバス、タクシーの運転手等、運送業の運転従事者の心身の健康を確保するためには、健康を害するような長時間労働の対策だけでなく、事故や顧客とのトラブル防止の対策と並んで被害を受けた労働者へのケアを実施する等、労働時間以外の改善の取組も重要です。
運送業の運転従事者のメンタルヘルス対策の取り組み例を見てみましょう。
例1 運送業 : 小規模タクシー会社の場合
社長が主導し、より簡便な労働時間の把握・管理ツールを開発
労働時間の正確な把握のため、運行管理者とともに「労働時間管理表」を電子ファイルで作成した。日々の始業点呼から出庫、帰庫、終業点呼の時刻を入力し、拘束時間の他、その月の残りの拘束時間についても自動で算出できる。これにより、運行管理者は月の途中で労働時間の指導をすることが可能となった。
また、あとどの程度乗務が可能か、自動で残り時間が算出されるため、乗務員自身も容易に把握できるようになった。
例2 運送業 : 大規模物流会社の場合
メンタルヘルス不調者が出やすい時期に研修会を開催
通常、春先にメンタルヘルス不調者が出やすい傾向が見られたことから、その時期にセルフケアやラインケアに関する研修会を実施し、自身のストレスに気づいてもらったり、ストレスへの対処方法を学んでもらうようにした。上司・管理職においては「聞き出す力」、部下においては「伝える力」の重要性やそのスキルアップにつながる内容も盛り込んでいる。 同社には労働組合をはじめ、様々な相談窓口があるが、そのうちの1つであるカウンセラーが研修の講師を務めることで、従業員と顔の見える関係ができ、その後の相談窓口の利用がしやすくなった。
例3 運送業 :大規模タクシー会社の場合
顧客向けの周知啓発や運送約款見直しを実施
タクシー車内での暴力行為・セクハラ行為を防ぐため、運送約款の変更を行うとともに、タクシー車内での暴力行為・セクハラ行為に対して厳正な対処をする旨を記したポスターを車内に掲示した。ハラスメント行為の中止を求めたにも関わらず、応じられない場合には運送の引受けもしくは継続拒否をすることとした。あわせて、車内カメラを全車に搭載することにより、顧客からの暴力行為・ハラスメント行為は激減、ストレスが無くなった。
例4 運送業 :中規模倉庫業の場合
リフレッシュルームを設けて、世代や部署を超えたコミュニケーションを促進
同社は倉庫業であるが、様々な職種(事務職、営業職、荷役、ドライバー等)の社員がいる。社員同士のコミュニケーションの活性化や休憩場所の確保をねらいとして、4階フロアを応接室フロアに全面リフォームする際、ストレス軽減のためにリフレッシュルームを併設した。それまでは喫煙者の多い上の世代と喫煙者の少ない若い世代とで休憩場所が分かれてしまっていたが、リフレッシュルームを設けたこと、また施設全体を禁煙としたことでどの世代も自然にリフレッシュルームを利用するようになり、会話が生まれるようになった。また、応接室を使用しないちょっとした商談や小さなミーティングに活用したり異なる部署の社員が一緒に昼食をとる等、部署横断での交流も持ちやすくなった。
【運送業】ストレス解消の取り組み:まとめ
運送業の運転従事者は、いずれの場合も多くの利用者や貨物を目的地まで安全に届ける重要な機能を担っており、雇用する企業には責任が生じます。
ひとたび事故を起こすと運転手本人はもちろんのこと、利用者や貨物、あるいは周囲の人々にも被害を及ぼす可能性があり、運転手は日々高い緊張感を伴いストレスを抱えながら仕事に従事しています。運転従事者や利用者、周囲の安全確保のためにも、心身の健康を確保するためにストレス解消への取り組みは雇用主の重要な役割と言えます。
厚生労働省: メンタルヘルス対策のポイント (https://www.mhlw.go.jp/content/000615723.pdf)を加工して作成
