【IT人材不足】長時間労働軽減とストレス対策を

IT人材不足が深刻になりつつあります。経済産業省のIT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果によると、2030年の人材不足規模は約59万人にも上ると推計されました。

出典:経済産業省 IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果
原因としては若年層の人口減少がありますが、IT業界については「長時間労働」「ストレスが大きい」などの印象を持つ人が多いことも、IT人材不足に拍車をかける要因の一つであると考えられます。IT人材不足を解消するには、エンジニアを雇用する企業が対策を行い、マイナスイメージを払拭する必要があります。
この記事では、企業として行うべき、ITエンジニアのメンタルヘルス対策について紹介していきます。
Contents
【IT人材不足の原因.1】エンジニアになる事のハードル
ITエンジニアには、システムエンジニア、プログラマー、ネットワークエンジニア等々、様々な種類がありますが、専門性の高い仕事であり、どれをとってもまず知識の習得までに、ある程度時間をかけて諦めずに勉強を続けることが必要です。またIT技術の進化のスピードが早く、現役であっても日々勉強を続けていかなければなりません。
また、今後パターン化されたプログラミングはAIの役割になっていくので、プログラミングの習得は初歩の初歩であり、AIエンジニアなど新しい技術を勉強していくことも求められるでしょう。
このように、ITエンジニアになる事自体のハードルもIT人材不足の一因と言えそうです。
【IT人材不足の原因.2】エンジニアのストレス
ITエンジニア等を対象とした調査では、業務に関連したストレスや悩みとして、「納期厳守等のプレッシャー」「職場の人間関係」「上司からの指導や部下・後輩への指導」が上位に挙げられています。
【業務に関連したストレスや悩みの内容】
| 第1位 | 納期厳守等のプレッシャー(48.5%) |
| 第2位 | 職場の人間関係(36.8%) |
| 第3位 | 上司からの指導や部下・後輩への指導(33.5%) |
※平成30年版過労死等防止対策白書
※「業務に関するストレスや悩みがあった」と回答したITエンジニア1853人の回答結果に基づく
- 精神障害の労災認定事案では、「長時間労働」が主たる要因となっています。
- IT産業における所定外労働が必要となる背景には、「トラブル等の緊急対応」のほか、「顧客の問題」や「仕様変更」への対応、「納期・予算に無理がある」等、顧客との関係や契約の在り方に関する要因が挙げられます。また、繁閑の差が大きいことも特徴です。
- 他にも、次のような仕事の特性があるため、関係者のコミュニケーション不足が長時間労働の原因になるとの指摘もあります。
- チームとして仕事をするため、プロジェクトマネジメントが不十分であると時間外労働や休日出勤が増える場合がある
- 自社内だけでなく、顧客先に常駐して業務にあたることがある
- 業務の全部または一部を他社に委託し、多重下請構造になることがある
IT人材不足を解消するためのメンタルヘルス対策
IT人材不足の一因として、まず労災認定事案にもなっている長時間労働が上げられます。
心身の健康を害するような長時間労働の是正は重要な課題。もちろんそのような長時間労働は労基法違反となります。個々の企業においては、労使による話合いを行い、実態に即した長時間労働の削減を行うことが求められます。また、職場におけるコミュニケーションの促進も重要です。
IT人材不足の中、エンジニアのメンタルヘルスを守り健康で勤務してもらえるように、様々な取り組みが行われています。いくつかの対策例を紹介します。
【IT人材不足】メンタルヘルス対策.1/職場におけるコミュニケーションの活性化
在宅勤務やサテライトオフィスで勤務する社員を孤独にさせない環境を整備
在宅勤務をしている社員の中には、長期間に亘り会社に出社しない者もいる。孤独な環境での作業とならないよう、オフィスの中にモニターを用意し、業務時間中は在宅勤務者を映している。 同じオフィスで仕事をしているように感じることができ、同僚とも随時会話できる環境を整備している。また、客先での常駐やサテライトオフィス勤務のため、 会社に顔を出さない社員も多く、お互いの様子が見えづらかった。 そこで、毎週月曜日に定例会を開催することとし、今抱えている課題を共有する場としている。(IT産業・小規模)
社員が相談しやすいよう、相談窓口を人事部から切り離して設置
従来、人事部に相談窓口を設置していたが、利用件数が伸び悩んでいた。そこで、社員が気兼ねなく相談できるよう、人事部から切り離して窓口を設置することにした。また、担当者として、カウンセラー資格を有する社員を配置した。それにより「業務内容や会社の事情をわかった上で相談にのってくれる」「相談しても人事評価に影響しない」ことがより明確になったことで、社員の相談件数が大幅に増えた。(IT産業・小規模)
【IT人材不足】メンタルヘルス対策.2/円滑なプロジェクトマネジメント等の支援
フレックス勤務を活用し、複数の社員が交替で対応する体制を確保
働き方改革の取組の1つとして、36協定の締結内容を見直し、年間延長限度時間を600時間から500時間に変更した。上限を下げることで、社員からは顧客対応のため残業ができないと困るという声もあった。そこで、顧客都合のため早く退社できない場合はフレックス勤務を活用し、途中で社員が交替して対応する等、体制の見直しも行うようになった。(IT産業・小規模)
睡眠時間の確保や疲労蓄積の防止に着目した対策の実施
睡眠時間確保等を目的として勤務間インターバル制度を導入
睡眠時間を確保して疲労の蓄積を防止するため、退社から翌日の出社まで一定時間以上確保する勤務間インターバル制度を導入した。導入の際は労使で話し合い、外回りの営業担当は出張時の移動時間(出張先から自宅まで)はインターバル時間に含めないようにする等、職種の特性にも配慮した。(IT産業・小規模)
【IT人材不足】メンタルヘルス対策.3/パート社員に対するメンタルヘルス対策のための研修
パート社員の意見を踏まえたラインケア研修の拡充
社員向けの意識調査を実施したところ、パート社員から、正社員によるマネジメントの在り方について不満を訴える結果が得られた。パート社員は非管理職の社員の指示のもと仕事をしていた。そのため、従来の階層別研修ではメンタルヘルス対策に関する内容はあくまで管理職が対象であったが、今後は、パート社員の管理にあたる非管理職の社員に対しても、ラインケアの考え方を取り込んだ研修を実施することを検討している。(IT産業・大規模)
【IT人材不足】長時間労働軽減とストレス対策を:まとめ
日本では高齢化に伴い労働人口(特に若年人口)が減少することから、今後、IT人材の獲得は現在以上に難しくなると考えられます。IT需要の拡大にもかかわらず、国内の人材供給力が低下することから、IT人材不足は今後より一層深刻化する可能性が高くなっており、ITエンジニアへの負担は大きくなっていくでしょう。
ITエンジニアの仕事は、高度な専門的スキルが必要なため、できる人に仕事が集中してしまう傾向があります。また業務の確実な遂行に加え、日々新しい技術や知識を習得することが求められ、どうしても長時間労働になりがちです。
企業としては、勤怠管理システムなどを利用してITエンジニアの長時間労働を発見し、作業を分担するための人材を確保するなどのサポートが必要です。IT人材不足となっていく今後の対策としても、貴重な人材がが専門性を発揮できる環境づくりを行い、心身の健康を確保しながら長く働いてゆける職場づくりを整えることが急務といえます。
厚生労働省:メンタルヘルス対策のポイント( https://www.mhlw.go.jp/content/000615723.pdf)を加工して作成
