ストレスチェックの義務化|従業員50人未満も含め全事業所に拡大へ

近年、精神障害による労災認定件数は増加の一途をたどっています。こうした状況を受け、厚生労働省はストレスチェックの義務化を、全ての事業所へ拡大する方針を決定しました。
これまで従業員50人未満の事業所は対象外でしたが、法改正により小規模事業者も対応を求められることになります。
この記事では、法改正に向け、ストレスチェック制度について、導入事例を交えながら紹介していきます。
Contents
ストレスチェックの必要性
近年、精神障害の労災補償の件数が、増え続けています。労災請求の仕組みに対する認知度が高まっていることも要因として考えられますが、実際にパワーハラスメントなどの発生件数も増えており※、対策が求められています。
※職場のハラスメントに関する実態調査(令和5年度)(https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/001259093.pdf)
精神障害の労災補償状況

また、これまで、従業員50人未満の事業所にはストレスチェックの実施が義務付けられていませんでした。しかし、職場で強い不安や悩み、ストレスを感じている労働者の割合が、小規模事業所においても高いことが明らかになっています。このような状況を踏まえ、ストレスチェックの義務化をすべての事業所に拡大する方針は納得できるものと言えます。
職業生活で強い不安、悩み、ストレスを感じている労働者の割合(事業所規模別)

出典 厚生労働省:職場におけるメンタルヘルス対策の現状等(https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/001236814.pdf)
ストレスチェック制度は、労働者の心理的ストレス反応の改善に効果があることが、厚生労働省による有識者の検討会において確認されており、医師による面接指導を受けた労働者の過半数がその有効性を認めています。
出典 厚生労働省:第170回労働政策審議会安全衛生分科会議事録(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_48158.html)
「ストレスチェック制度」導入前の準備
ストレスチェック制度は義務化されましたが、受けるかどうかは労働者の自由です。個人の精神面というデリケートな問題でもあり、ストレスの原因が職場であればなおさら情報を慎重に取扱う必要があります。
ストレスチェックの実施は、医師、保健師、看護師、精神保健福祉士などの専門家が実施します。社内の人員で実施することはできません。本人の同意がなければ、企業が結果を知ることもできないとされています。
ストレスチェック制度を導入する前に情報管理体制を整え、企業として「体調不良の防止のためにストレスチェック制度を実施する」旨の方針を示します。次に、ストレスチェック制度の実施方法などを話し合い、従業員の理解を深めることも必要です。
話し合う事項:例
- ストレスチェックの実施時期
- ストレスチェックの質問内容
- どんな基準でストレスの高い人を選ぶか
- 面接指導の申出方法
- 面接指導を依頼する医師
- 集団分析の方法
- ストレスチェックの結果の保存方法
決めたことを社内規程として明文化したら全ての従業員に告知し、実施体制・役割分担を決めましょう。
実施体制:例
- 事業所において、ストレスチェック制度の計画づくりや進捗状況を把握・管理する者
- ストレスチェックの実施者 医師、保健師、厚生労働大臣の定める研修を受けた看護師・精神保健福祉士の中から選ぶ必要があります。外部委託も可能です。
- ストレスチェックの実施事務従事者 実施者の補助をする者。質問票の回収、データ入力、結果送付など、個人情報を取り扱う業務を担当します。外部委託も可能です。
※ 契約期間が1年未満の労働者や、労働時間が通常の労働者の所定労働時間の4分の3未満の短時間労働者は義務の対象外です。
- 面接指導を担当する医師
ストレスチェック制度の実施手順:例

ストレスチェックの実施:例
質問票を労働者に配って、記入してもらいます。
- ストレスの原因に関する質問項目
- ストレスによる心身の自覚症状に関する質問項目
- 労働者に対する周囲のサポートに関する質問項目
【参照】質問票
以下は、国が推奨する57項目の質問票(職業性ストレス簡易調査票)です。


【参照】本人に通知するストレスチェック結果のイメージ

面接指導の実施と就業上の措置
- ストレスチェック結果で「医師による面接指導が必要」とされた労働者から申出があった場合は、医師に依頼して面接指導を実施します。
※労働者は、結果が通知されてから1月以内に行う必要があります。
※面接指導は申出があってから1月以内に行う必要があります。 - 面接指導を実施した医師から、就業上の措置の必要性の有無とその内容について、意見を聴き、それを踏まえて労働時間の短縮など必要な措置を実施します。
※医師からの意見聴取は、面接指導後1月以内に行う必要があります。
- 面接指導の結果は事業所で5年間保存します。以下の内容が含まれていれば、医師からの報告をそのまま保存しても構いません。
- 実施年月日
- 労働者の氏名
- 面接指導を行った医師の氏名
- 労働者の勤務の状況、ストレスの状況、その他の心身の状況
- 就業上の措置に関する医師の意見
ストレスチェック制度の注意点
プライバシーの保護
集計・分析結果を踏まえて、職場環境の改善を行いますが、集団規模が10人未満の場合は、個人特定されるおそれがあるので、全員の同意がない限り、結果の提供を受けることはできません。原則10人以上の集団を集計の対象とします。
- 事業者がストレスチェック制度に関する労働者の秘密を不正に入手することはできません。
- ストレスチェックや面接指導で個人の情報を取り扱った者(実施者とその補助をする実施事務従事者)には、法律で守秘義務が課され、違反した場合は刑罰の対象となります。
- 事業者に提供されたストレスチェック結果や面接指導結果などの個人情報は、適切に管理し、社内で共有する場合にも、必要最小限の範囲にとどめる必要があります。
不利益取扱いの防止
ストレスチェック制度は、労働者の個人情報が適切に保護され、不正に利用されないようにすることで、労働者が安心してストレスチェックを受け、適切な対応や改善につなげる仕組みです。
事業者は、次のことを理由に労働者に対して不利益な取扱いを行うことは禁止されています。
- 医師による面接指導を受けたい旨の申出を行った
- ストレスチェックを受けない
- ストレスチェック結果の事業者への提供に同意しない
- 医師による面接指導の申出を行わない
もちろん、面接指導の結果を理由として、解雇、雇い止め、退職勧奨、不当な動機・目的による配置転換・職位の変更を行うことはできません。
ストレスチェックの義務化|従業員50人未満も含め全事業所に拡大へ:まとめ
精神障害の労災補償状況におけるの出来事では、パワーハラスメントが最も多くありましたが、他に「2週間以上にわたって連続勤務」「1ヶ月に80時間以上の時間外労働」が上位10項目に入っています。
働き方改革が進んだ現在でも、長時間労働は無くなっていません。
ストレスチェックと同時に、勤怠管理システムを活用し、残業の上限時間を超過している従業員への対応や、残業時間抑制の取り組みも進めていきましょう。
厚生労働省:ストレ スチェック制度導入マニュアル
(https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/pdf/150709-1.pdf)を加工して作成
