中核人材の介護離職を防ぐ「仕事と介護の両立支援」

日本では、高齢化に伴い介護保険制度上の要支援・要介護認定者数が増加しています。そのため中核人材が介護離職を選択するケースが増えており、企業の持続的な発展に影響が出る可能性も指摘されています。
この記事では、企業の中核人材の介護離職を防ぐため、仕事と介護の両立支援の取組の必要性について紹介します。
Contents
企業における仕事と介護の両立支援
日本は、世界に類をみないスピードで超高齢社会になり、多くの高齢者の介護をいかに担っていくかが大きな社会問題となっています。以前は家庭内での介護の役割は、主に専業主婦が担う傾向がみられましたが、現在ではほとんどが共働き世帯であり、働く男性も介護に携わる必要性が高まっています。
近年、両立支援やワーク・ライフ・バランスの取組の中で、企業の関心が子育てから介護へ広がってきています。
企業における仕事と介護の両立支援の必要性
こうした社会状況を背景に、介護をする人は、平成3年以降20年間で約2倍に増加しています(平成23年:682.9万人)。また、介護をする者全体に占める男性の割合も増加傾向にあります。
【男女別介護者数及び介護者に占める男性の割合の推移】

介護をする雇用者の年齢階級別構成割合を見ると、40歳代・50歳代・60歳代が全体の8割以上を占めています。この年代は、専門性やスキル、マネジメント能力を持ち、事業上のさまざまな業務において中核を担う人材であることが多い年代と言えます。
【介護をする雇用者の年齢階級別構成割合】

また現在、介護が必要な親がいない正社員のうち約4割が、今後5年間で親の介護などが必要になる可能性があると考えています。
【現在介護などが必要な親がいない就労者の今後5年間のうちに親の介護などが必要になる可能性】

男女各1,000人の正社員を対象とした調査では、仕事と介護を両立することに対して「不安を感じる(「非常に不安を感じる」「不安を感じる」)」と回答した人が男性で74.4%、女性で79.8%を占めており、男女とも将来親の介護や手助けをする状況に直面した場合の不安が強いことがわかります。
【仕事と介護を両立することに対する不安(40 歳代・50 歳代正社員) 】

さらに、親の介護や手助けをしている中で、あるいはその状況に直面した場合、現在の勤務先で仕事を続けることができると思うかという質問に対して、「続けられないと思う」または「わからない」と回答した人は77.4%にのぼり、介護をしながら働き続けられる見込みを持っている人は22.1%にとどまっており、多くの従業員が介護離職せざるを得ないと考えていることが見受けられます。
【介護をしながら、現在の勤務先で仕事を続けることができる可能性】

介護離職は企業にとって大きな損失
一方、介護や手助けについての相談先について、勤務先に相談した人の割合は7.6%と極めて低い水準にとどまっています。職場に相談する人が少ないのは、相談できる体制がなかったり、あってもわかりづらいのかもしれません。その結果、仕事と介護の両立に悩んでいても言い出せず、周囲が気づかないまま介護離職を選択してしまう危険性があります。
企業にとって見れば、これまで長期にわたり経験を積んできたベテラン従業員や管理職など企業の中核人材を介護離職で失うことになり、大きな損失となるでしょう。
両立支援に向けた取り組みは、企業の損失を減らすためにも、介護に直面する従業員や仕事と介護の両立のために離職する従業員が増える前に始める必要があります。
企業に求められる従業員の介護離職を予防する取組み
介護離職を予防するため企業に求められる従業員の仕事と介護の両立支援への取組には、以下の5つがあります。
1.従業員の仕事と介護の両立に関する実態把握
従業員が抱えている介護の有無、仕事と介護の両立に必要な自社の介護休業などの制度や公的な介護保険制度などの理解度に関する現状を、主に従業員に対するアンケート調査を実施することなどにより把握します。介護離職を予防するため、実態把握は自社の仕事と介護の両立支援を進める上で出発点となるものです。
2.制度設計・見直し
実態把握をふまえて、介護休業など自社の両立支援制度を「法定の基準を満たしているか」「従業員に周知されているか」「利用要件がわかりやすいか・利用手続 きが煩雑でないか」「従業員のニーズに対応しているか」などの観点から点検し、課題があれば見直しましょう。
3.介護に直面する前の従業員への支援
仕事と介護の両立に関する心構えや基本的な情報を、社内研修の実施やリーフレットの配付などにより提供します。介護は子育ての場合と異なり直面する時期を予測することは難しいので、離職に繋がりやすいです。従業員が介護に直面してから仕事と介護の両立に必要な基本的な情報を提供するのではなく、直面しても離職しなくて済むよう、事前に情報提供を行うことが重要です。
4.介護に直面した従業員への支援
介護に直面している従業員に対して、自社の両立支援制度の利用支援、相談しやすい体制の整備、地域の介護サービスの利用支援などを行います。
5.働き方改革
介護のために時間制約のある従業員であっても、介護離職せずに就業継続できることに加えて、仕事に意欲的に取り組めるような職場環境や働き方をめざします。残業時間の削減や年次有給休暇の取得促進、仕事上の情報共有、お互いさまと支援し合える職場風土づくりが大切です。
中核人材の介護離職を防ぐ「仕事と介護の両立支援」:まとめ
ベテラン従業員や管理職など企業の中核人材を介護離職で失うことは、企業にとって大きな損失となります。
育児・介護休業法に定められている介護休業制度や介護休暇制度などを整備することは、企業として必須の取組と言えるでしょう。また、介護休業中の従業員の業務をカバーするために、シフト管理を適切に行える勤怠管理システムを活用するのも方法の一つです。
中核人材の介護離職を防ぐために、企業全体で仕事と介護の両立支援を実践していきましょう。
厚生労働省:企業における仕事と介護の両立支援実践マニュアル
(https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000119918.pdf)を加工して作成
