運送・建設・病院等の長時間労働改善に【令和7年版】働き方改革推進支援助成金|業種別課題対応コース

深刻な人手不足に直面する、建設業、運送業、医療・宿泊業などの業界が抱える構造的な課題の解決を後押しするため、国は特別な支援策を設けています。それが、働き方改革推進支援助成金の「業種別課題対応コース」です。
このコースの最大の特徴は、単なる時間管理の改善に留まらず、現場の省力化に直結する「設備投資」などを重点的に支援する内容となっている点です。
この記事では、働き方改革推進支援助成金「業種別課題対応コース」について、わかりやすく解説します。

支給対象となる事業主

働き方改革推進支援助成金「業種別課題対応コース」の支給対象は、次のいずれにも該当する中小企業事業主です。

  • 労働者災害補償保険の適用事業主であること。
  • 交付申請時点で、1から7の「成果目標」達成に向けた条件を満たしていること。
  • 全ての対象事業場において、交付申請時点で、年5日の年次有給休暇の取得に向けて就業規則等を整備していること。
  • 全ての指定対象事業場において、交付申請時点で、労働基準法第36条に基づく有効な時間外・休日労働に関する協定を締結・届出している事業主であること。
  • 建設業・運送業・病院等・砂糖製造業・情報通信業・宿泊業のいずれかに該当する中小企業事業主であること。

※砂糖製造業について:建設業・運送業・病院と同じく、時間外労働上限規制の適用に猶予期間がありました。砂糖製造業は、特別な業種として法令上も明確に位置付けられており、他の季節的繁忙業種とは異なる扱いとなっています。

支給対象となる取組 以下のいずれか1つ以上実施

令和7年度の【働き方改革推進支援助成金】 の支給を受けるには、以下のいずれか1つ以上の取組を実施することが必要です。

  • 労務管理担当者に対する研修
  • 労働者に対する研修、周知・啓発
  • 外部専門家(社会保険労務士、中小企業診断士など)によるコンサルティング
  • 就業規則・労使協定等の作成・変更(計画的付与制度の導入など)
  • 人材確保に向けた取組
  • 労務管理用ソフトウェア(勤怠管理システム含む)の導入・更新
  • 労務管理用機器の導入・更新
  • デジタル式運行記録計(デジタコ)の導入・更新
  • 労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新(小売業のPOS装置、自動車修理業の自動車リフト、運送業の洗車機など)

※研修には、勤務間インターバル制度に関するもの及び業務研修も含みます。
※原則としてパソコン、タブレット、スマートフォンは対象となりません。
※長時間労働恒常化要件に該当する場合、「労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新」の対象となる経費が一部緩和されます。

成果目標の設定

令和7年度の【働き方改革推進支援助成金】 の支給対象となるには、以下の「成果目標」1から7のうち1つ以上選択し、その達成を目指して実施してください。

【成果目標1】時間外・休日労働時間数の削減

1.本成果目標を初めて選択する場合
全ての指定対象事業場において、令和7年度または令和8年度内に有効な36協定(時間外・休日労働に関する協定)において、時間外・休日労働時間数の上限を月60時間以下、または月60時間を超え月80時間以下に短縮して設定し、所轄の労働基準監督署長に届け出ることが必要です。この目標は全ての業種で選択可能です。

2.本成果目標の選択が2回目の場合

令和6年度にこの成果目標を設定し、36協定について延長する労働時間数の上限を設定の上、所轄労働基準監督署長に届け出て助成金の支給を受けた中小企業事業主が選択できます。
全ての指定対象事業場において、令和7年度または令和8年度内に有効な36協定について、時間外・休日労働時間をさらに短縮するか、または維持することを目標とします。上記の1で設定した上限の範囲内で、延長する労働時間数の上限を短縮または維持して設定し、所轄の労働基準監督署長に届け出る必要があります。

【成果目標2】年次有給休暇の計画的付与制度の導入

全ての指定対象事業場において、労働者の年次有給休暇を計画的に付与するための規定を新たに導入することが必要です。この目標は全ての業種で選択可能です。

【成果目標3】時間単位年次有給休暇と特別休暇の導入

全ての指定対象事業場において、時間単位で年次有給休暇を取得できる規定を新たに導入する必要があります。
加えて、「労働時間等設定改善指針(平成20年厚生労働省告示第108号)」の2(2)に規定された、特に配慮が必要な労働者(例:育児や介護を行う労働者など)のために、事業主が講ずべき措置として、特別休暇の規定をいずれか1つ以上、新たに導入することが必要です。
この目標は全ての業種で選択可能です

【成果目標4】勤務間インターバル制度の導入

全ての指定対象事業場において、従業員の終業時刻から次の始業時刻までの間に、9時間以上の休息時間を確保する「勤務間インターバル制度」の規定を新たに導入することが必要です。この目標は全ての業種で選択可能です。

ただし、以下のいずれかに該当する場合は、休息時間を「10時間以上」と読み替えられます。

  • 運送業

  • 病院等で、医療法第113条第1項に規定する特定地域医療提供機関(いわゆるB水準の医師)として指定されている病院または診療所で、その指定に係る業務に従事する医師が対象の場合

  • 病院等で、医療法第118条第1項に規定する連携型特定地域医療提供機関(いわゆる連携B水準の医師)として指定されている病院または診療所から、他の病院または診療所に派遣される医師が対象の場合

  • 病院等で、医療法第119条第1項に規定する技能向上集中研修機関または同法第120条第1項に規定する特定高度技能研修機関(いわゆるC-1、C-2水準の医師)として指定されている病院または診療所で、その指定に係る業務に従事する医師が対象の場合

【成果目標5】所定休日の増加

全ての対象事業場において、4週5休から4週8休以上の範囲で所定休日を増加させることが必要です。この目標は建設業のみ選択可能です。

【成果目標6】医師の働き方改革推進に関する取り組み

この目標は病院等(病院、診療所、介護老人保健施設、介護医療院を営む事業主)のみ選択可能です。以下の1と2の全てを実施することが必要です

1.労務管理体制の構築等
労務管理責任者を設置し、その責任の所在と役割を明確にすること。
医師の副業・兼業先との労働時間の通算や医師の休息時間確保、長時間労働の医師に対する面接指導の実施に係る協力体制を整備すること(副業・兼業を行う医師がいる場合に限る)。
管理者層に対し、人事・労務管理のマネジメント研修を実施するなど、労働時間管理について理解を深める取り組みを行うこと。

2.医師の労働時間の実態把握と管理
労働時間と労働時間でない時間の区別などを明確にした上で、医師の労働時間の実態把握を行うこと。

【成果目標7】3直3交代制等の勤務割表の整備

3直3交代制のような勤務割表を整備することが必要です。この目標は砂糖製造業のみ選択可能です。

上記の成果目標に加えて、対象事業場で指定する労働者の時間当たりの賃金額を引き上げることを成果目標に加えることができます。

業種別課題対応コース|支給額

業種別課題対応コースでは、取組の実施に要した経費の一部が成果目標の達成状況に応じて支給されます。以下の1と2の、いずれか低い方の額となります。

1. 成果目標1から7の上限額、および賃金加算額の合計額
2. 対象経費の合計額×補助率3/4※

※常時使用する労働者数が30人以下かつ、支給対象の取組で6から9を実施する場合で、その所要額が30万円を超える場合の補助率は4/5

成果目標1の上限額

1.本成果目標を初めて選択する場合

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事業実施前の設定時間数
事業実施後に設定する時間外労働時間数等現に有効な36協定において、時間外労働と休日労働の合計時間数を月80時間を超えて設定している事業場現に有効な36協定において、時間外労働と休日労働の合計時間数を月現に有効な36協定において、時間外労働と休日労働の合計時間数を月60時間を超えて設定している事業場
時間外労働時間数等を月60時間以下に設定250万円200万円
時間外労働時間数等を月60時間を超え、月80時間以下に設定150万円–

2.本成果目標の選択が2回目の場合

「時間外労働と休日労働の合計時間数を月60時間を超え月80時間以下に設定している指定対象事業場」の36協定について、2回目の取組によって月60時間以下に設定した場合は100万円。
 また、時間外労働と休日労働の合計時間数を令和6年度に設定した時間数よりも短くすることを目標として2回目の取組を行った場合で、令和6年度に設定した時間数と同数以下に設定した場合は25万円。

成果目標2の上限額

成果目標2達成時の上限額:25万円

成果目標3の上限額

成果目標3達成時の上限額:25万円

成果目標4達成時の上限額

建設業、砂糖製造業、情報通信業及び宿泊業の場合

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休息時間数「新規導入」に該当する取組がある場合新規導入」に該当する取組がなく、「適用範囲の拡大」又は「時間延長」に該当する取組がある場合
9時間以上11時間未満120万円60万円
11時間以上150万円75万円

運送業の場合

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休息時間数「新規導入」に該当する取組がある場合新規導入」に該当する取組がなく、「適用範囲の拡大」又は「時間延長」に該当する取組がある場合
9時間以上11時間未満150万円75万円
11時間以上170万円85万円

病院等の場合

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休息時間数「新規導入」に該当する取組がある場合新規導入」に該当する取組がなく、「適用範囲の拡大」又は「時間延長」に該当する取組がある場合
9時間以上10時間未満120万円60万円
10時間以上11時間未満150万円75万円
11時間以上170万円85万円

成果目標5の上限額

成果目標5達成時の上限額:1日増加ごとに25万円(最大で100万円まで)

成果目標6の上限額

成果目標6達成時の上限額:50万円

成果目標7の上限額

賃金額の引上げを成果目標に加えた場合の加算額は、指定した労働者の賃金引上げ数の合計に応じて、次の表のとおり、上記上限額に加算します。
なお、引上げ人数は30人が上限となります。(賃上げ額そのものを助成するものではありません。)

常時使用する労働者数が30人を超える中小企業事業主の場合

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引き上げ人数1~3人4~6人7~10人11~30人
3%以上引上げ6万円12万円20万円1人当たり2万円(上限60万円)
5%以上引上げ24万円48万円80万円1人当たり8万円(上限240万円)
7%以上引上げ36万円72万円120万円1人当たり8万円(上限240万円)

常時使用する労働者数が30人以下の中小企業事業主の場合

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引き上げ人数1~3人4~6人7~10人11~30人
3%以上引上げ12万円24万円40万円1人当たり4万円(上限120万円)
5%以上引上げ48万円96万円160万円1人当たり16万円(上限480万円)
7%以上引上げ72万円144万円240万円1人当たり24万円(上限720万円)

業種別課題対応コース 取組事例(病院)

X線検査に関する業務効率化

課題

熟練した看護師不足が常態化しており、熟練者が新任の看護師に指導しながら内視鏡洗浄をしていましたが、洗浄工程ごとの指導や管理も必要で人手と時間を要している状況だった。

実施

業務効率化を検討する中で、助成金を活用して、内視鏡自動洗浄機を導入。

結果

内視鏡の洗浄に1人または指導役も含めた2人で40分程度かかっていた時間が、1人で10分程度に削減。1日の労働時間を30分程度削減。

医療業:会計、精算業務の効率化

課題

診療から精算、処方箋発行までの会計業務や、月次締め業務、診療報酬請求業務による残業が定常化していた。そこで、会計、精算業務を効率化し、残業時間を削減したいと考えた。

実施

業務効率化を検討する中で、助成金を活用して、電子カルテシステムを刷新。

結果

医師のカルテ入力から処方箋発行まで直接内容が反映されるようになり、最終患者の送り出しまでの時間が10分~15分程度早まった。
精算業務を行う職員が行う毎日の精算作業が、50分程度から1分程度に削減された。

6業種について「業種別課題対応コース」が最適な理由とは

助成金活用の鍵は「何を買うか」ではなく、その投資によって「どの成果目標を達成するか」という戦略的な視点です。対象業種は、このコースを選ぶことで、自社の改革に最も合致した目標を設定し、最大のリターンを得ることができます。建設・運送・病院等・砂糖製造・情報通信・宿泊の業種なら業種別課題対応コースが最適といえます。

課題への特化

運送業の「2024年問題」や医師の長時間労働など、各業種が抱える構造的な課題に直接対応できるよう特別に設計されています。

手厚い助成額

他の汎用コースに比べて助成上限額が大幅に高く設定されています。さらに、複数の成果目標を達成することで、助成額を積み増しできます。

独自の目標設定

「医師の働き方改革の推進(病院)」や「所定休日の増加(建設業)」など、他のコースにはない、各業種に特化した価値の高い成果目標が用意されています。

運送・建設・病院等の長時間労働改善に【令和7年版】働き方改革推進支援助成金|業種別課題対応コース:まとめ

働き方改革は、今や企業が持続的に成長するための重要な経営戦略です。本助成金は、特に構造的課題を抱える運送業や建設業、医療現場などにとって、労働環境の改善と生産性向上を両立させるための力強い後押しとなりますので、単なる規制対応ではなく、未来への戦略的投資と捉えることができます。
申請期限は令和7年11月末です。この絶好の機会を活かし、優秀な人材の確保と定着を実現しましょう。

厚生労働省:働き方改革推進支援助成金(業種別課題対応コース)(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000120692_00001.html)を加工して作成