【有給休暇の前倒し付与】図解でわかりやすく解説

有給休暇設定

労働基準法の原則では、使用者は労働者が雇入れの日から6か月間継続勤務し、その6か月間の全労働日の8割以上を出勤した場合には、原則として10日の有給休暇を与えなければなりませんが、新入社員に入社と同時に有給休暇を付与する場合など、法定の基準日より前に有給休暇を10日以上付与することができます。
この記事では、有給休暇の前倒し付与について、3つのケースを図解でわかりやすく解説していきます。

有給休暇の前倒し付与とは

全ての企業において、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、年次有給休暇の日数のうち年5日については、使用者が時季を指定して取得させることが義務付けられています。

基本ルール参照:年次有給休暇の付与や基本ルールをわかりやすく!

その中で、有給休暇の前倒し付与とは、法定の付与基準日よりも前に年次有給休暇を従業員に与えることを指します。通常、労働基準法では入社から6ヶ月経過後に初めて年次有給休暇が付与されますが、前倒し付与ではそれよりも早い時期に休暇を与えます。

有給休暇の前倒し付与のメリット

従業員の福利厚生の向上
入社後すぐに有給休暇を使えるようにすることで、従業員の急な私用や体調不良に対応できます。
欠勤の防止
入社から半年以内の従業員が休む必要がある場合、通常は欠勤扱いになりますが、前倒し付与によってこれを防ぐことができます。

柔軟な休暇取得の促進
早期から有給休暇を取得できるようにすることで、従業員のワークライフバランスを支援します。

有給休暇を前倒しで付与する場合の取扱い

基準日が前倒しになることで、その後の有給休暇の管理が複雑になることがあります。そこで有給休暇の前倒し付与の3つのケースを、図解でわかりやすく紹介します。

ケース1. 法定の基準日より前に10日以上の有給休暇を付与する場合

労働者に対して法定の基準日より前倒して10日以上の有給休暇を付与した場合には、使用者は、その日から1年以内に5日の有給休暇を取得させなければなりません。

例:入社と同時に10日以上の有給休暇を付与

通常の場合は入社から半年後の10/1から翌年9/30までの1年間に有給休暇を5日取得させることになりますが、例えば入社日(4/1)に前倒しで10日以上の有給休暇を付与した場合には、その日から1年以内に5日の有給休暇を取得させる必要があります。

入社と同時に10日以上の年次有給休暇を付与した場合

ケース2. 入社年と翌年で有給休暇の付与日が異なるため、5日の指定義務がかかる1年間の期間に重複が生じる場合

(※ 全社的に起算日を合わせるために入社2年目以降の社員への付与日を統一する場合など)

期間に重複が生じた場合には、重複が生じるそれぞれの期間を通じた期間(前の期間の始期から後の期間の終期まで)の長さに応じた日数(比例按分した日数)を当該期間に取得させることも認められます。

例:入社から半年後に10日以上の有給休暇を付与し、翌年度以降は全社的に起算日を統一するため、4/1に有給休暇を付与する場合

2020/10/1と2021/4/1を基準日としてそれぞれ1年以内に5日の有給休暇を取得させる必要がありますが、管理を簡便にするため2020/10/1(1年目の基準日)から2022/3/31(2年目の基準日から1年後)までの期間(18か月)に、7.5日(18÷12×5日)以上の有給休暇を取得させることも可能です。

ケース3. 10日のうち一部を法定の基準日より前倒しで付与

10日のうち一部を法定の基準日より前倒しで付与した場合には、付与日数の合計が10日に達した日から1年以内に5日の有給休暇を取得させなければなりません。 なお、付与日数の合計が10日に達した日以前に、一部前倒しで付与した有給休暇について労働者が自ら請求・取得していた場合には、その取得した日数分を5日から控除する必要があります。

例:入社と同時に5日の有給休暇を付与し、更に5日の有給休暇を付与

付与された有給休暇が合計で10日に達した2020/7/1を基準日として、その日から1年以内に有給休暇を5日取得させることが必要となります。
ただし、入社時に一部前倒しで付与された有給休暇を基準日以前(2020/4/1~2020/6/30)に労働者が自ら請求・取得していた場合(計画年休も含む)には、その日数分を5日から控除する必要があります。

なお、上記のように初年度において法定の有給休暇の付与日数の一部を法定の基準日より前倒しで付与した場合には、次年度以降の有給休暇の付与日についても、初年度と同じまたはそれ以上の期間、法定の基準日より繰り上げなければなりません。(上記の例では遅くとも2021/4/1までに付与しなければなりません。)このため、次年度以降は年休を5日取得させなければならない期間の重複が発生することになります。
この場合、ケース2にも該当することから、2020/7/1~2022/3/31までの間に9日(21÷12×5=8.75)の年休を取得させることも認められます。

【有給休暇の前倒し付与】基準日により変わる取得期間:まとめ

有給休暇の前倒し付与は、従業員の福利厚生や従業員のワークライフバランスの向上に役立ちますが、一方、従業員ごとに有給休暇の基準日がずれることで、管理が煩雑になります。
また、付与日数の調整や退職時の扱いなど、運用上の課題も生じるため、法定付与日数を下回らないよう注意が必要です。基準日を統一する方法もありますが、エクセルなどでの管理は担当者の負担はかなり大きいものとなることが予想されます。

このような有給休暇の前倒し付与に伴うデメリットの多くは、適切な勤怠管理システムの導入によって効果的に解決できます。勤怠管理システムは、複雑な有給休暇の計算や管理を自動化し、有給休暇の前倒し付与のメリットを最大限に活かしつつ、デメリットを最小限に抑えることができます。
従業員満足度の向上と管理効率化の両立を目指す企業にとって、勤怠管理システムの導入は検討に値する選択肢と言えるでしょう。

厚生労働省:年5日の年次有給休暇の確実な取得わかりやすい解説(https://www.mhlw.go.jp/content/000463186.pdf)を加工して作成