年次有給休暇を前倒しで付与できる?

年次有給休暇の付与や基本ルールをわかりやすく!」の記事でお話したように、労働基準法の原則では、使用者は労働者が雇入れの日から6か月間継続勤務し、その6か月間の全労働日の8割以上を出勤した場合には、原則として10日の年次有給休暇を与えなければなりませんが、新入社員に入社と同時に年次有給休暇を付与する場合など、法定の基準日より前に年次有給休暇を10日以上付与することができます
こうした場合について、どのように取り扱えばよいか、確認していきましょう。

ケース1

法定の基準日(雇入れの日から6か月後)より前に10日以上の年次有給休暇を付与する場合

労働者に対して法定の基準日より前倒して10日以上の年次有給休暇を付与した場合には、使用者は、その日から1年以内に5日の年次有給休暇を取得させなければなりません。

例:入社(2019/4/1)と同時に10日以上の年次有給休暇を付与

通常の場合は入社から半年後の10/1から翌年9/30までの1年間に年次有給休暇を5日取得させることになりますが、例えば入社日(4/1)に前倒しで10日以上の年次有給休暇を付与した場合には、その日から1年以内に5日の年次有給休暇を取得させる必要があります。

ケース2

入社した年と翌年で年次有給休暇の付与日が異なるため、5日の指定義務がかかる1年間の期間に重複が生じる場合

(※ 全社的に起算日を合わせるために入社2年目以降の社員への付与日を統一する場合など)

期間に重複が生じた場合には、重複が生じるそれぞれの期間を通じた期間(前の期間の始期から後の期間の終期までの期間)の長さに応じた日数(比例按分した日数)を当該期間に取得させることも認められます。

例:入社から半年後(2019/10/1)に10日以上の年次有給休暇を付与し、翌年度以降は全社的に起算日を統一するため、4/1に年次有給休暇を付与する場合

2019/10/1と2020/4/1を基準日としてそれぞれ1年以内に5日の年次有給休暇を取得させる必要がありますが、管理を簡便にするため2019/10/1(1年目の基準日)から2021/3/31(2年目の基準日から1年後)までの期間(18か月)に、7.5日(18÷12×5日)以上の年次有給休暇を取得させることも可能です。

ケース3

10日のうち一部を法定の基準日より前倒しで付与

10日のうち一部を法定の基準日より前倒しで付与した場合には、付与日数の合計が10日に達した日から1年以内に5日の年次有給休暇を取得させなければなりません。 なお、付与日数の合計が10日に達した日以前に、一部前倒しで付与した年次有給休暇について労働者が自ら請求・取得していた場合には、その取得した日数分を5日から控除する必要があります。

例:入社(2019/4/1)と同時に5日の年次有給休暇を付与し、2019/7/1に更に5日の年次有給休暇を付与

付与された年次有給休暇が合計で10日に達した2019/7/1を基準日として、その日から1年以内に年次有給休暇を5日取得させることが必要となります。
ただし、入社時に一部前倒しで付与された年次有給休暇を基準日以前(2019/4/1~2019/6/30)に労働者が自ら請求・取得していた場合(計画年休も含む)には、その日数分を5日から控除する必要があります。

なお、ケース3のように初年度において法定の年次有給休暇の付与日数の一部を法定の基準日より前倒しで付与した場合には、次年度以降の年次有給休暇の付与日についても、初年度と同じまたはそれ以上の期間、法定の基準日より繰り上げなければなりません。(上記の例では遅くとも2020/4/1までに付与しなければなりません。)このため、次年度以降は年休を5日取得させなければならない期間の重複が発生することになります。
この場合、ケース2にも該当することから、2019/7/1~2021/3/31までの間に9日(21÷12×5=8.75)の年休を取得させることも認められます。

複雑になっていく勤怠管理

休付与日は従業員それぞれの入社日によって変わるため、管理が複雑になる上に、前倒しの付与についても上記ケースのように様々なパターンが発生します。基準日を統一する方法もありますが、どちらにしてもエクセルなどでの管理は担当者の負担はかなり大きいものとなりそうです。
働き方改革法により、労働者の権利や健康が守られるのは良いことですが、それにつれどんどん管理が複雑になってきています。人事・労務・総務担当者も労働者なわけで、勤怠管理業務に追われて時間外労働などが発生しては本末転倒ですね。
入社日を起算日として、有給休暇の付与・消失を自動で行うことができる勤怠管理システムを導入するなど、管理者自身の労働管理にも注意していく必要があると思います。