職業能力評価基準の活用で「人が育つ会社」を実現

「職業能力評価基準」とは、仕事をこなすために必要な知識、技術・技能、成果につながる職務遂行能力を、業種別、職種・職務別に整理した評価基準です。この記事では、人材育成の仕組みをしっかりと整える職業能力評価基準について紹介します。
Contents
職業能力評価基準とは?
職業能力評価基準は、採用・人材育成・人事評価、また検定試験の基準書として、様々な場面で活用できます。
業種別、職種・職務別に整理された職業能力評価基準を用い、現在の能力レベルを把握、評価するための「職業能力評価シート」、業種内でのキャリア形成の指針となる「キャリアマップ」といったツールを用い、自社の業務内容に応じた実践的な人材育成を行うことを目指します。
職業能力評価基準の各場面での活用
会社は人材育成の資料として活用
会社は、社内での人材育成制度の整備や従業員の能力開発に活用することができます。従業員は自分の能力開発に活用
従業員は、自分の能力を把握したり、キャリア形成の目標設定等に活用することができます。人事評価の資料として活用
社内での人事制度の見直しや人事評価制度の整備に当たって、評価・処遇決定の基準に活用することができます。採用等での活用
社内の人材のニーズの把握、人材戦略の計画・実施に活用することができます。
ジョブ・カード制度を利用して採用を行う場合、職業能力評価基準やモデル評価シートを活用できます。検定試験等での活用
業界検定を構築したり、検定のためのテキスト作成や講習に活用することができます。
職業能力評価基準の構成

仕事の内容を「①職種」→「②職務」→「③能力ユニット」→「④能力細目」という単位に細分化しています。
成果につながる行動例を「⑤職務遂行のための基準」、仕事をこなすために前提として求められる知識を「⑥必要な知識」として整理・体系化しています。
職種
仕事の内容や性質が類似している「職務」を括ったものです。
職務
概ね1人の労働者が、責任をもって遂行すべき精神的、肉体的活動を要する仕事の集まりのことを指し、1つもしくは複数の「課業」から構成されるものです。
能力ユニット
仕事を効果的、効率的を遂行するために必要な職業応力を、活動単位で括ったもの。基本的に複数の「能力細目」から構成されています。
職務遂行のための基準
「能力細目」の仕事を確実に遂行できるか否かの判断基準となる典型的な行動例や、技能・技術を列挙したものです。
必要名知識
その「能力ユニット」に対応する職務を遂行するために、前提として必要となる知識を表すものです。
職業能力評価基準 レベル区分の目安
職業能力評価基準では、会社において期待される責任・役割の範囲と難易度により4つの能力段階(レベル区分)を設定しています。
レベル区分 例:事務系職種
レベル4(本部長・部長など)
大規模組織の責任者もしくは最高度の専門職・ 熟練者として、広範かつ統合的な判断及び意思決定を行い、企業利益を先導・創造する業務を遂行するために必要な能力水準。
レベル3(課長・マネージャーなど)
中小規模組織の責任者もしくは高度専門職・熟練者として、上位方針を踏まえて管理運営、計画作成、業務遂行、問題解決等を行い、企業利益を創出する業務を遂行するために必要な能力水準。
レベル2(係長・主任など)
グループやチームの中心メンバーとして、創意工夫を凝らして自主的な判断、改善、提案を行いながら業務を遂行するために必要な能力水準。
レベル1(担当者など)
担当者として、上司の指示・助言を踏まえて定例的業務を確実に遂行するために必要な能力水準。
職業能力評価基準の全体像
業界の企業の仕事の概要は、様式1(全体構成)と職種別能力様式2(ユニット一覧)を参照することで把握できます。職務ごとの能力を詳細を述べている様式3(能力ユニット別職業能力評価基準)を閲覧入手するための目次としても利用できる資料です。

職業能力評価基準の導入
中小企業では、比較的多くの社員が製造、販売など売り上げに直接関係する部署に配属され、人事、総務、経理などは兼務して担当することが多くみられます。担当者には、業務の定型化、単純化等による業務効率化への取組が求められます。
経理事務は税理士に、社会保険の申請業務などは社会保険労務士等の専門家に依頼することで、中核業務への経営資源の集中化が図れ生産性向上につながります。
人事・労務管理の業務は、単に法律で定められた作業を行うだけではなく、会社の成長・発展に向けて経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報・時間・知的財産)のうち「ヒト」について、どのように戦力として活かしていくかを具体化し、実行していくことが最も重要です。
「ヒト」が、モノ、カネ、情報、時間、知的財産等を管理運用する主体であるため、経営者および幹部が自社のめざす事業の方向を設定したうえで、それにふさわしい社員像を想定し、求める能力、成果を明確にする必要があります。
(1)職業能力評価基準の導入のポイント
評価方法に根拠を持たせ納得できる評価基準を確立する
社員が評価内容に納得しないということは、人事評価のよくある問題点の一つです。また、経営課題として現在地、目的地を定め、その思い(ビジョンやミッションの必要性)を組み入れることも重要です。
次に、納得感を持たせるためにも、評価方法に根拠を持たせ、納得できる評価基準を確立することがポイントです。評価項目はできるだけ具体的かつ明確に設定し、指導の際には、どうすれば評価を上げられるのかの説明や指導をしっかり行うようにします。
評価方法について、事前に社員に説明することも大事です。人事評価の体制がしっかりと整っており、能力評価シートの内容も具体的であれば、不満が生じる可能性は低くなります。
キャリアアップにつながる目標を設定する
目標を決める際は、キャリアアップにつながる目標を設定することがポイントです。会社と社員、双方の成長につながる適切な目標を設定します。能力評価シートで評価されることに主眼を置きすぎると、目標を設定するときに、社員自身が達成できるレベルの目標にしてしまうリスクがあります。
目標は低すぎず高すぎず、ちょうど良いレベルで設定することがポイントです。目標を設定したら、中間面接などを行ってコミュニケーションをはかり、適切なフォローを行うことが大事です。
(2)職業能力評価基準のカスタマイズの考え方
加除・修正、レベルの調整を行っていくことで、自社に最適な評価基準を導入することが可能となります。 また、基準を円滑に運用していくためには、会社と社員とで十分に話し合いながら、定期的に内容を見直し、より良い評価基準に改善していくことが必要です。
職務や能力ユニットの削除
自社に存在しない職務や能力ユニットがある場合、それらを削除する職務や能力ユニットの追加
職業能力評価基準に記述されていない職務や能力ユニットが自社に存在する場合は、類似している職務や能力ユニットを参考にして新たに作成する。他業種の職業能力評価基準から抽出することも可能。職務や能力ユニットの組み換え
自社の職制や職務分担に合わせて本基準の職務や能力ユニットを組み替えるレベル区分・段階の調整
本基準の4段階からなるレベル区分を自社の職能等級または職務等級や各種資格制度等の段階に合わせて設定する。4段階を8段階に分解し設定することも可能。必要な知識の調整
職務遂行に当たり必要と考えられる知識を網羅的に記述しているので、上記1〜4で行うカスタマイズに合わせて、自社で必要な知識を設定する。
職業能力評価基準の活用で「人が育つ会社」を実現:まとめ
職業能力評価基準は、職業能力評価基準を用いて人材育成の仕組みをしっかりと整え、会社と社員の成長をともに実現したいと考える企業のために作成されました。「育成」「評価」「活用」「採用」といった人事管理上のニーズに対して、入職後のキャリアパスを明確にすることで、社員が仕事を通じて成長を実感できる仕組みを整えることが必要です。
企業にとって「人材」こそが最大の経営資産であり、競争力の源泉です。人事労務管理システムや職業能力評価基準を導入することで、「人が育つ会社」の実現に向けた取り組みを進めましょう。
厚生労働省:
職業能力評価基準の構成(https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001018939.pdf)
職業能力評価基準導入マニュアル(https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/000766887.pdf)
を加工して作成
