【時間外労働の上限規制】違法となるケースとは

時間外労働の上限規制が、2020年の法改正で罰則付きの法的規制となり、企業への遵守義務が強化されました。しかし労働基準監督署が2022年4月~2023年3月まで監督指導を実施した結果、違法な時間外労働があった1万4,147事業場の中で最も長い時間数が80時間超というケースが約37%も発生していることがわかりました※。時間外労働に対する認識不足があるとすれば、労働基準法の再確認が必要です。
※ 出典 長時間労働が疑われる事業場に対する令和4年度の監督指導結果:(https://www.mhlw.go.jp/content/11202000/000969975.pdf)
そこでこの記事では、あらためて時間外労働の上限規制について解説します。
Contents
時間外労働の上限規制とは
労働基準法では、労働時間は原則として、1日8時間・1週40時間以内とされています(法定労働時間)。また、休日は原則として、毎週少なくとも1回与えることとされています(法定休日)。
この法定労働時間を超えて労働者に時間外労働をさせる場合や、法定休日に労働させる場合には、労使の合意に基づく所定の手続きが必要です。
合意に基づく時間外労働の手続き
労働基準法第36条に基づく労使協定(36協定)の締結
36協定では「時間外労働を行う業務の種類」や「時間外労働の上限」などを決めます。所轄労働基準監督署⻑への届出
法改正前
これまで36協定で定める時間外労働について上限の基準が定められていましたが、臨時的に限度時間を超えて時間外労働が必要な特別の事情が予想される場合は、特別条項付きの36協定を締結することで限度時間を超える時間まで時間外労働を行わせることが可能でした。
※労働基準法第36条第1項の協定で定める労働時間の延⻑の限度等に関する基準(限度基準告示)
法改正後
労働時間・休日に関する原則は法改正後も変わりませんが、これまで告示にとどまっていた時間外労働の上限が、法改正により罰則付きで法律に規定されました。
時間外労働の上限規制 改正内容
法改正後は、時間外労働の上限が罰則付きで法律に規定され、さらに臨時的な特別な事情がある場合にも上回ることができない上限が設けられています。
時間外労働の上限は原則として月45時間・年360時間
臨時的な特別の事情がなければこれを超えることができません。この臨時的な特別の事情とは「通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い、臨時的に限度時間を超えて労働させる必要がある場合」を指します。
特別条項
さらに、臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合(特別条項)でも、以下を守る必要があります。
時間外労働が年720時間
時間外労働と休日労働の合計が単月100時間未満(※以内ではないので注意)
時間外労働と休日労働の合計について、2ヶ月平均・4ヶ月平均・5ヶ月平均・6ヶ月平均がすべて1ヶ月あたり80時間以内
時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年6ヶ月が限度
特別条項の有無に関わらず、1年を通して常に時間外労働と休日労働の合計は、月100時間未満、2〜6か月平均80時間以内にしなければなりません。
例えば時間外労働が45時間以内に収まって特別条項にはならない場合であっても、時間外労働=44時間、休日労働=56時間、のように合計が月100時間以上になると法律違反となります。
特別条項の注意点
ここで注意しなければならないのが、特別条項は臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合にのみ適用されるということです。日々の業務が多いため恒常的に生じる時間外労働は、臨時的かつ特別な事情とはなりません。
臨時的な特別の事情とは、予算・決算業務のような一時的な業務、又は納期のひっ迫や機械トラブルへの対応等の突発的な業務に限り、全体として1年の半分を超えないことが見込まれるものを指すので、特に事由を限定せずに業務繁忙であると定めることや、使用者が必要とするという理由では認められません。
法違反の罰則について
労働基準法においては、36協定を締結せずに時間外労働をさせた場合や、36協定で定めた時間を超えて時間外労働をさせた場合には、労働基準法第32条違反となります。
法改正後は、この36協定で定める時間数について上限が設けられました。また、36協定で定めた時間数にかかわらず、時間外労働と休日労働の合計時間が月100時間以上となった場合、時間外労働と休日労働の合計時間について、2〜6か月の平均のいずれかが80時間を超えた場合には、労働基準法第36条第6項違反となります。
いづれも6箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金が課せられる場合があります。
法違反の例

【時間外労働の上限規制】違法となるケースとは : まとめ
時間外労働の法改正が行われた後も、違法な時間外労働が後を絶ちません。
時間外労働の上限規制を遵守するには、正確な労働時間の管理が必要となります。休日労働を含めた労働時間管理は複雑で、手作業で行うのは大変な手間がかかるため、意図せず法律に違反してしまう場合もあるでしょう。
正確な勤怠管理を行うためには、通常勤務で1日8時間を超えた場合や、シフト勤務で個人毎に設定されている場合など、異なる勤務体系もそれぞれ残業時間として自動集計ができる勤怠管理システムの利用が適切です。
まだエクセルなどで勤怠管理を行っているという場合は、今一度時間外労働の上限規制の内容を確認し、労働基準法違反を防ぐためシステム導入を検討しましょう。
厚生労働省:時間外労働の上限規制わかりやすい解説 2023年2月版(https://www.mhlw.go.jp/content/001140962.pdf)を加工して作成
