【人事評価制度】中小企業こそ導入が必要な理由

人事評価制度は、従業員の能力や業績を評価し、それを基に人事管理を行う重要なツールです。
しかし帝国データバンクの調査では、企業規模が小さいほど人事評価制度の導入が少ないという結果がでています。人事評価制度は中小企業こそ導入が必要です。
この記事では、人事評価制度が必要な理由について解説します。
Contents
人事評価制度とは
人事評価制度とは、従業員の能力や貢献度を客観的な基準に基づいて評価し、報酬や昇進などの処遇に反映させる制度です。
企業の人材戦略に沿って設計され、従業員の能力開発やキャリアパスの明確化、人材の育成などを目的としています。また、評価結果は報酬や昇進などの処遇決定にも活用されます。
中小企業における人事評価制度の重要性
中小企業において人事評価制度が大企業と同等に重要である理由は、主に以下が挙げられます。
従業員一人ひとりの力が重要
従業員数が少ない企業ほど、個々の社員の貢献度がより大きくなります。人事評価制度を通じて、一人ひとりの能力や成果を把握し、 それを最大限に引き出すことが重要です。
モチベーションアップと離職率の低下
明確な評価基準と目標を設定することで、従業員のモチベーションを高め、離職率を低下させることができます。特に従業員規模が小さい企業は、優秀な人材の流出は大きな痛手となります。
公平性の確保
人事評価制度がない場合、評価が恣意的になり、従業員間の不満につながる可能性があります。人間関係の悪化は経営にも大きな影響を与えます。
人材育成の強化
人事評価制度に基づいて、個々の社員に必要な研修やスキルアップ支援を提供することができます。
経営戦略との連携
限られたリソースを有効活用するため、人事評価制度を通じて必要な人材像を明確にし、 採用、育成、配置などを戦略的に進めることができます。
人事評価制度を導入しない理由
従業員規模が小さい企業では「従業員が少なく、経営者が全従業員の状況を把握しているため」という理由が多くあります。一方で、従業員規模が大きくなるにつれ「制度を設けても運用が困難であるため」の割合が高くなります。

人事評価制度導入が有る企業と無い企業との比較
以下は、従業員規模別および人事評価制度の有無別に、売上高増加率について示したものです。いずれの従業員規模においても、人事評価制度がある企業の方が、売上高増加率が高いことが分かります。
従業員規模別および人事評価制度の有無別に、売上高増加率

人事評価制度は従業員の配置や処遇の基準になるだけでなく、企業のビジョンや経営方針の浸透、適切なフィードバックによる従業員の育成などにも効果があると言われます。さらに企業の成長性の面から見ても、人事評価制度が重要であることを、調査結果が示唆しています。
中小企業の人事評価制度
従業員数の少ない中小企業では、人事担当者自身が限られた時間の中で、幅広い業務をこなす必要があります。人事評価制度の導入には、制度設計、運用、評価結果のフィードバックなど、多くの時間と労力が必要となります。それを克服するには、以下のような取り組みが考えられます。
1. シンプルな制度設計
複雑な制度は運用が難しく、かえって人手不足を悪化させる可能性があります。
2. 経営層の積極的な関与
経営層が人事評価制度の重要性を理解し、積極的に関与することで、担当者の負担を軽減することができます。
3. 定期的な見直し
経営環境や従業員のニーズの変化に合わせて、定期的に制度を見直すことが重要です。特に小規模な企業では、 柔軟な制度運営が求められます。
人事評価制度の事例
従業員主導の人事評価制度導入で自主性を育み、高収益を上げる中小企業の事例を紹介します。
納得感が持てる人事評価制度

事業内容:ガソリンスタンド経営
従業員数:52名
資本金:1,000万円
ガソリンスタンド5店舗を経営。
ガソリンスタンドは、2020年度末には2万9,005か所に半減。経営者の高齢化もあいまって廃業は増加の一途をたどるなど、斜陽といわれる業界にありながらも好業績を上げている。
課題
過去に経営者がトップダウンで物事を決めていた経験があり、従業員の自主性が身につかず、物事を判断できない組織になってしまうと痛感した。
危険物に関する規制強化や脱炭素の潮流など、外部環境を変えられない中で、「好業績を保っているうちに従業員の良いところを伸ばす」ことで、自社の競争力を高めようと考えた。
人事評価制度 構築の過程
会社の売上げを支えているのは従業員であり、従業員が納得感を持って仕事をする環境を作ることが会社の将来を形作っていくと考えた。
日頃から積極的に意見を出してくれる従業員に会社運営に関する外部研修を受けてもらった。研修後にその従業員と経営者、講師とミーティングを持ったところ、従業員が公平に評価される仕組みの必要性から「納得感が持てる人事評価制度」の提案を受けた。
同社では、これまでも人事評価制度があったものの、形骸化していた。コンサルタントの協力を得ながら、人事評価制度を抜本的に見直し再構築した。導入に当たっては、提案した従業員を人事評価制度導入の担当に任命し、導入の方法やスケジュール等は従業員主体で検討し、準備を進めた。
従業員目線で導入の必要性を丁寧に説明することで、従業員からの共感を得ながら導入することができた。新たな評価制度で重視したのは、従業員一人一人の個性や特徴を尊重し、公平感や納得感を得やすい制度にすることである。
これまでは、全従業員が一律の評価基準の下で評価される仕組みであったが、従業員それぞれに良いところがあり、求められる能力も異なる。そこで、従業員自身が半期ごとに、伸ばしたい分野や課題と感じている分野などを自由に評価項目として設定できるようにした。
人事評価制度の効果
従業員が自ら設定した評価項目を意識することで、これまで以上に各従業員が目的意識を持って業務に当たるようになった。
また、新たな人事評価制度を導入したことによる一番の成果は、「従業員の良いところを伸ばす」という会社の方針が浸透したことである。結果として、従業員の責任感や自主性がこれまで以上に強くなった。
こうした改革により、脱炭素化の影響を受けやすいガソリンスタンド業界にあって、同社は、従業員一人一人の工夫やサービス向上により、2021年度も好業績を維持している。
【人事評価制度】中小企業こそ導入が必要な理由:まとめ
人事評価制度がある企業の方が、売上高増加率が高いことが帝国データバンクの調査でわかっています。むしろ従業員規模の小さい中小企業こそ、従業員一人ひとりの力が重要となるため、人事評価制度が必要と言えます。
人事評価制度は、導入すればよいというものではなく、導入後に、適切に整備・運用し、公正な評価を行うことが必要です。自社単独で人事評価制度を導入・運用することが難しい場合は、支援機関やコンサルタントなども活用しながら、自社に適した人事評価制度を定着させていくことが良いでしょう。
従業員を評価するには、まず人事情報を一元管理し、管理者と経営層が効率的に情報共有することが重要です。勤怠管理と連動する人事労務システムを導入するなど、効率的な人事評価制度を構築しましょう。
中小企業庁:人的資本への投資と組織の柔軟性、外部人材の活用(https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2022/chusho/b2_2_2.html)を加工して作成
