「改正高年齢者雇用安定法」シニア人材を企業の戦力に

日本の総人口は、2022年10月1日時点で1億2494万7千人、その中で65歳以上人口は3623万6千人で過去最高となっています。団塊の世代が全て75歳となる2025年には、75歳以上の人口が全人口の約18%、2040年には65歳以上の人口が全人口の約35%となると推計されており、労働人口の減少が懸念されています。

そんな中、経済社会の活力を維持するため2021年4月から「改正高年齢者雇用安定法」が施行され、70歳までの就業確保措置を講ずることが事業主の努力義務となっています。この記事では、改正高年齢者雇用安定法について紹介します。

「改正高年齢者雇用安定法」の背景

「改正高年齢者雇用安定法」は労働人口の確保の目的がありますが、近年は高齢者の身体機能も若返りが実証されています。

例えば、体力テストの合計点では、2018年においては、男女とも65歳以上のいずれの年齢階級においても、20年前の5歳下の年齢階級の水準を超える水準となっているほか、歩行速度についても、1996(平成8)年と2006(平成18)年の10年間で同様に向上しています。

【1.新体力テストの合計点の推移】

 新体力テストの合計点の推移

【2.国立長寿医療研究センター長期縦断研究による通常歩行速度の10年間の変化】

通常歩行速度の10年間の変化

これらのデータに伴い、人々の意識における「高齢者像」も大きく変化しています。
寿命が伸びる中で、人々が「高齢者」ととらえているのは何歳以降であるかについて、その意識の変化を見てみます。

【3.「高齢者とは何歳以上か」との質問への回答 】

高齢者とは何歳以上か」との質問への回答

2014(平成26)年において「高齢者とは何歳以上か」という質問に対して「65歳以上」とする人は1割に満たず、「年齢では判断できない」とする割合が近年かなり増えてきています。

図1.2.3 出典 厚生労働省:平成の30年間と、2040年にかけての社会の変容

高年齢者雇用安定法について

高年齢者雇用安定法は、少子高齢化が急速に進行し人口が減少する中で、経済社会の活力を維持するため、働く意欲がある誰もが年齢にかかわりなくその能力を十分に発揮できるよう、高年齢者が活躍できる環境整備を図る法律です。
上記のデータを踏まえると自然な流れであり、いづれ70歳を高年齢者と呼ばなくなる時代がくるかもしれません。

「改正高年齢者雇用安定法」とは

65歳までの雇用確保(義務)+70歳までの就業確保(努力義務)

70歳までの就業確保措置を講じることが「努力義務」となったことに伴い、再就職援助措置・多数離職届等の対象が追加されます。

「改正高年齢者雇用安定法」高年齢者就業確保措置について

対象となる事業主

  • 定年を65歳以上70歳未満に定めている事業主
  • 65歳までの継続雇用制度(70歳以上まで引き続き雇用する制度を除く。)を導入している事業主

対象となる措置

次の5項目のうち、いずれかの措置(高年齢者就業確保措置)を講じるよう努める必要があります。

  1. 70歳までの定年引き上げ
  2. 定年制の廃止
  3. 70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入
    ※特殊関係事業主に加えて、他の事業主によるものを含む
  4. 70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
  5. 70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入
    a.事業主が自ら実施する社会貢献事業
    b.事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業

※ 4.5.については過半数組合等の同意を得た上で、措置を導入する必要あり。(労働者の過半数を代表する労働組合がある場合にはその労働組合、そして労働者の過半数を代表する労働組合がない場合には労働者の過半数を代表する者の同意が必要)
※ 3~5では、事業主が講じる措置について、対象者を限定する基準を設けることができますが、その場合は過半数労働組合等との同意を得ることが望ましい。
※ 高年齢者雇用安定法における「社会貢献事業」とは、不特定かつ多数の者の利益に資することを目的とした事業。「社会貢献事業」に該当するかどうかは、事業の性質や内容等を勘案して個別に判断される。
※ bの「出資(資金提供)等」には、出資(資金提供)のほか、事務スペースの提供等も含まれる。

「改正高年齢者雇用安定法」全般的な留意事項

  • 高年齢者就業確保措置のうち、いずれの措置を講ずるかについては、労使間で十分に協議を行い、高年齢者のニーズに応じた措置を講じることが望ましい。
  • 複数の措置により、70歳までの就業機会を確保することも可能だが、個々の高年齢者にいずれの措置を適用するかについては、個々の高年齢者の希望を聴取し、これを十分に尊重して決定する必要がある。
  • 高年齢者就業確保措置は努力義務であることから、対象者を限定する基準を設けることも可能だが、その場合には過半数労働組合等との同意を得ることが望ましい。
  • 高年齢者が従前と異なる業務等に従事する場合には、必要に応じて新たな業務に関する研修や教育・訓練等を事前に実施することが望ましい。

基準を設けて対象者を限定する場合は、対象者基準の内容は原則として労使に委ねられるものですが、労使で十分に協議した上で定められたものであっても事業主が恣意的に高年齢者を排除しようとするなど、高齢者雇用安定法の趣旨や他の労働関係法令に反するものや公序良俗に反するものは認められません。

「改正高年齢者雇用安定法」その他、講ずる措置別の留意事項

継続雇用制度

上記、「改正高年齢者雇用安定法」高年齢者就業確保措置についての、対象となる措置の「3.70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入」の場合の留意事項です。

  1. 70歳までの就業の確保が努力義務となることから、契約期間を定めるときには、70歳までは契約更新ができる措置を講じ、むやみに短い契約期間とすることがないように努めること。
  2. 70歳までの継続雇用制度は、特殊関係事業主以外の他社により継続雇用を行うことも可能だが、その場合には自社と他社との間で、高年齢者を継続して雇用することを約する契約を締結する必要があること。
  3. 他社で継続雇用する場合にも、可能な限り個々の高年齢者のニーズや知識・経験・能力等に応じた業務内容、労働条件とすることが望ましいこと。

創業支援等措置

上記、「改正高年齢者雇用安定法」高年齢者就業確保措置についての、対象となる措置の4.「70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入」 5.「70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入」の場合の留意事項です。

  1. 高年齢者のニーズや知識・経験・能力を踏まえて、業務内容や高年齢者に支払う金銭等を決定することが望ましい。
  2. 創業支援等措置により就業する高年齢者について、同種の業務に労働者が従事する場合における安全配慮義務をはじめとする労働関係法令による保護の内容も勘案しつつ、事業主が適切な配慮を行うことが望ましい。
  3. 創業支援等措置により就業する高年齢者が被災したことを当該措置を講ずる事業主が把握した場合には、事業主が、高年齢者が被災した旨を主たる事業所を所管するハローワークに届け出ることが望ましい。

「改正高年齢者雇用安定法」まとめ

人生が100年時代となり、終身雇用の時代のように、1つの会社で定年を迎えることも少なくなります。多様な職業を経験する人材が増え、シニア人材のスキルは企業にとって大きな戦力になると思われます。
単に労働力不足を補うものではなく、積極的にシニア人材活用の戦略を立て、実行していくことが高年齢者雇用には必要となっていくでしょう。

厚生労働省:改正高年齢者雇用安定法が令和3年4月から施行
(https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000694688.pdf)を加工して作成