働きやすい職場とは?離職防止と採用強化を実現するために

「最近、離職者が増えている…」「なかなか良い人材を採用できない…」
企業の成長を支える人事・労務担当者として、このような悩みを抱えていませんか? その解決の鍵を握るのが「働きやすい職場」の実現です。
この記事では、「働きやすい職場」の定義、企業にもたらすメリット、そして基本として重要な勤怠管理まで、網羅的に解説します。

働きやすい職場づくりが必要な理由

「働きやすい職場」の実現は、単なる努力目標や福利厚生の充実というだけでなく、現代の企業経営において重要性が増しています。企業の持続的な成長を支える上で、大切な取り組みと言えるでしょう。その背景には、企業を取り巻く深刻な環境変化があります。

企業を取り巻く環境

深刻化する労働力不足

少子高齢化が進み、生産年齢人口は減少の一途をたどっています。限られた人材をいかに獲得し、定着させるかが、企業の成長、ひいては存続の鍵を握っています。

働き方改革関連法の施行

時間外労働の上限規制、年次有給休暇の取得義務化など、法改正により企業にはより厳格な労務管理と、従業員の健康を守るための具体的な取り組みが求められています。法令遵守は当然の責務です。

従業員の価値観の多様化

終身雇用が前提でなくなり、ワークライフバランス、キャリアの自律性、社会貢献などを重視する従業員が増えています。給与や役職といった従来の要素だけでは、従業員の意欲を引き出し、繋ぎとめることは難しくなっています。

企業情報の透明化

SNSや口コミサイトなどを通じて、企業の働き方や社内環境に関する情報が、以前よりも格段に広まりやすくなっています。もしネガティブな評判が広まってしまうと、採用活動が難しくなるだけでなく、企業全体のイメージダウンに繋がり、結果として顧客や取引先からの信頼にも影響を与えかねません。

こうした社会や従業員の意識の変化に対応していく姿勢がなければ、優秀な人材を惹きつけ、維持することが困難になりがちです。その結果、組織全体の活力や生産性が低下し、中長期的には企業の競争力にも影響を及ぼす懸念があります。
だからこそ、「働きやすい職場」づくりは、単に従業員のためだけでなく、企業自身が変化に適応し、持続的に成長していくための条件といえます。

働きやすい職場のメリット

働きやすい職場を実現することで、企業は以下のような5つの大きなメリットを得ることができます。

離職率の低下と人材定着

従業員満足度が高まり、「この会社で働き続けたい」と思える環境は、貴重な人材の流出を防ぎ、採用・育成コストを削減します。

採用競争力の向上

「働きやすい」という評判は、求職者にとって強力な魅力です。優秀な人材を惹きつけ、採用活動を有利に進められます。

生産性の向上

心身ともに健康で、安心して集中できる環境は、従業員のモチベーションを高め、個々のパフォーマンス、ひいては組織全体の生産性を向上させます。

従業員エンゲージメントの向上

会社への信頼感や愛着(エンゲージメント)が高まると、従業員は自律的に貢献しようとします。これはイノベーションの創出にも繋がります。

企業イメージ・ブランド価値の向上

「従業員を大切にする企業」というポジティブなイメージは、顧客、取引先、投資家からの信頼を高め、企業のブランド価値向上に貢献します。

働きやすい職場とは?

「働きやすい職場」とは、従業員一人ひとりが心身ともに健康で、安全な環境の下、自身の能力を最大限に発揮し、意欲とやりがいを持って仕事に取り組める職場を指します。ここで重要なのは、「働きやすさ」と「働きがい」という2つの側面が、バランス良く満たされていることです。

【働きやすさ】

労働時間、休暇、福利厚生、ハラスメントのない環境、快適なオフィス設備など。主に、従業員が安心して健康に働けるための労働環境や条件に関する側面です。

【働きがい】

仕事内容への興味、自己成長の実感、貢献感、公正な評価、良好な人間関係、会社のビジョンへの共感など。主に、従業員が意欲を持って前向きに仕事に取り組むための仕事そのものや組織文化に関する側面です。

例えば、残業がなく休みは取りやすい(働きやすい)けれど、仕事にやりがいを感じられない、成長できない(働きがいがない)職場では、従業員の定着は難しいでしょう。逆に、仕事は面白い(働きがいがある)けれど、長時間労働が常態化し、心身が疲弊してしまう(働きにくい)職場も持続可能ではありません。
このように「働きやすさ」と「働きがい」の両方を追求し、実現している状態こそが、本当の働きやすい職場と言えるでしょう。

「働きやすい職場」と「雇用管理」に関する調査結果

1.働きやすさに対しての満足感

以下は正社員が、働きやすさに対して満足感をどの程度感じているかを表すグラフです。

男女別・年齢階級別にみた働きやすさに対する満足感

働きやすさに対する満足感は、「いつも感じる」又は「よく感じる」労働者の割合が、35~64歳の男性及び45~64歳の女性において少なく、65歳以降も正社員として働き続けている労働者は、男女ともに、「いつも感じる」又は「よく感じる」労働者の割合が、他の年齢階級に比べて多くなっています。

2.「働きやすい職場」の雇用管理

次に、正社員が働きやすさの向上のために重要と考えている企業側の雇用管理について見ていきます。
以下は男女別・年齢階級別にみた働きやすさの向上のために重要な雇用管理についての調査結果です。

男女別・年齢階級別にみた働きやすさの向上のために重要な雇用管理

①人事評価に関する公正性・納得性の向上、②本人の希望を踏まえた配属、配置転換、③業務遂行に伴う裁量権の拡大、④優秀な人材の抜擢・登用、⑤優秀な人材の正社員への登用、⑥いわゆる正社員と限定正社員との間での相互転換の柔軟化、⑦能力・成果等に見合った昇進や賃金アップ、⑧能力開発機会の充実や従業員の自己啓発への支援、⑨労働時間の短縮や働き方の柔軟化、⑩採用時に職務内容を文書で明確化、⑪長時間労働対策やメンタルヘルス対策、⑫有給休暇の取得促進、⑬職場の人間関係やコミュニケーションの円滑化、⑭仕事と育児との両立支援、⑮仕事と介護との両立支援、⑯仕事と病気治療との両立支援、⑰育児・介護・病気治療等により離職された方への復職支援、⑱従業員間の不合理な待遇格差の解消(男女間、正規・非正規間等)、⑲経営戦略情報、部門・職場での目標の共有化、浸透促進、⑳副業・兼業の推進>

上図から、男女別・年齢階級別に働きやすさの向上のために重要と考える企業による雇用管理をみると、男女ともにいずれの年齢階級においても「職場の人間関係やコミュニケーションの円滑化」が最も多く、次いで「有給休暇の取得促進」「労働時間の短縮や働き方の柔軟化」が高くなっています。

また、「15~34歳」「35~44歳」の女性は、「仕事と育児との両立支援」も重要と考えています。
この傾向は、女性ほどではないものの、「15~34歳」「35~44歳」の男性においてもみられ、年齢が上がると「仕事と介護の両立支援」「仕事と病気治療との両立支援」なども重要と考える者が多くなっています。

労働者は、年代や性別にかかわらず、労働時間、年次有給休暇、柔軟な働き方、職場の人間関係やコミュニケーションなどを、職場の働きやすさの向上のために重要な要素として捉えていることが明らかになりました。

3.「働きやすい職場」と労働時間の関係について

以下は、労働時間と働きやすさの関係についての結果です。

労働時間と働きやすさの関係について

男女別・年齢階級別に1か月当たりの労働時間の分布をみると、男性の「35~44歳」「45~54歳」「55~64歳」において、220時間以上の割合が高くなっています。

女性の200時間以上の割合をみると、「35~44歳」は低く、「45~54歳」「55~64歳」は高く、男女計における1か月当たりの労働時間と働きやすさとの関係をみると、労働時間が短くなるほど働きやすいと感じる者が増加し、逆に労働時間が長くなるほど働きにくいと感じる者が増えることが分かりました。

労働時間が月220時間以上になると働きにくいと感じている者が働きやすいと感じている者を上回ります。男性も女性も、1か月当たりの労働時間と働きやすさの関係では同様の傾向を示していますが、女性については働きにくいと感じている者が働きやすいと感じている者を上回る労働時間が月200時間と、男女計及び男性より短いようです。

4.「働きやすい職場」と年次有給休暇の取得率について

以下は、年次有給休暇と働きやすさの関係の結果です。

年次有給休暇の取得率と働きやすさの関係について

年次有給休暇の取得率が低下すると、働きにくいと感じる者が増加することを、上記データが示しています。

働きやすい職場をつくるポイント

「働きやすさ」と「働きがい」を高めるために、企業は具体的にどのような点に注力すべきでしょうか? ここでは、働きやすい職場づくりにおけるポイントを解説します。

労働時間と休暇の適正化(勤怠管理の徹底)

「働きやすい職場」と「雇用管理」に関する調査結果からもわかるように、働きやすい職場づくりの基盤となるのが、「適切な残業管理」と「有給休暇の取得しやすさ」です。
長時間労働の抑制は従業員の健康を守り生産性を高め、休暇の取得促進は心身のリフレッシュと安心感をもたらします。これらは法令遵守の観点からも必須であり、従業員が意欲的に働き続けられる環境を整え、人材の確保・定着を図る上で欠かせません。
この両輪を適正に回す上で、勤怠管理システムの活用が非常に効果的です。

勤怠管理システムによる「残業時間管理」と「有給休暇取得」の適正化

労働時間と休暇の適正化の実現に有効なのが勤怠管理システムの活用です。勤怠管理システムは、出退勤・休暇等の勤務実績を記録・集計・分析するクラウドサービスです。

残業時間管理
  • 異なる勤務体系でも残業時間の自動集計が可能

  • 従業員のスマートフォンやパソコンから残業を申請、管理者が承認を行うことで残業時間を確定

  • 1日8時間を超えた場合や、シフト勤務で個人毎に設定されている場合も入力・設定可能

  • 残業の上限時間を超過している従業員への対応や残業時間抑制の取り組みのために活用

有給休暇取得促進

有給休暇の取得しやすさは、働きやすい職場の重要な基本要素です。従業員の心身の健康維持やワークライフバランスに不可欠なだけでなく、気兼ねなく休める安心感にも直結するためです。
さらに、法令遵守や人材確保の面からも、企業にとって欠かせない取り組みと言えます。

  • 管理が煩雑になりがちな有給休暇の付与・消滅を、自動で行うことが可能

  • 従業員のスマートフォンやパソコンから休暇を申請、管理者が承認を行うことで休暇を確定

  • 入社日や従業員毎に設定した基準日を基に、労働基準法に基づいた有給休暇の付与・消滅を自動で行うことができる

  • 次期の付与予定まで一覧で表示され、すべての従業員の付与や取得状況などを把握しやすい

  • 有給休暇の半日取得や、パート従業員など時間勤務者の有給休暇取得日の給与支払いの算定時間を集計

従来の紙の申請書や口頭での有給休暇申請は、周囲への遠慮や自身の残日数が分かりにくいといった理由で、従業員がためらいを感じがちでした。勤怠管理システム導入後は、PCやスマホから気軽に申請でき、残日数も明確になるため、心理的なハードルが大幅に下がります。これにより、従業員は休暇を取得しやすくなり、管理側も取得状況の把握や管理が容易になります。

このように、勤怠管理システムは、労務担当者の集計・管理業務を大幅に効率化し、コンプライアンス遵守を確実にすると同時に、より働きやすい職場づくりに注力する時間をもたらします。

【勤怠管理システムの選定ポイント】

自社に最適な勤怠管理システムを選ぶことは、働きやすい職場づくりの第一歩となります。特に、この記事で挙げたような残業時間のリアルタイムでの可視化や申請・承認、そして多様化・複雑化する有給休暇のルール(自動付与、残日数管理、半休・時間休など)に、一つのシステムで確実に対応できる機能が網羅されているかは重要な選定ポイントです。

参照:勤怠管理 機能一覧

勤怠管理システム

持続的な成長と活躍を支援する総合的なアプローチ

企業が持続的に成長し、従業員が活躍できる環境を整えるためには、組織全体での包括的な取り組みが欠かせません。公正な評価制度や心理的安全性の確保、成長機会の提供、そして心身の健康を支える仕組みを通じて、従業員のモチベーションとエンゲージメントを高めることが可能です。

公正な評価と納得感のある処遇

従業員のモチベーションを高め、エンゲージメントを向上させる上で不可欠です。

  • 評価基準やプロセスを明確にし、従業員に公開する。

  • 公平な評価に基づき、納得感のある給与や賞与、昇進・昇格を実現する。

  • 上司と部下が定期的に面談し、評価結果だけでなく、成長に向けた対話を行う。

心理的安全性の確保と良好なコミュニケーション

従業員が安心して意見を言え、協力し合える環境が生産性を高めます。

  • 研修の実施、相談窓口の設置、厳正な対処により、あらゆるハラスメントを許さない姿勢を明確にする。

  • 部署内・部署間での情報共有を促進し、風通しの良い組織文化を作る。

  • 互いを尊重し、助け合える関係性を構築する。

成長機会の提供とキャリア支援

従業員の成長意欲に応え、長期的なキャリア形成をサポートします。

  • 研修制度の充実、資格取得支援、OJT(On-the-Job Training)の体系化。

  • 社内公募制度やジョブローテーションなどを通じて、多様な経験を積む機会を提供する。

  • 失敗を恐れずに新しいことに挑戦できる雰囲気を作り、学びの機会とする。

心身の健康維持サポート

従業員の健康は、企業の持続的な成長の基盤です。

  • 健康診断の実施徹底、ストレスチェック、産業医や保健師との連携強化。

  • 相談窓口の設置、ラインケア研修(管理職向け)、セルフケア研修(従業員向け)の実施。

  • 適切な温度・湿度・照明、整理整頓された空間、感染症対策、防災対策。

働きやすい職場を実現するためのステップ

働きやすい職場を実現するには、具体的なステップを踏むことが重要です。まずは現状の課題を明確にし、目標を設定します。その後、計画に基づいて施策を実行し、効果を測定しながら改善を続けます。このプロセスを通じて、従業員の満足度や生産性を向上させることができます。

ステップ1:現状把握と課題分析

まずは自社の「働きやすさ」「働きがい」の現在地を知ることから始めます。

  • 匿名のアンケートで、従業員の率直な意見や満足度を定量・定性的に把握します。

  • 離職率、残業時間、有給取得率、休職者数、ストレスチェック結果などの客観的なデータを分析し、傾向や課題を特定します。

  • 従業員代表や各部署の従業員、管理職への個別ヒアリングを通じて、調査だけでは見えない背景や具体的な問題点を深掘りします。

ステップ2:目標設定と計画策定

現状分析で見えた課題に基づき、目指す姿と具体的な計画を立てます。

  • 取り組むべき課題を明確にし、緊急度や重要度、実現可能性などを考慮して優先順位を決定します。

  • 「〇年度末までに残業時間を月平均〇時間削減」「有給取得率を〇%向上」など、測定可能で達成可能な目標を設定します。

  • 目標達成のための具体的な施策(制度改定、研修導入、ツール導入、環境整備など)をリストアップし、担当者、期限、予算を明確にした実行計画を作成します。

ステップ3:施策の実行と社内への周知

計画に基づいて、着実に施策を実行に移します。

  • 関係部署と連携し、アクションプランに沿って施策を実行します。

  • 働きやすい職場づくりへの本気度を、経営トップから全従業員に向けて明確に発信します。トップの姿勢が従業員の意識を変えます。

  • 新しい制度や取り組みの目的、背景、具体的な内容、利用方法などを、社内報、イントラネット、説明会などを通じて分かりやすく周知し、理解と協力を求めます。

ステップ4:効果測定とフィードバック

実行した施策が効果を発揮しているかを確認し、軌道修正を行います。

  • 設定したKPI(残業時間、有給取得率、ES調査結果など)を定期的に測定し、目標に対する進捗を確認します。

  • 施策に対する従業員の反応や意見、新たな課題などを、アンケートやヒアリングで継続的に収集します。

  • 取り組みの進捗状況や成果、課題などを、経営層や従業員に対して定期的に報告し、透明性を確保します。

ステップ5:改善と継続

働きやすい職場づくりに終わりはありません。PDCAサイクルを回し続けます。

  • 効果測定の結果や従業員からのフィードバックに基づき、施策の効果を分析し、必要に応じて内容を見直したり、新たな対策を追加したりします。

  • 特定の部署でうまくいった取り組みがあれば、他の部署にも共有し、全社的な改善に繋げます。

  • 働きやすい職場づくりを一過性のプロジェクトで終わらせず、企業の価値観や日常業務の中に根付かせ、継続的な取り組みとして定着させます。

注意点:陥りやすい失敗とその対策

取り組みを進める上で、以下の点に注意が必要です。

制度導入だけで満足してしまう

対策:導入目的を明確にし、利用促進のための啓蒙活動や管理職研修を併せて実施。利用状況を定期的に確認し、形骸化を防ぐ。

経営層や管理職が他人事になっている

対策:経営層が率先垂範し、重要性を繰り返し発信。管理職の評価項目に部下の育成や職場環境改善への貢献度を加えるなど、当事者意識を持たせる。

現場の声を無視して進めてしまう

対策:企画段階から従業員代表を参加させる、アンケートやヒアリングで丁寧に意見を吸い上げるプロセスを設けるなど、ボトムアップの視点も取り入れる。

働きやすい職場とは?離職防止と採用強化を実現するために:まとめ

「働きやすい職場」とは、従業員が健康で安全に、意欲とやりがいを持って能力を発揮できる場所であり、「働きやすさ」と「働きがい」の両立が鍵となります。深刻化する労働力不足や価値観の多様化といった社会変化の中で、その実現は企業の持続的な成長に不可欠な戦略的投資です。

優れた人材を惹きつけ、定着させ、従業員一人ひとりのパフォーマンスを最大化するためには、労働時間管理、公正な評価、良好なコミュニケーション、成長支援、健康サポート、信頼されるリーダーシップといったポイントを押さえ、現状把握から改善・継続までのステップを着実に実行していく必要があります。

経営者と現場の従業員と一体となって「働きやすい職場」づくりに取り組むことで、従業員エンゲージメントと企業競争力を高め、変化の激しい時代を勝ち抜くための強固な基盤を築くことができるでしょう。

出典 厚生労働省:就労を望む誰もが安心して働き続けられる「働きやすさ」の実現に向けて
(https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/19/dl/19-1-2-2.pdf) を抜粋・加工して作成