【職業安定法】労働条件の明示で求人のマッチング機能向上

職業安定法とは、主に職業紹介・労働者募集・労働者供給についてのルールを定めた法律です。
多くの企業が様々なメディアを利用して求人を行っていますが、中には実際の労働条件と異なる情報掲載があり、令和4年度では申出・苦情等件数が全国で3,890件となりました。このようなトラブルを避けるためにも、企業は労働者を募集する際、職業安定法を遵守することが必要です。
この記事では、職業安定法で定める求人情報・労働条件の明示等について、改正内容も含め解説します。

職業安定法について

職業安定法は、各労働者の能力に適合する職業に就く機会を与え、及び産業に必要な労働力を充足し職業の安定を図るとともに、経済の発展に寄与することを目的としています。
公共職業安定所などの職業安定機関が、関係行政庁や関係団体の協力を得て職業紹介事業などを行います。また、職業安定機関以外の職業紹介事業も、労働力の需要と供給を適切に調整するために重要な役割を果たします。それらの運営が適切に行われることも、この法律の目的の一部となっています。

令和4年10月1日には「求人等に関する情報の的確な表示の義務化」「個人情報の取扱いに関するルールの整備」「求人メディア等に関する届出制の創設」等、求職者が安心して求職活動をできる環境の整備と、マッチング機能の質の向上を目的として改正が行われました。

1. 求人等に関する情報の的確な表示義務

各事業者に対して求人等に関する、①求人情報、②求職者情報、③求人企業に関する情報、④自社に関する情報、⑤事業の実績に関する情報、のすべての的確な表示が義務付けられています。

求人企業の義務

虚偽の表示・誤解を生じさせる表示はしてはなりません。また、求人情報を正確かつ最新の内容に保つため以下の措置を行う必要があります。

  • 募集を終了・内容変更したら、速やかに求人情報の提供を終了・内容を変更する。

  • 求人メディア等の募集情報等提供事業者を活用している場合は、募集の終了や内容変更を反映するよう依頼する。

  • いつの時点の求人情報かを明らかにする。

  • 求人メディア等の募集情報等提供事業者から、求人情報の訂正・変更を依頼された場合には速やかに対応する。

職業紹介事業者、募集情報等提供事業者の義務

虚偽の表示・誤解を生じさせる表示はしてはなりません。また、以下の措置を行うなど、求人情報を正確・最新の内容に保つ必要があります。

全ての事業者

  • 求人情報・求職者情報の提供中止や訂正を求められたら、遅滞なく対応する。

  • 求人情報・求職者情報が正確・最新の内容でないことを確認したら、遅滞なく情報提供依頼者に訂正があるかを確認するか、情報の提供を中止する。

職業紹介事業者

  • 求人者・求職者に定期的に求人情報・求職者情報が最新であることを確認する。

または

  • 求人情報・求職者情報の時点を明らかにする。

依頼を受けて情報を提供する募集情報等提供事業者

  • 求人情報の提供依頼者に、募集が終了した場合や求人情報の内容変更について速やかに通知するよう依頼する。 求職者情報の提供依頼者には、求職者情報を正確・最新の内容に保つよう依頼する。

または

  • 求人情報・求職者情報の時点を明らかにする。

自ら収集した情報を提供する募集情報等提供事業者

  • 求人情報・求職者情報を定期的に収集・更新し、その頻度を明らかにする。

または

  • 求人情報・求職者情報の時点を明らかにする。

2. 個人情報の取扱いに関するルール

求職者の個人情報を収集する際には、求職者等が一般的かつ合理的に想定できる程度に具体的に、個人情報を収集・使用・保管する業務の目的をウェブサイトに掲載するなどして、明らかにしなくてはなりません。

「募集情報等提供のために使用します」とのみ表示することはできません。
例えば「求人情報に関するメールマガジンを配信するために利用します」「会員登録時に入力いただいた情報を、当社の会員企業に提供します」などと表示します。

3. 求人メディア等について届出制の創設

従来の求人メディア・求人情報誌だけでなく、インターネット上の公開情報等から収集(クローリング)した求人情報・求職者情報を提供するサービス等を行う事業者も職業安定法の「募集情報等提供事業者」です。

特定募集情報等提供事業者の届出

特定募集情報等提供事業者(求職者に関する情報※を収集する募集情報等提供事業者)に、届出制が導入されます。また年に1度、提供している募集情報等の規模等の事業の概況を報告する必要があります。

届出が「必要」な例

  • 会員登録を求めている場合

  • メールアドレスを集めて配信している場合

  • 閲覧履歴に基づく情報提供をしている場合

届出が「不要」な例

  • 紙媒体でのみ情報提供している場合

個人情報の保護

特定募集情報等提供事業者も、職業安定法の個人情報に関する規定の対象となります。

  • 業務の目的の範囲内で個人情報を収集・使用・保管しなくてはなりません。

  • 業務上知り得た人の秘密を漏らしてはなりません。

  • 個人情報をみだりに第三者に提供してはなりません。

明示すべき労働条件

2024年4月から、労働者の募集や職業紹介事業者への求人の申込みの際、明示しなければならない労働条件が追加されました。労働基準法に基づく労働契約締結時の明示義務と同様の改正となります。

  • 従事すべき業務の変更の範囲※

  • 就業場所の変更の範囲※

  • 有期労働契約を更新する場合の基準(通算契約期間または更新回数の上限を含む)

※「変更の範囲」とは、雇入れ直後にとどまらず将来の配置転換など今後の見込みも含めた締結する労働契約の期間中における変更の範囲のことをいいます。

最低限明示しなければならない労働条件等

労働者の募集や求人申込みの際に、少なくとも以下の事項を書面の交付によって明示しなければなりません。2024年4月1日からの職業安定法改正で以下のように明示事項が追加されました。(赤文字は追加事項)

明示するタイミング

  • ハローワーク等への求人の申込みや自社ホームページでの募集、求人広告の掲載を行う場合は、求人票や募集要項において、少なくとも上記のような労働条件を明示する必要があります。

  • 求人広告のスペースが足りない等、やむを得ない場合には「詳細は面談時にお伝えします」などと付した上で、労働条件の一部を別途のタイミングで明示することも可能です。この場合、原則、面接などで求職者と最初に接触する時点までに、全ての労働条件を明示する必要があります。

  • 面接等の過程で当初明示した労働条件が変更となる場合は、その変更内容を明示する必要があります。この明示は速やかに行う必要があります。

  • 労働契約締結時には労働基準法に基づき、労働条件通知書等により労働条件を明示することが必要です。ここでの明示についても、今回の職業安定法施行規則の改正と同様の改正が行われており、2024年4月1日以降、明示しなければならない労働条件が追加されます。

【職業安定法】労働条件の明示で求人のマッチング機能向上:まとめ

企業には虚偽の表示を避ける責任があります。労働条件の明示は求職者の信頼を築く重要な要素であり、情報提供者は正確性と最新性を保つことが求められます。
2024年の職業安定法改正では、求人情報に明示しなければならない労働条件が追加され、メディアに関するルールも厳格化されました。これにより、求職者と企業のマッチングを向上させ、求職者が安心して活動できる環境が整備されることが期待されます。

信頼を損なう虚偽の表示や個人情報の不適切な取り扱いは、企業の評判や信頼に影響を及ぼす可能性があります。法律を順守し透明性と公正性を守りながら人材を確保し、人事労務システムによる効率的な戦略の策定を行うことが、企業の長期的な成長につながるでしょう。

厚生労働省
令和4年度ハローワークにおける求人票の記載内容と実際の労働条件の相違に係る申出等の件数(https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/R4.pdf)
2022(令和4)年10月1日施行職業安定法 改正のポイント(https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000983824.pdf)
2024(令和6)年4月1日施行 改正職業安定法施行規則(https://www.mhlw.go.jp/content/001114110.pdf)
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