在籍型出向で賢く人材を育成!活用できる助成金制度とは

コロナ禍で広がった在籍型出向は、現在でも引き続き有効な手段として活用されています。出向経験者が職場に戻ることで、新しい知識や経験が共有され、職場全体の活性化につながります。
在籍型出向は、企業と従業員双方にとって成長の機会となるので、ぜひ活用したい仕組みです。この記事は、在籍型出向のメリットや活用できる助成金制度について紹介します。
Contents
在籍型出向の働き方
出向元企業と出向先企業との間の出向契約によって、労働者が出向元企業と出向先企業の両方と雇用契約を結び、出向先企業に一定期間継続して勤務することを「在籍型出向」といいます。
在籍型出向は、出向先企業と出向労働者との間に雇用契約関係があるため、労働者派遣には該当しません。

在籍型出向と労働者供給の関係
労働者供給とは、供給契約に基づいて労働者を他人の指揮命令を受けて労働に従事させることです。労働者供給を「業として行う」ことは、職業安定法第44条により禁止されています。
在籍型出向の形態は、労働者供給に該当しますが、以下のいずれかの目的があるもの等は、基本的には、「業として行う」ものではないと判断されます。
- 労働者を離職させるのではなく、関係会社で雇用機会を確保する
- 経営指導、技術指導を実施する
- 職業能力開発の一環として行う
- 企業グループ内の人事交流の一環として行う
在籍型出向のメリット
産業雇用安定助成金活用企業へのアンケート調査では、在籍型出向の評価は高く、評価しない意見は少数にとどまりました。
出向元企業が受けるメリット
「労働者の意欲の維持・向上につながる=63%」「労働者のキャリア形成・能力開発につながる=59%」など
n=336(複数回答可)出向元企業が在籍型出向を評価する理由(①~④ )、評価しない理由(⑤~⑧)

出向先企業が受けるメリット
「人手不足が解消され自社の従業員の業務負担を軽減できる=75%」「社会人としての基礎スキルや職務に必要な職業能力を持った人材を確保できる=52%」など
n=341(複数回答可)出向先企業が在籍型出向を評価する理由(①~④ )、評価しない理由(⑤~⑧)

出向労働者が受けるメリット
「出向先での新しい仕事の経験がキャリアアップ・能力開発につながった=57%」「出向元での雇用が維持されているので、安心して働くことができた=46%」など
n=382(複数回答可)出向労働者が在籍型出向を評価する理由(①~③ )、評価しない理由(④~⑤)

※産業雇用安定助成金活用企業へのアンケート調査(令和3年8月厚生労働省調べ)
調査対象:令和3年6月30日現在で産業雇用安定助成金の出向実施計画を提出した
出向元・出向先企業、在籍型出向を経験された労働者
・調査対象事業所数:出向元企業540社、出向先企業604社、出向労働者1企業あたり1名
・アンケート回答数:出向元企業336社、出向先企業341社、出向労働者382名
・調査方法:調査対象企業に都道府県労働局からアンケート調査票を郵送配布、郵送回収
在籍型出向の準備
在籍型出向は、労働者の個別的な同意または就業規則等の社内規程に基づき行う必要があります。
在籍型出向をする際に、出向の必要性や出向期間中の労働条件等を、出向元企業、出向先企業および労働者の三者間でよく話し合った上で、出向契約の内容や出向期間中の労働条件等を明確にしておくことが重要です。
- ステップ1 出向元↔労働者
労働者の個別同意や就業規則等の整備、労使の話し合い
在籍型出向を命じるには、労働者の「個別的な同意を得る」か、または「出向先での賃金・労働条件、出向の期間、復帰の仕方などが就業規則や労働協約等によって労働者の利益に配慮して整備されている」必要があるとされています。
労働者に出向を命じることができる場合であっても、出向の必要性、対象労働者の選定に関する事情等に照らして、その権利を濫用したものと認められる場合は、その命令は無効となります(労働契約法第14条)。
出向を行う際は、その必要性や出向期間中の労働条件等ついて、労使の間でよく話し合いを行い、労働者の個別的な同意を得ていくことが望まれます。
- ステップ2 出向元↔出向先
出向契約の締結
出向契約では、以下の事項を定めておくことが考えられます。出向期間
職務内容、職位、勤務場所
就業時間、休憩時間
休日、休暇
出向負担金、通勤手当、時間外手当、その他手当の負担
出張旅費
社会保険・労働保険
福利厚生の取扱い
勤務状況の報告
人事考課
守秘義務
損害の賠償
途中解約
その他(特記事項)
- ステップ3 出向先↔労働者
出向期間中の労働条件等の明確化
出向労働者の出向先企業での労働条件、出向元企業での身分等の取り扱いは、出向元企業、出向先企業および出向労働者の三者間の取り決めによって定められます。
上記の取り決めによって定められた権限と責任に応じて、出向元企業・出向先企業それぞれの使用者が、出向労働者に対して、賃金の支払等、労働基準法等における使用者としての責任を負います。
労働条件は、具体的に以下の項目について明確にする必要があります。これらの労働条件は、出向に際して出向先企業が労働者に明示することになりますが、出向元企業が出向先企業に代わって明示しても問題ありません。
在籍型出向|活用できる助成金制度
労働者のスキルアップを支援する「産業雇用安定助成金(スキルアップ支援コース)」
従業員の専門能力やスキルを向上させたいと考える企業にとって、在籍型出向は非常に効果的な選択肢です。自社内だけでは得られない実践的な経験を通じて、新たなスキルの習得が期待できます。この人材育成を目的とした在籍型出向を後押しするのが、「産業雇用安定助成金(スキルアップ支援コース)」です。
助成の対象となる方と条件
この助成金は、以下の条件を満たす在籍型出向を行う出向元事業主に支給されます。ただし、企業グループ内での出向は対象外です。
労働者のスキルアップを目的としていること。
出向した労働者が、出向期間終了後に元の事業所へ戻って働くことが前提であること。
労働者の出向復帰後6か月間の各月の賃金が、出向前賃金と比較して5%以上上昇していること。
助成率=中小企業事業主: 2/3 (中小企業事業主以外: 1/2)
助成額=「出向労働者の出向中の賃金のうち出向元が負担する額」または「出向労働者の出向前の賃金の1/2の額」のいずれか低い額に、上記の助成率をかけた額が支給されます。この助成は最長1年間が対象です。
支援の内容(助成率と助成額)
条件を満たした場合、出向元事業主には助成金が支給されます。
この制度は、企業が戦略的な人材投資を行い、従業員の市場価値を高めるための強力なインセンティブとなります。
在籍型出向先の見つけ方
在籍型出向を実施した企業(出向元・出向先)では、在籍型出向の相手先は、もともと取引関係のある企業であった場合が約半数、公的機関からの紹介による場合が約2割程度となっています。
もともと取引関係のある企業同士だったり、社長同士が知り合いだったりするケースが多くありますが、一時的に仕事がなくなっているということを他社に知られたくないっていう声もあるようです。
その場合は、在籍型出向のマッチング支援を無料で行っている、「産業雇用安定センター」という公益財団法人の支援を受けるという方法があります。全国47都道府県に事務所があり、締結のサポートをしてくれるので、相談することができます。
在籍型出向で賢く人材を育成!活用できる助成金制度とは:まとめ
在籍型出向は、企業と従業員双方に新たな可能性を提供する戦略的な選択肢です。出向元企業は人材育成と雇用維持、出向先企業は即戦力を確保でき、従業員にとっては新しいスキルを身につける貴重な機会となります。
特に人手不足に悩む企業にとって、すぐに人材を確保する手段として有効です。適切な準備とコミュニケーションを通じて、在籍型出向を成功させることで、人手不足解消だけでなく企業の競争力を高め、職場の活性化を促進できます。
この多方向的なwin-winの関係が、企業の持続的成長と労働市場の流動性向上を実現する鍵となるでしょう。
厚生労働省
在籍型出向「基本がわかる」ハンドブック(https://www.mhlw.go.jp/content/000739527.pdf)
中小企業施策利用ガイドブック(https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/g_book/2025/download/2025gbookall.pdf)
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