日本経済の本格的な成長に向けて

2022年版中小企業白書では、新型コロナウイルス感染症の流行、原油・原材料価格の高騰等に直面する中小企業の動向や、自己変革に向けて新たな挑戦を行うために必要な取組についての、分析が行われました。
この記事では、今後日本経済を本格的な成長に向けていくため、2022年版の中小企業白書の内容を紹介します。
Contents
中小企業白書の概要
2022年版の中小企業白書では、事業者の自己変革をテーマに、ウィズコロナ、アフターコロナの各フェーズにおいて、事業者にとって必要な取組を取り上げています。
具体的には、短期・中長期のスパンで中堅企業への成長やサプライチェーンの中核的存在を目指す中小企業などが新たな挑戦を行うために、事業再構築をはじめ、どのような取組が必要なのかについて分析が行われました。
倒産の状況
中小企業の業況判断DIは、2020年4-6月期にリーマンショック時を下回る水準まで急激に悪化。足下では、持ち直しの動きも見られるが、依然として厳しい状況にあります。
2022年においても、新型コロナウイルス感染症は、引き続き多くの中小企業に影響を与えてきました。
資金繰り
我が国の倒産件数は、2009年以降は減少傾向で推移。2021年は資金繰り支援策などの効果もあり、6,030件と57年ぶりの低水準となりましたが、一方で、新型コロナウイルス関連破たんの件数は、昨年9月から4ヶ月連続で月別件数として過去最多を更新するなど、月別件数は増加傾向にあり、昨年の休廃業・解散件数は、前年から減少したものの、民間調査が開始された2000年以降で過去3番目の高水準となっています。
中小企業・小規模事業者の資金繰りは、感染症流行後に、いずれの金融機関においても貸出残高が増加しており、実質無利子・無担保融資制度を活用しながら、積極的な融資が行われている状況がうかがえます。
また、宿泊業をはじめとする各業種において感染症流行前と比べて借入金月商倍率が上昇しており、借入金の返済余力が低下している可能性があります。
雇用・賃金の状況
中小企業の人手不足感は、感染症流行の影響により一時的に弱まったものの、依然として人手不足の状況が見られます。技能実習および資格外就労(留学)の在留資格における外国人労働者数は、足下で減少しました。
また、最低賃金は継続的に引き上げられており、2020年を除き、近年は引上げ幅も大きくなっています。中規模企業における労働分配率について、2009~2018年度は、人件費の減少に対して付加価値額は増加し、低下。これに対して、2018~2020年度は、人件費の減少率を上回る形で付加価値額が減少したことから、上昇しました。
原油・原材料価格の高騰
足下では、ウクライナ情勢の緊迫化している中で、燃料や非鉄金属などの取引価格や、木材・鋼材といった資材や電力価格も上昇傾向にあります。
原油先物価格は、感染症流行前の2019年12月末時点から約8割上昇。同様に原油等の輸入価格が8割上昇したと仮定した場合、石油・石炭製品部門では約5割、電力・ガス・熱供給部門では約3割といった度合いで、原油等の投入が多い部門において産出価格が上昇すると推計されます。
中小企業の取り組み
事業承継
年齢の高い経営者の比率は高まっており、事業承継は引き続き社会的な課題となっています。
経営者年齢が若い企業では、試行錯誤を許容するなど新たな取組に果敢にチャレンジする傾向にあり、事業承継を適切に実施し、次世代の後継者に引き継いでいくことが重要です。
中小企業におけるM&Aは、近年増加傾向。後継者不在企業の割合は低下しており、経営者の事業承継に対する意識の変化が見られます。既存の経営資源を活かし、後継者が新たな取組や販路開拓に積極的に取り組む企業も存在します。
人的資本への投資
計画的なOJT研修、OFF-JT研修いずれも実施している企業では、売上高増加率が最も高いことから、中小企業が重視する経営資源は「ヒト」であり、従業員の仕事に対する意欲向上の観点からも、従業員の能力開発に取り組むことが重要です。
従業員に継続的に学びの機会を提供していたことで、感染症流行による影響を受けながらも、従業員の工夫で急回復している企業も存在します。
海外展開
中小企業においても、2016年以降、越境ECを利用している企業の割合は増加傾向です。しかし販売先に関する情報不足や自社ブランド認知度向上の難しさなどの課題を抱えています。
そんな中、JAPANブランド育成支援等事業やJETROの新輸出大国コンソーシアムなど、自社の課題に合わせて国の支援制度を活用し、海外展開を進める企業も存在します。
中小企業が対応を迫られる外部環境
グリーン
脱炭素化に向けた具体的な取組では、エネルギー効率の高い機器・設備の導入や、太陽光発電設備の設置、電化の促進などが実施されています。
脱炭素化を進めることで、多くの企業はコスト削減効果を感じており、企業によっては市場における競争力強化につながっていると実感。脱炭素化に取り組んだことで、新たな取引先の創出や企業価値の向上につながっている企業も存在します。
スタートアップ
起業家の多くが、身近な起業家の影響を受けていますが、日本ではこうした起業家が身近にいる人の割合が他国と比べて低くなっています。また、「失敗に対する危惧」や「学校教育」も日本で起業が少ない要因として挙げられ、こうした環境の整備が求められています。
日本におけるスタートアップ向けの投資額は増加傾向にあるものの、米国と比較すると依然として大きな差があり、スタートアップの資金調達環境の整備も必要です。
共通基盤としての取引適正化とデジタル化、経営力再構築伴走支援
コスト変動への対応だけでなく、中小企業における賃上げといった分配の原資を確保するための取引適正化と、価格転嫁に向けては、販売先との交渉機会を設けることが重要です。デジタル化の進展に取り組み、新たなビジネスモデルの確立につながる段階への到達を目指します。
また経営者自らが自己変革を進めるためには、支援機関との対話を通じて経営課題を設定し、そのためにも、第三者である支援者・支援機関が、経営者等との信頼関係を築き、対話を重視した伴走支援を行うことが有効です。
日本経済の本格的な成長に向けて:まとめ
新型コロナウイルス感染症の流行や原油・原材料価格の高騰、部材調達難、人材不足といった供給面の制約もある中で、中小企業は引き続き厳しい状況にありました。
こうした中でも、中小企業を取り巻く需給構造の変化や、デジタル・グリーン化の進展等を踏まえ、事業再構築などに取り組みながら生き残りを図りつつ、次の成長に向けた取組も進み始めている企業もあるようです。
後も政府や各機関の分析資料や経済見通しをチェックし、本格的な企業の成長に向けて準備していきましょう。
内閣府:令和4年度日本経済2022-2023(https://www5.cao.go.jp/keizai3/2022/0203nk/22youyaku.pdf)を加工して作成。
