「多様な正社員」制度導入で安定的な人材確保を

個人が自由度の高いライフスタイルや働き方を実現できることは、企業と労働者双方にとってメリットがあります。「多様な正社員」制度の導入により人材の多様性を促進し、成長につなげることができます。
この記事では、「多様な正社員」制度導入について紹介します。
Contents
「多様な正社員」とは
多様な正社員とは、従来の正社員とは異なり、職務内容や勤務地、労働時間などが限定された正社員のことを指します。
限定の方法は様々で、一部の企業では、通常の正社員とは別に社員区分を設けずに、限定された条件で働ける正社員を採用しているところもあります。
このような働き方には、職務限定正社員、勤務地限定正社員、短時間正社員のほか、最近注目されている週休3日制が含まれます。これにより、通常の労働条件では雇用が難しい人材も採用することが可能となり、高い技術や専門知識を持った人材を確保することができます。
多様な正社員 企業のメリット
- 多様な正社員を導入・運用することで、家庭の事情等により転勤やフルタイム勤務が困難なため、辞めざるをえない従業員の離職を防止することができる。
- 多様な正社員制度導入は、地元での就業を希望する優秀な人材の採用や定着促進につながる。
- 勤務地限定正社員を、無期転換後の受皿とすることで、労働力の安定的な確保を図り、さまざまな人材の活用を促す。
- 勤務地や職務が限定された多様な正社員を、非正規雇用の労働者の登用後の受皿とすることで、企業の発展を支えるために必要な人材の育成、技能の蓄積・承継が可能となる。
- 勤務地限定正社員を導入し、地元密着型の人材採用を行うことで、より地域のニーズに合ったサービスの提供や地元の顧客確保が可能になる。
多様な正社員 労働者のメリット
- 勤務地や残業時間をコントロールできるようになり、ワーク・ライフ・バランスの実現が可能となる。
- 安定した雇用のもとで、自身の能力を発揮することや処遇改善が可能になり、モチベーション高く働くことができる。
- 安定した雇用のもとで、中長期的なキャリア形成を見据えたスキルアップが可能になり、特定の職務のスペシャリストとしてキャリア・アップも可能となる。
- 育児・介護等の事情により転勤やフルタイム勤務が困難な場合も、就業の継続、能力の発揮が可能となる。
多様な正社員.1 職務限定正社員
担当する職務内容が限定されている多様な正社員を「職務限定正社員」といいます。
例えば金融業界の証券アナリストや情報サービス業界のデータサイエンティストなど高度な専門知識が必要とされる業務や、資格が必要とされる職業である医療・福祉業界や教育業界、運輸業界なども含まれます。
工場の技能労働者や店舗の販売員、一般職などについては、職務の幅を持たせることで事業の円滑な運営や労働者のキャリア形成に影響が少なくなると考えられます。
「職務限定正社員」制度導入のポイント
- 職務限定の有無や、限定の内容を、就業規則、労働契約書等で明示する。
- 職務給または職務給の要素を強く取り入れた賃金体系を導入する際、賃金水準は職務の難易度に応じて設定されることが望まれる。
- 職務の廃止などがあった場合でも、直ちに整理解雇が有効とならず、配置転換などの解雇回避努力が求められる。
- 限定された職務を遂行する能力が不足している場合も、改善の機会を与えたり、可能な範囲で教育や訓練、配置転換を行う必要がある。
- 職務限定正社員は、自らのキャリア形成において積極的な姿勢が求められるため、彼らが必要とする能力開発機会を提供し、専門的かつ実践的な能力開発を支援することが望ましい。
- 非正規雇用労働者や、一般的な正社員に転換する制度を明確に設けておくことが望ましい。
多様な正社員.2 勤務地限定正社員
転勤範囲が限定されていたり、転居を伴う転勤がない正社員を勤務地限定正社員といいます。
勤務地を限定することで、育児・介護等により転勤が困難な人や、地元で就業したい人の定着に適しています。また、一般職よりも幅広い職務や高度な職務を担うことで、地元人材の意欲や能力の発揮につながり、地域のニーズに合ったサービス提供や顧客確保に効果的です。さらに無期転換ルールによる無期転換労働者の受け皿としても有効です。
「勤務地限定正社員」制度導入のポイント
- 正社員と職務内容が変わらず、かつ転勤しない者がいるときは、賃金水準の差を大きくしない方が勤務地限定正社員の納得を得られやすい。他方、負担が大きい海外転勤などを担う正社員がいる場合は、勤務地限定正社員との賃金水準の差を一定程度広げることで、正社員の納得を得られやすい。
- 事業所が閉鎖された場合でも、直ちに整理解雇が有効にならず、まずは配置転換などの解雇回避策を講じることが求められる。
- 勤務地が限定されていても、経験できる職務の範囲や習得する能力への影響が少ない場合、昇進スピード等は、正社員との差を小さくすることが求められる。
- 非正規雇用労働者や、正社員への転換制度を設けることが望まれるが、正社員との職務内容に大きな違いがない場合は、正社員に区分変更せずに勤務を続けながら、必要な期間だけ「労働条件の変更」として勤務地を限定することもできる。
多様な正社員.3 短時間正社員
正社員は、必ずしもフルタイム勤務である必要はなく、近年フルタイム正社員と同等若しくはそれ以上の意欲や能力があるものの、長い時間は働けない人材が増えつつあります。このような人材を活用するため、短時間正社員制度があります。
短時間正社員制度は、育児・介護等と仕事を両立したい社員、決まった日時だけ働きたい入職者、定年後も働き続けたい高齢者、キャリアアップをめざすパートタイム労働者等、様々な人材に、勤務時間や勤務日数をフルタイム正社員よりも短くしながら活躍してもらうための仕組みです。
ここで言う短時間正社員とは、1週間の所定労働時間がフルタイム正社員より短い正規雇用の社員で、次のいずれかに該当する人材のことを指します。
- 期間の定めのない労働契約(無期労働契約)を締結している
- 時間当たりの基本給及び賞与・退職金等の算定方法等が同種のフルタイム正社員と同等
※フルタイム正社員…1週間の所定労働時間が40時間程度(1日8時間・週5日勤務等)で、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)を締結した正社員
「短時間正社員」制度導入のポイント
- 短時間正社員制度の導入の目的を明確化する
- 短時間正社員に期待する役割(職務内容等、適用期間、労働内容)を検討する
- 短時間正社員の労働条件(人事評価、賃金、教育訓練)について、検討する
- 将来的なフルタイム正社員への復帰・転換について検討する
多様な正社員.4 週休3日制
多様な正社員の働き方として、週に3日間の所定休日を付与する、週休3日制があります。
育児や介護、病気治療などの理由で勤務日を減らしたい人の定着や、地方兼業や副業の促進を通じた人材多様化につながります。
また、大学院での学び直しやボランティア活動などを希望する方のモチベーション向上にも役立ちます。さらに、働きやすい職場のアピールや、採用競争力の強化にも有効です。
「休3日制」導入のポイント
- 導入方針の明確化を行う。
- 所定労働時間の短縮により週休3日制の実現を図る場合は、短時間正社員制度の導入手順と同様に検討を進める。
- 週休3日制を活用して労働者が兼業・副業を行う場合、労働時間の通算管理が必要な場合があるので、兼業・副業の有無等を把握しておく。
「多様な正社員」制度導入で人材確保を:まとめ
多様な正社員は、企業にとって柔軟な雇用形態となり、通常の労働条件では雇用が難しい人材も採用することができるため、多様な正社員は社会的インクルージョンの一環としても注目されています。
企業の人材確保や社会の多様性の実現に向けて、今後も多様な正社員の導入が進んでいくことが期待されます。
厚生労働省:多様な働き方の実現応援サイト(https://part-tanjikan.mhlw.go.jp/)の一部を加工して作成
