「事業承継・引継ぎ補助金」最大800万円!貴重な経営資源を守る

中小企業の廃業による雇用や技術の喪失を防ぎ、世代交代等を契機とした成長を進めるため、事業承継が一層重要となっています。「事業承継・引継ぎ補助金」は中小企業の事業承継やM&Aを契機とした経営革新への挑戦などを支援し、経済の活性化を図ることを目的とするものです。
この記事では、事業承継・引継ぎ補助金の概要を紹介します。
Contents
中小企業の課題
日本企業のうち99%を占めると言われる中小企業は、雇用や技術の担い手として日本経済を支える重要な存在です。しかし現在、中小企業の後継者不足による廃業が増加しており、貴重な雇用や技術への影響が懸念されています。


出典 中小企業庁:財務サポート 「事業承継」(https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/know_business_succession.html)
事業承継・引継ぎ補助金とは
事業承継・引継ぎ補助金は、こういった中小企業の課題を解決するために、事業承継を契機として経営革新等を行う中小企業・小規模事業者に対して、取組に要する経費の一部を補助することで、事業承継、事業再編・事業統合を促進し、経済の活性化を図ることを目的とするものです。
事業承継・引継ぎ補助金には、「経営革新事業」「専門家活用事業・廃業」「再チャレンジ事業」という3つの事業に分かれています。
1. 事業承継・引継ぎ補助金【経営革新事業】
制度上のポイント
1. 一定の賃上げを実施した場合における補助上限額は800万円
本補助事業における補助上限額は原則600万円ですが、一定の賃上げを実施した場合、補助上限額が800万円に引き上げられます。
補助額の内、600万円までの部分は補助率は3分の2、600万円を超え800万円以下の部分の補助率は1/2以内となります。
2. 一定条件を満たした場合、補助率が引き上げられる
小規模企業者・営業利益率が低下・営業利益または経常利益が赤字・中小企業活性化協議会等からの支援を受けている、のいずれかに該当する場合、補助率は2/3以内に引き上げられます。
3. 同一法人内の代表者交代の場合は、未来の承継も補助対象
事業承継前の取組を補助金の対象とすることで、後継者の早期成⻑を後押しし、事業承継の早期化・円滑化につながるものと考えられることから、一部要件が緩和されました。「未来の承継」※として、後継者候補を主体に事業承継前における経営革新的な取組にかかる費用が支援されます。
※未来の承継とは
同一法人内の代表者交代による事業承継であること、将来経営者となることが十分見込まれる後継者が選定できていること、後継者候補が該当法人に在籍していること、補助事業期間が終了する事業年度から5年後の事業年度までに事業承継を完了する予定である等の要件を満たす場合、事業承継対象期間以降の事業承継においても、本補助事業の対象となります。
事業承継・引継ぎ補助金【経営革新事業】各支援類型の概要
創業支援型( I型 )
創業を契機として、引き継いだ経営資源を活用して経営革新等に取り組む者を支援する類型
■対象
事業承継対象期間内に法人の設立又は個人事業主としての開業を行う場合
創業にあたって、廃業を予定している者等から、有機的一体としての経営資源を引き継ぐ場合
経営者交代型( II型 )
親族内承継や従業員承継等の事業承継を契機として、経営革新等に取り組む者を支援する類型
■対象
個人事業主への事業譲渡
同一法人内での代表者交代
M&A( III型 )
事業再編・事業統合等のM&Aを契機として、経営革新等に取り組む者を支援する類型
■対象
株式譲渡や事業譲渡、吸収分割等によりM&Aを実施する場合(親族内承継は対象外)
事業承継・引継ぎ補助金【経営革新事業】補助額
■対象
店舗等借入費 / 設備費 / 謝金 / 外注費 / 廃業費 / 産業財産権等関連経費 / 原材料費 / 旅費 / 委託費 / マーケティング調査費 / 会場借料費 / 広報費
■補助率・補助上限額


2. 事業承継・引継ぎ補助金【専門家活用事業】
制度上のポイント
1. 同一案件について、買い手・売り手の双方による申請が可能
専門家活用事業では、買い手支援型(承継者)と売り手支援型(被承継者)の2つの類型がありますが、同一の経営資源引継ぎ(M&A)案件について、買い手と売り手の双方がそれぞれの類型で申請することも可能です。
2. 「M&A支援機関登録制度」に登録された専門家による支援が対象
委託費のうち、FA・M&A仲介費用については、「M&A支援機関登録制度」に登録されたFA・仲介業者による支援のみが補助対象となります。なお、登録FA・仲介業者については、中小企業庁HP又はM&A支援機関登録制度事務局HPにおいて公表されています。
3. 補助金の交付を受けるためには、実質的な経営資源の引継ぎが必要
承継者と被承継者による実質的な事業再編・事業統合が行われていないと事務局が判断した場合は補助対象外となります。
補助対象外となる例
事業再編・事業統合を伴わない物品・不動産等のみの売買
グループ内の事業再編及び親族内の事業承継等
4. 決権の割合により交付申請ができないケース
業再編・事業統合の後に、承継者が保有する対象会社又は被承継者の議決権*が過半数にならない場合や、事業再編・事業統合の前に、承継者が保有する対象会社又は被承継者の議決権が過半数の場合などは補助対象外となります。
補助事業期間内に経営資源引継ぎが実現しなかった場合でも、一部費用は補助金の交付対象
補助事業期間内に経営資源引継ぎが実現しなかった場合、補助事業期間終了後に所定の届出を行うことで、売り手支援型においては基本合意書締結以降にかかった費用、買い手支援型においてはデューデリジェンス費用が補助対象経費として認められます。
事業承継・引継ぎ補助金【専門家活用事業】各支援類型の概要
買い手支援型( I型 )
事業再編・事業統合に伴い株式・経営資源を譲り受ける予定の中小企業等を支援する類型
■対象
株式・経営資源の引継ぎに関する最終契約書の契約当事者(予定含む)となる中小企業者
売り手支援型( II型 )
事業再編・事業統合に伴い株式・経営資源を譲り渡す予定の中小企業等を支援する類型
■対象
株式・経営資源の引継ぎに関する最終契約書の契約当事者(予定含む)となる中小企業者等
■共同申請
株式譲渡の場合は、支配株主(株式譲渡に伴い異動する株式を発行している中小企業の、議決権の過半数を有する株主)または株主代表(議決権の過半数を有する株主の代表者)との共同申請が可能。
事業承継・引継ぎ補助金【専門家活用事業】補助額
■対象
委託費 / 謝金 / システム利用料 / 廃業費 / 旅費 / 保険料 / 外注費
■補助率・補助上限額


3. 事業承継・引継ぎ補助金【廃業・再チャレンジ事業】
補助対象事業のパターン
廃業の対象は以下の2パターンがあり、再チャレンジ申請の場合は「会社自体の廃業」のみ、併用申請の場合は「会社自体の廃業」及び「事業の一部の廃業」が申請の対象となります。
会社自体の廃業
会社自体を廃業するために、補助事業期間内に廃業登記を行う、在庫を処分する、建物や設備を解体する、原状回復を行う事業
事業の一部の廃業
事業の一部を廃業(事業撤退)するために、補助事業期間内に廃業登記を行う、在庫を処分する、建物や設備を解体する、原状回復を行う事業
経営革新事業・専門家活用事業と併用申請する場合、各事業の補助率が適用されます
経営革新事業や専門家活用事業と併用申請する場合、廃業費の上乗せ額は150万円を上限とし、補助率は各事業の補助率が適用されます。各事業の補助率は、補助対象者や賃上げの実施有無などにより異なり、2/3以内または1/2以内のいずれかです。
事業承継・引継ぎ補助金【廃業・再チャレンジ事業】の概要と要件
単独申請
M&Aで事業を譲り渡せなかった廃業・再チャレンジ
M&Aによって事業を譲り渡せなかった中小企業者等の株主や個人事業主が、地域の新たな需要の創造や雇用の創出にも資する新たなチャレンジをするために、既存事業を廃業する場合
■要件
2020年以降に売り手としてM&Aに着手し、6か月以上取り組んでいること
廃業の完了と、その後の再チャレンジ※
※再チャレンジの内容
新たな法人の設立
個人事業主としての、新たな事業活動の実施
自身の知識や経験を活かせる企業への就職や社会への貢献等
注意
再チャレンジ申請は、補助事業期間内の廃業完了が必須要件。
廃業予定の中小企業と、その支配株主や株主代表との共同申請が必須。 (個人事業主を除く)
併用申請
経営革新=事業承継に伴う廃業
事業承継(事業再生を伴うものを含む)によって事業を譲り受け、新たな取り組みを実施するにあたって、既存の事業や、譲り受けた事業の一部を廃業する場合
■要件
事業承継後(M&A後)の新たな取り組みの実施
専門家活用(買い手)=事業の譲り受けに伴う廃業
M&Aによって事業を譲り受ける(他者の経営資源を引き継いで創業した場合も対象)にあたって、既存の事業や、譲り受けた事業の一部を廃業する場合
■要件
M&Aによる、他者からの事業の譲り受け(全部/一部譲渡)
専門家活用(売り手)=事業の譲り渡しに伴う廃業
M&Aによって事業を譲り渡す場合に、M&A後も手元に残った事業を廃業する場合
■要件
M&Aによる、他者への事業の譲り渡し(全部/一部譲渡)
事業承継・引継ぎ補助金【廃業・再チャレンジ事業】補助額
■対象
廃業支援費 / 在庫廃棄費 / 解体費 / 原状回復費 / リースの解約費 / 移転・移設費用
■補助率・補助上限額

なお、この記事では2023年5次公募の内容を紹介していますが、5次公募は終了しました。2023年6月中~下旬に、6次公募の公募要領開示と交付申請受付開始が予定されていますので、申請の際には事業承継・引継ぎ補助金のウェブサイト最新情報をご確認ください。
事業承継・引継ぎ補助金ウェブサイト https://jsh.go.jp
「事業承継・引継ぎ補助金」最大800万円!貴重な経営資源を守る:まとめ
後継者の不在だけでなく、昨今の物価高や人手不足などにより、財務内容に問題がないにもかかわらず、先行きを悲観し企業体力があるうちに会社をたたむ「あきらめ廃業」の増加が懸念されています。
そのため、国は事業承継・引継ぎ補助金など、経営資源の引継ぎを行う中小企業者等の支援に力を入れてきました。後継者不在や経営上の課題を抱える中小企業にとって、事業承継やM&Aなどの経営戦略は一つの解決策となります。
事業承継やM&Aは、それぞれの企業の状況や課題に応じて、適切な戦略を選択することが求められ、成功には様々な課題が伴いますので、検討する際には専門知識やアドバイザーの助言を受けましょう。
中小企業庁:事業承継・引継ぎ補助金(https://jsh.go.jp)を加工して作成
