【建設業の時間外労働】上限規制開始に向けた取り組み

【建設業の時間外労働】上限規制開始に向けた取り組み

令和6年4月1日からの時間外労働の上限規制について、これまで猶予とされてきた業種についても、原則として月45時間・年360時間となり、臨時的な特別の事情がなければこれを超えることができなくなります。建設業でも、時間外労働上限規制へ対応し、⻑時間労働の是正に向けた取組が必須です。
この記事では、建設業における実際の取り組み事例を紹介していきます。

建設業の実労働時間・休日の状況

建設業は、長時間労働が問題となってきました。以下は、実労働時間及び出勤日数の推移を、建設業と他産業の比較したグラフです。

※出典:厚生労働省 建設業における働き方改革「毎月勤労統計調査」年度報より国土交通省作成グラフを加工

また、建設工事全体では、約65%が4週4休以下で就業している状況(2015年調査)がありました。

※出典:厚生労働省 建設業における働き方改革 日建協2015時短アンケートを基に作成グラフを加工

建設業の時間外労働上限規制について

労働基準法が改正され、大企業は2019年4月、中小企業は2020年4月より、時間外労働の上限が法律に規定されました。
一方、建設業などについては、長時間労働の背景に業務の特性や取引慣行の課題があることから、時間外労働の上限について適用が5年間猶予され、現在は一部特例つきで適用されることとされています。

適用猶予事業・業務

  • 工作物の建設の事業

  • 自動車運転の業務

  • 医業に従事する医師

  • 鹿児島県及び沖縄県における砂糖を製造する事業

建設業の時間外労働上限規制の猶予期間が令和6年3月で終了

労働時間は原則として1週間40時間、1日8時間(法定労働時間)以内であることが労働基準法で定められていますが、働き方改革を推進するための関連法律により改正された労働基準法によって、超過労働時間(残業時間)の上限も定められています。

一方で、建設業などの適用猶予事業・業務については、時間外労働の上限について猶予がありましたが、令和6年4月以降は災害時における復旧及び復興の事業を除き、時間外労働の上限規制が原則として適用されます。

臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合でも、以下の上限を超える時間外労働・休日労働はできなくなります。 臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合でも、以下を守らなければなりません。

  • 時間外労働が年720時間以内

  • 時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満

  • 時間外労働と休日労働の合計について、2か月平均・3か月平均・4か月平均・5か月平均・6か月平均が全て1か月当たり80時間以内

  • 時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年6か月まで

上記に違反した場合には、罰則(5か月以下の懲役または30万円以下の罰金)が科される可能性があります。

建設業の時間外労働上限規制 猶予期間後の例外規定

災害時の復旧・復興の事業に関しては、時間外労働と休日労働の合計について、

  • 月100時間未満

  • 2~6か月平均80時間以内

この2つの規制は令和6年4月1日以降も適用されません。

建設業の時間外労働上限規制 ⻑時間労働の是正に向けた取組事例

建設業:事例1 勤務形態や処遇の改善による⽣産性向上の取組

⻑時間労働是正の取組として、クラウド型勤怠管理システムや有給休暇の計画付与を実施。また、週休2⽇制、時間制有給休暇、シフト勤務を導⼊し処遇の改善も⾏い、これらの取組により採⽤活動にも良い影響がでている。

主な許可業種建築⼀式⼯事業
資本⾦10億円
年間完成⼯事⾼10億円以上
従業員数300⼈以上
元請・下請割合元請⼯事が主
⼟⽊・建築割合合⼟⽊と建築⼯事はほぼ同程度である

■取組の具体的な内容

勤怠管理システムの導⼊及び勤務形態の⼯夫

労働時間管理は、クラウドでの出退勤管理の導⼊と有給休暇の計画付与と取得率の向上のための啓蒙を強化している。
勤務形態については、週休⼆⽇の積極的導⼊、時間制有給休暇の導⼊を実施している。また、作業所におけるシフト勤務制の導⼊も検討を進めている。
処遇の改善は、作業所関連⼿当の⾒直しや福利厚⽣の充実を実施している。

新卒、中途、外国⼈技術者の積極的な採⽤

採⽤については、新卒は毎年採⽤、中途⼈材もほぼ毎年数⼈採⽤している。また外国⼈技術者(⼟⽊技術者)も、2016年2名(⼟⽊技術者、正社員)、2018年2名(⼟⽊技術者、正社員)を採⽤している。

■取組の背景

  • 労働時間管理については、法令での時間外労働時間の上限制限、有給休暇所得の法令化に対応するべく取組んでいる。

  • 勤務形態については、時間外労働時間の上限制限や職員の定着及び新卒への採⽤条件の向上などを考え取組んでいる。

  • 新規採⽤は、⼈材確保と育成が企業経営の肝と考え取り組んでいる。

  • 処遇の改善は、職員のモチベーションの向上などを考え、より良い処遇や福利厚⽣の充実を常に意識している。

■取組の効果

労働時間の縮減と有給休暇の取得率向上

労働時間の縮減や有給休暇の取得率向上、職員のモチベーションの向上など様々な⾯で、良い効果が出ている。有給休暇の取得率は、R1年:56.3%、R2年:64.2%、R3年:67.9%と増加傾向にある。

ワークライフバランスの実現

職員のワークライフバランスにも寄与していると感じている。

勤務形態・処遇改善による新卒採⽤への好循環

勤務形態の改善や処遇の改善は新卒採⽤にも良い効果が出ている。

■取組の⼯夫

休暇取得への意識改⾰

旧来の働き⽅などに慣れてしまっており、有給休暇の取得などを積極的に⾏うことや業務を効率化して休⽇を増やすことに意識を変えてもらうことが⼤切だと考え、パラダイムシフトを意識してもらうこととした。

外国⼈技術者への理解とサポート

アジア系⾼度⼈材を育成して⽇本企業に紹介する取組を⾏っている企業から、紹介を受けてベトナム⼈材を採⽤している(⼊社後の待遇は国内の⼤卒⼈材と同じ)。
なお、緊急時や危険を伴う作業にも対応できるような⽇常会話レベルの⽇本語が使えるようになるまで、受⼊側の理解とサポートが必要である。

建設業:事例2 クラウド型勤怠管理システムを活⽤した⽣産性向上の取組

⻑時間労働是正の取組として、クラウド型勤怠管理システムを導⼊している。スマートフォンでも勤怠管理が可能であり、リアルタイムで勤怠情報を確認することで従業員の時間の意識向上につながった。また、作業所⻑が勤怠情報を確認することで現場内での業務の標準化を図っている。

主な許可業種⼟⽊⼀式⼯事業
資本⾦10億円
年間完成⼯事⾼10億円以上
従業員数 300⼈以上
元請・下請割合元請⼯事が主
⼟⽊・建築割合合建築⼯事が多い (6割以上 9割未満)

■取組の具体的な内容

クラウド型勤怠管理システムの導⼊

市街地再開発組合発注の地下通路新設⼯事において、現場職員の労働時間管理をクラウド型の勤怠管理システムで⾏っている。
クラウドにより最新の勤怠状況をリアルタイムに集計・確認ができる。
現場外の出先における勤怠もスマートフォンより正確に管理可能であり、各現場職員の夜間勤務を含めた複雑なシフト管理にも対応できる。

■取組の背景

労働⼒⼈⼝が減少するなかで、⻑時間労働の割合が⾼い⽔準で推移しており、労働者が健康を保ちながらプライベートの時間も確保しつつ、働くことができるよう労働環境を整備することが課題となっている。
その課題を解決するために、労働基準法の⾒直しが度々⾏われている。建設業には時間外労働の上限規制に関して5年間の猶予期間が設けられていたが、2024年4⽉から、他業種と同様に時間外労働の上限が適⽤される。
建設業は、⻑時間労働や休⽇の取りにくさが常態化してしまっているため、勤怠管理の整備や⽣産性の向上を進める必要がある。

■取組の効果

労働時間管理に関する意識の向上

職員各⾃が、⾃動計算された延べ労働時間をリアルタイムに確認できることで、1⽇の時間管理に対する意識の向上や業務の効率化を考えて従事するようになった。

現場における有給休暇取得率の向上

作業所所⻑が各職員のスケジュールを管理することで現場内で業務の平準化を図ることや休⽇の積極的取得を促すことで、現場での有給休暇の取得が出始めている。

■取組の⼯夫

休⽇取得管理の⼀元化

残業時間の削減や休⽇取得の取組を作業所単位で⾏うだけではなく、本社における各作業所の残業時間及び休⽇取得管理を⼀元化したこと。
これにより、残業が多い作業所への聞き取り、⽀援を⾏うことができ、休⽇の取得の少ない作業所には積極的に取得するよう促すことで効果も出始めている。

-勤怠管理を活⽤した⼈員配置

各作業所の勤怠管理を確認することで,作業所間の労働時間の平準化を⽬的とした⼈員配置を計画することができる。

【建設業の時間外労働】上限規制開始に向けた取り組み:まとめ

建設業の勤怠管理を行うデジタルツールの普及率が2割ほどにとどまる(建築関連アプリ開発スパイダープラスの調査)ことが、日経新聞で報道されました。
建設業の長時間労働は、深刻な人手不足が主な要因や厳しい工期設定が関係していると言われます。しかしこれまでの慣習や非効率な勤務時間管理により発生している長時間労働に関しては、是正する必要があります。

勤怠管理システムを利用することで、管理者はいつでも従業員の勤務状況を把握したり、シフト管理機能により適正な人員配置や労働時間、有給休暇のチェックができるようになります。また従業員自身も、スマートフォンを使い勤務状況を常時確認することができ、時間管理に対する意識の向上が期待できます。
また建設業においては現場への直行直帰が多いため、始業・終業時間や、残業時間、休憩時間の管理が難しいという問題がありますが、これも勤怠管理システムであれば、従業員がいつ、どこにいても打刻できるため解決できます。

限られた人手を有効活用して、長時間労働の是正や労基法に対応するには、勤怠管理システムの活用が有効です。令和6年4月1日の建設業の時間外労働上限規制への対応だけでなく、従業員が労働対価に対し納得できる環境を整えることが求められます。

国土交通省:建設業における働き方改革推進のための 事例集
(https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001612258.pdf)を加工して作成