出社回帰の影響|テレワーク廃止で退職者が増える?

テレワーク廃止

有名企業がテレワークやフルリモート勤務の廃止を発表するニュースを耳にするようになりました。
コロナ禍の収束に伴い、出社回帰が進んでいますが、その一方でテレワーク廃止を理由に「退職・転職を検討する」との調査結果も出ており、テレワーク廃止には慎重な検討が求められます。
この記事では、テレワークの現状とテレワーカーの意向を踏まえ、企業の適切な対応について考えていきます。

テレワークの普及度合いと実施状況

国土交通省の令和5年度テレワーク人口実態調査によると、雇用型テレワーカーの割合は令和2年度以降は3割超であり、揺り戻しは見られるものの、コロナ禍前に比べると全国的に高い水準となっています。

■雇用型テレワーカーの割合

雇用型テレワーカーの割合

テレワークの実施頻度

コロナ禍をきっかけに、雇用型テレワーカーのうち週に1日以上テレワークを実施する人の割合が令和2年度から増加。令和5年度には7割を超え、また月1~週4日テレワークを実施する人の割合も令和4年度と比べて増加しています。

さらに、テレワークを実施する1週間あたりの平均日数は、令和2年度及び令和3年度に増加したものの、令和4年度及び令和5年度では平均2.3日/週と若干減少しており、コロナ禍を経て、出社とテレワークを組み合わせるハイブリッドワークが拡大傾向にあります。

■テレワーク実施頻度と1週間あたりの平均日数

テレワークの実施頻度

(※1)R3以降は直近1年間テレワークを実施している人
(※2)テレワーク実施場所が複数ある人は、実施頻度が最も高い場所の頻度で集計
(※3)(平均日数)=(テレワーク実施頻度別の実施者数×実施頻度)/(テレワーク実施者数)

テレワークの実施希望頻度

継続意向のある雇用型テレワーカーの実施希望頻度は、週5日が最も多く、次いで週2日、週1日となっています。半数以上が週3日以上を希望する一方で、7割以上は週1回以上の出社を組み合わせたハイブリッドワークを希望しているようです。

■継続意向のある雇用型テレワーカーの実施希望頻度と現状の実施頻度

テレワーク実施希望頻度

※新型コロナウイルス感染症5類移行後(令和5年5月8日~)のテレワーク実施頻度

テレワークの効果

テレワーク導入は、通勤時間の削減や柔軟な働き方の実現により、ワークライフバランス向上、生産性向上、非常時の事業継続性の確保、コスト削減、優秀な人材の確保など、企業と従業員双方に多くのメリットをもたらしています。

テレワークに適している業種は、情報通信業や学術研究、専門・技術サービス業などであり、高い導入率を維持しています。テレワークにより生産性が上がるなどのメリットを受けているのは、こういった業種が多いことが考えられます。

■業種別テレワーカーの割合

業種

テレワーク廃止の理由

上記のように、テレワークには多くのメリットがある一方で、廃止を決定する企業も増えています。その背景を探るため、企業がテレワークを導入した目的とその効果について見ていきます。

テレワークの重要性が薄れたため

厚生労働省 労働政策研究・研修機構の調査結果によると、2020年時点では、テレワークを実施している企業、実施していない企業共に「新型コロナウイルス感染症の感染拡大への対応」という目的が最も多く、約8割の企業がこの目的を挙げていました。

以前からテレワークを導入していた企業では、「ワークライフバランスの向上」や「生産性向上」、「人材確保」など、労働者の働きやすさや企業の競争力を高める目的も挙げている企業が比較的多くなっています。

しかし、緊急事態宣言下で初めてテレワークを導入した企業は、主に感染拡大への対応を目的として導入したことがわかります。現在では、感染拡大への対応としてのテレワークの重要性が薄れたため、テレワークを廃止した企業が多かったのではないかと考えられます。

■企業がテレワークを導入する目的

企業がテレワークを導入する目的

出典:厚生労働省 テレワーク活用のメリットについて
(https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/20/dl/20-1-2-2_02.pdf)を加工して作成

テレワークのデメリット解消のため

テレワークには、コミュニケーション不足、時間管理の難しさ、情報漏洩リスクの増加など、いくつかのデメリットがあります。

参照記事:【テレワークのデメリット】調査データから見る解決策とは

時間管理の難しさについては、勤怠管理システムの導入や、情報漏洩リスクについては、ある程度、技術的対策やルールの徹底などで解決できますが、コミュニケーションについては、Web会議ツールやビジネスチャットだけでは足りない部分もあり、チームの一体感や帰属意識が希薄になりがちです。

感染症の5類移行後には、こういったデメリットを解消するために、テレワークが適した業種においても、テレワークを見直す動きがでてきていると考えられます。

テレワーク廃止の影響

次に、テレワーカーの意向を調査したデータにより、出社回帰の影響を調べていきます。

勤務先が出勤を指示・推奨した場合の行動

テレワーカー・非テレワーカーともに若い年代ほど、勤務先の方針に従い出勤する割合が低く、「テレワーク可能な働き方ができるよう勤務先と交渉」または「転職や独立起業を検討」する割合が高い傾向にあります。この傾向はテレワーカーの方がより顕著となっています。

■勤務先が出勤を指示・推奨した場合の行動

勤務先が出勤を指示・推奨した場合の行動

上記の調査結果から、若い年代の労働者、特にテレワーカーにおいて、柔軟な働き方へのニーズが高いことがわかります。これらの労働者は、企業の出勤方針に従うのではなく、自分の働き方を選択できるように交渉したり、転職や独立起業を視野に入れたりする傾向が強いことが示されています。

テレワーク廃止による退職意向

上記の調査では、勤務先が出勤を指示・推奨した場合の行動において「転職や独立起業を検討」する割合が高いという結果が出ていますが、勤め先のテレワークが廃止・制限された場合の行動においても、テレワーカーの16.4%が「退職・転職を検討する」と回答した調査結果も出ています。(公益財団法人日本生産性本部調査)

勤め先でテレワークが廃止・制限された時どのように行動すると思うか、もしくは既に廃止・制限された場合どのような行動を行ったかを聞いたところ、テレワーカーの58.7%、管理職の64.1%が「今の勤め先で継続して働く」と回答した。一方で、テレワーカーの16.4%、管理職の9.6%が「退職、転職を検討する(もしくは既に退職、転職した)」と回答した。また、テレワーカーの24.9%、管理職の26.3%と、ともに25%前後が「今の勤め先で継続して働くが、時短勤務など働き方の変更を検討する(もしくは検討した)」と回答している。勤め先のテレワーク制度の廃止や制限が、4割前後の回答者の働き方に影響を及ぼす可能性が示唆された。

勤め先でテレワークが廃止・制限された時の考え

引用元:公益財団法人日本生産性本部 テレワークに関する意識調査(https://www.jpc-net.jp/research/assets/pdf/appendix01_tele-work_report.pdf)

出社回帰の影響|テレワーク廃止で退職者が増える?:まとめ

大手企業の相次ぐ出社回帰のニュースを受け、テレワークのデメリットを感じていた企業は、その廃止を検討する可能性が高まっています。しかし、テレワークの導入により多くのメリットを享受してきた従業員にとって、その廃止は大きな打撃となります。特に柔軟な働き方を求める若年層にとっては、テレワーク終了が転職や独立を決断するきっかけとなることも少なくありません。

企業がテレワークの廃止を決定する際は、従業員の意向や多様な働き方を十分に考慮することが求められます。廃止の方針が決まった場合でも、最初は週1回の出社など、ハイブリッドワークからの導入を検討することが重要です。
柔軟な働き方と出社回帰のバランスを取ることが、企業の競争力を高め、優秀な人材を引き寄せる鍵となるでしょう。

国土交通省:令和5年度テレワーク人口実態調査(https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001733057.pdf)を加工して作成