【人材活用】事例から見る成功のポイント

「人材活用」がビジネスの鍵を握る今、企業は柔軟で戦略的な人事戦略を構築することが不可欠であり、具体的にどう人材活用を実現するかが経営者、人事担当者の課題となっています。
そこでこの記事では、異なる業界で展開された実践例を通じ、各企業が直面した人材活用に関する課題や取り組み、その結果がいかに成功に結びついたのかを紹介します。
Contents
人材活用事例.1 製造業
事業概要:醸造機械・食品機械等の設計・開発及びプラントエンジニアリング
従業員数:149人
人財育成につながる各種制度を整備・個人別の5成長計画を明確化
社内の人材・組織をとりまく状況
ベテランから若手まで従業員の年代層が幅広く、価値観の共有が難しくなっていた。
社会の変化に対応するためには一人ひとりの能力を高めつつ、組織的なモノづくりができる体制に変化する必要があった。
人材戦略へ取り組んだキッカケ
シェアの80%を占める程度に成長した一方で、そのままでは技術革新に対する努力を怠ってしまうのではないかという危機感を持った。
そこで、30年後の未来を見すえて、開発ビジョンを策定することを考え、ビジョンの実現に必要な人財育成にも注力しようと考えた。
人材活用の取り組み
開発ビジョン2050の策定と社内浸透
「開発ビジョン2050」を策定。醸造の分野で培ったノウハウを食糧、飼料、エネルギー、バイオ素材などの新しい分野に展開。これから2050年に起こり得るだろう社会的課題を解決していくことを目指した。
様々な年代層の従業員にビジョンを浸透させるために、従業員全員がで集まる機会をつくってビジョンに関する取組の共有や、社内ベンチャー企画コンテストをワークショップ形式で実施。
ビジョン達成に必要な人財の育成
OJTの人材育成に加え、資格報奨金制度や社内勉強会、博士後期課程への入学サポートなど、Off-JTも充実化。
個人別にも5か年のビジョンを作成し、それぞれが担うべき役割とそこに至るまでの過程を言語化して上長と共有。作成した成長計画に基づき、資格取得や実務経験蓄積を進められるようにすることで、一人一人が専門性をもつスペシャリストの集団になることを目指した。
人材活用取組後の効果
技術開発推進
既存事業の競争力強化と新規事業への挑戦を両立する12のテーマで開発を進め、ビジョン達成に向けた取組を加速化。
基盤強化・DX推進、デジタル人財増加
取組の効果を測定するために、全60項目からなるエンゲージメント調査を実施。分析結果を全従業員にフィードバックするとともに、要望や業務上の困りごとを聞き取り、施策の改善にもつなげている。
ビジョンと連動したDX推進によりDXの内製化にも成功、3年で21のシステムを導入。IT関連の資格取得及び資格取得に挑戦するデジタル人財が増加した。
新卒応募者数の増加
ビジョンの策定・浸透や人財育成に関する取組内容を発信していくことで2022年卒の応募者数は2019年卒に比べて3倍に増加。採用環境の改善にもつながっている。
人材活用事例.2 情報通信業
事業概要:ソフトウェア開発、人材派遣事業、DX事業
従業員数:45人
従業員育成に注力することでマネジメント人材を確保
社内の人材・組織をとりまく状況
プログラミング開発の手法を理解しながら、マネジメント業務にも取り組める人材が業界全体で不足。
従業員数が増加したことによって、経営者が一人一人について把握することが難しくなった。
人材戦略へ取り組んだキッカケ
今後、企業規模を大きくするためにはマネジメントができる人材が必要であった。
プログラミングに理解があり、マネジメントにも明るい人材は不足していたため、コロナ禍で業務が停滞したことをきっかけに、中核人材を中心にオンライン研修を受講してもらい、従業員育成によってマネジメント人材を確保することにした。
人材活用の取り組み
業務停滞時にオンライン研修を活用して社内の人材育成を実施
ソフトウェア開発はプログラミング等の技術的スキルに加えて、クライアントの要望を把握するコミュニケーション能力、複数のエンジニアを束ねて1つのシステムに組み上げていく能力等が重要。
そこで、中小企業大学校web校を活用することを決め、中核人材にはリーダーシップや業務マネジメント、オンラインでの1on1面談スキル、オンラインでの営業活動、人事評価研修等を受講してもらった。
業務の一環として全て勤務時間内に受講する形をとった。会社としては先行投資を行う考え方で取り組んだものである。
人材活用取組後の効果
従業員の視野の拡大
これまで参加していた地域の研修では業種が似通っていることも多かったが、中小企業大学校web校の研修ではグループディスカッションがあり、様々な業種の方の意見を研修の場で確認することができるため、研修を受講した従業員が広い視野を得ることにつながった。
社内コミュニケーションの円滑化と従業員間の共通認識の構築
社内OJTでは身につけにくい、顧客との折衝や部下とのコミュニケーションを中核人材が学ぶことによって、社内外でのコミュニケーションが円滑に進むようになった。
複数の中核人材に同じタイミングで同じ研修を受けてもらい、意見交換をする場を設けたことによって、従業員同士で目線合わせをすることができた。
人材活用事例.3 建設業
事業概要:建設業
従業員数:197人
5か年の人財育成計画を立案・研修体制を充実
社内の人材・組織をとりまく状況
従業員の40%以上が20代以下で、平均年齢も若い。事業環境が安定している一方、事業承継を見据えて次世代幹部を計画的に育成していく必要性があった。
人材戦略へ取り組んだキッカケ
安定成長の環境にいるからこそ、いま使えるリソースを使って、会社が目指す姿を実現するには何が必要かを見極めようと考えた。
事業承継を見据えた次世代幹部の育成が課題の1つであったため、育成に中心的に取り組もうと考えた。
人材活用の取り組み
5か年の人材育成計画の立案
2今後の事業の成長を支える人材を計画的に育成していくため、5か年の人材育成計画を作成。
人材育成の目的を明確にし、人材育成によって目指す成果と達成基準を年度ごとに設定。幹部候補の育成を進めることが一番の目的であるが、単なる制度や仕組みづくりではなく、自発的に学ぶ風土をつくり、それを率先していけるような人材を、将来的に幹部に登用していくことを目指す。
社外研修の活用と社内研修の充実化
現場勤務の従業員が現場から離れることなく受講できるようEラーニングを導入、ビジネススキル全般を学べるようにした。職位・年齢は問わずに参加できる自主参加型の集合研修を実施。若手の育成をテーマにした意見交換なども行う。
同時に中小企業大学校の外部研修も活用。研修を受講した従業員を社内研修の講師にすることで、講師本人にも学びの定着を促している。
人材活用取組後の効果
コミュニケーションの活性化と学習意欲の定着
集合研修で世代の異なる従業員同士で意見交換することで、仕事への価値観の違いを知るなど、参加者それぞれに発見や学びがある。それを契機として世代間のコミュニケーションの活性化につながっている。
今まで現場だけを気にしていた従業員も、外部研修を受けることで現場以外での教育や学びの必要性についての意識が向上。
スキルの見える化と全体最適の実現
修を通じて、どこにどんなスキルをもった人材がいるかが見えるようになり、人材に関しての課題がよりはっきりと見えるようになってきた。
ノウハウが属人化したり、仕事内容が見えにくくなっていたが、2ICT施工推進室を立ち上げ、アウトソースやICT活用による業務効率化の検討を開始。
今後、適切な職務分担を促進させることで、従業員のもつ専門知識を活かしてどのように付加価値を出していくかを、全体最適の観点から検討、取組をさらに進めていくことを予定。
人材活用事例.4 運輸業
事業概要:運送業(タクシー)
従業員数:88人
女性ならではの目線を生かした新規サービスを次々展開
社内の人材・組織をとりまく状況
ドライバー不足が慢性化。ドライバーという職に関心を持っても、2種免許(営業運転に必要な免許)を保有していない人材が大半であった。
日中を中心に女性労働者の雇用を目指したが、事業展開地域周辺は待機児童が多数おり、預ける場所がないために働けない、子どもの急な病気等による欠勤ペナルティなどに悩み、仕事が続けられないという女性が多かった。
人材戦略へ取り組んだキッカケ
タクシー業界は接客業であるにもかかわらず、顧客と十分にコミュニケーションがとれていないという課題意識があった。男性中心の業界の風土改革をし、顧客に向き合ったサービスを提供したいと考え、そのためには「女性の働きやすさ」を考える必要があると気づいた。
人材活用の取り組み
働きやすい就業環境の構築
「子どもを職場の近くで預けられるのであれば働きに出たい」という子育て層の就労ニーズを実現するため、社内に託児所を設置。
子どもの急な病気等による欠勤や遅刻などによるペナルティ、歩合給の低下による給与の低下、それに伴う仕事への不満や不安を解消することを目的とし、フレックス制度の導入、時間給の導入、ペナルティ廃止など、子育てフレンドリーな環境を徹底的に整備した。
女性ならではの目線を生かした新規事業の展開
子育て世代の女性ドライバーの意見から、地域内には高齢者以外にも子どものタクシー移動のニーズや乗降前後の乗客サポート(自宅玄関までの迎えや、病院スタッフや保育所の保育者への引き渡しなど)のニーズを持つ顧客が多く、他社との差別化ポイントにできることを把握。
こうした付帯サービスを含めた会員制サービスである「陣痛タクシー」、「キッズタクシー」、「買い物タクシー」などの独自サービスを発案、展開。
人材活用取組後の効果
女性応募者の増加と定着率の向上
育て世代の就業希望者が増加し、ドライバーの約4割が女性に。定着率も向上し、離職者は直近5年で4~5人程度に留まっている。また、新規採用は従業員の平均年齢の低下にもつながっている。
規サービスの更なる展開と顧客からのロイヤリティの向上
従業員の間で、地域のニーズに合わせた新規サービスを発案、具体化していくことが当たり前に。
高齢者・障害をお持ちの方・妊産婦・未就学児をお連れの方など移動困難な方の課題解決に向け、会員登録者等が利用を希望すると最適な運転経路や乗降順を決めて運行されるフルデマンドタクシー運行を開始。
地域に根付いたサービス展開で認知度や顧客ロイヤリティが高まり、待ち時間があっても当社のタクシーを選んでくれる顧客が増えた。

人材活用事例.5 医療・福祉
介護・保育サービス事業、ホテル・飲食事業、ほか複数事業を展開
従業員数:509人
人事評価制度による成長意欲やサービスレベルの向上を実現
社内の人材・組織をとりまく状況
介護事業所が増えていく中で、責任者を担える人材の育成が不足。
採用を事業所ごとで個別に行っており、求人広告の費用対効果が十分に検証できていなかった。
人材戦略へ取り組んだキッカケ
事業の拡大を支える人材の育成が追いついていなかった。
従業員の評価基準が曖昧で、規模が大きくになるにつれて評価の不公平感が高まっており、従業員として何をすべきかスキルを明確にする必要もあった。
人材活用の取り組み
採用・教育等を統括する人事責任者の任命
従業員数や拠点数が増えていくにつれて、グループとして人事全体を統括していく必要性が生じた。
介護事業は特に人手不足が激しい業界。新規事業開発より既存事業の採用改善を優先的に対応するために、当社の職業紹介事業を担っていた社内人材を配置転換、人事責任者に任命。責任者のもとで、グループでの採用活動の実施や人事評価制度の構築を実施。
人事評価制度の構築
上司の属人的な評価だったところ、外部のコンサルタントの協力を仰ぎながら、ゼロから人事評価制度を構築、評価の透明性・公平性の向上を図った。
導入前に、制度の趣旨を伝えるレクチャーを実施。制度の概要と評価する際のポイントの説明のほか、面談の方法をロールプレイング形式で研修し評価者の理解の定着を進めた。
人材活用取組後の効果
グループ採用による採用費の削減
事業所ごとに個別に採用活動を行っていた際には、これまで費用対効果の検証が十分にされていなかったが、グループとして採用活動を進めることで、募集単価や採用単価といった計数で管理する意識が高まり、採用費の劇的な圧縮につながった。
成長意欲やサービスレベルの向上
事評価制度のもと、評価者との対話のなかで、被評価者は自身に足りないものを明確に理解することができ、業務へのモチベーションや成長意欲、サービスレベルの向上につながっている。今後は、人事評価内容を給与に反映していくことを予定。
人材活用事例.6 サービス業
事業概要:宿泊業
従業員数:400人
社内研修の充実と社外研修の積極的な活用、主体的に学ぶ風土の定着
社内の人材・組織をとりまく状況
人材育成について、それまでも社内での勉強会を実施したり、外部研修を活用したりすることもあったが、体系的・継続的な取組になっていなかった。
特にコロナ禍以降では、客数の減少が従業員のモチベーションの低下や離職にもつながるようになった。
人材戦略へ取り組んだキッカケ
新しく施設を開設するにあたり、サービスレベルの底上げのために人材育成を強化していこうと考えた。
育成を通じて、従業員一人一人が成長し、自律できる人財になって欲しいという願いがあった。
人材活用の取り組み
内研修の充実と社外研修の主体的な活用
在籍年数や職務等級に応じて内容と参加者を決める形で社内研修を体系化。社内研修では、従業員同士で高めあうことを狙いとして、講師は原則、従業員自身がつとめる。
社外研修は特定のスキルを学ぶものとして位置づけ、経営幹部や管理職といったリーダーの養成、コミュニケーションスキルの向上など、幅広く活用。社外研修の受講にあたっては、学びたいコースを自己申告で決める。
キャリアプランを考えるためのセルフキャリアドックの導入
売上・利益を上げていくための取組として、10年後、20年後の自身のキャリアプランを考える機会として、セルフ・キャリアドックを導入。
セルフ・キャリアドックでは、キャリアコンサルタントの外部講師を呼び、ジョブカードを用いて参加者それぞれの強み・弱みを明らかにしたのち、責任者との面談でこれまでのキャリアの振り返りと今後の将来設計について話し合っている
人材活用取組後の効果
主体的に学ぶ風土の定着
修の他にも、入社の年度ごとに代表が選定した書籍を各従業員に贈呈し、読書感想文を提出する取組を継続的に行い、主体的に学ぶ風土が定着するようになった。
日々の業務のモチベーションの向上
セルフキャリアドックの導入や研修制度の充実化で、そのような期待に応えることで、日々の業務のモチベーションの向上にもつながっている。
事業の成長に必要な資格を定義して資格取得支援制度を整備するなど、自発性を促す取り組みを今後さらに推進していく予定。
【人材活用】事例から見る成功のポイント:まとめ
これらの成功事例では、戦略的で継続的な人材活用の一環として位置づけられており、従業員の育成と柔軟な働き方への対応が、業績向上や新規サービス展開に直結しています。
人材活用には、公平かつ客観的な評価基準が必要不可欠ですが、そのためには人事労務システムを活用することが有効です。組織内でのスキルの透明性が向上し、個々の成長計画が戦略的に組み込まれ、結果的に人材の評価にも影響を与えることができます。
人材の評価と結びついた人事労務システムの導入は、従業員のモチベーション向上やキャリアの進展に寄与し、組織全体のパフォーマンスを向上させる要因となります。人材を戦略的に配置することで、企業が変革と発展を遂げる未来が拓けるでしょう。
厚生労働省:中小企業・小規模事業者の人材活用事例集
(https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/shingikai/soukai/037/dl/s03-2.pdf)を加工して作成
