「同一労働同一賃金」取り組み手順をわかりやすく

少子高齢化により労働力人口が減少していくなかで、パートタイム労働者や有期雇用労働者の数は増加傾向にあり、直近ではパートタイム労働者と有期雇用労働者は、それぞれ雇用全体の約4分の1を占めています。
同一労働同一賃金は、同一企業内における正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間の不合理な待遇差を解消するものですが、一律同じ賃金にするということではありません。業務の難易度・能力・成果によって賃金額が異なることは当然ですが、雇用形態・男女・国籍などの理由で待遇差をつけてはいけない、ということです。
制度設計の方法がわからないという方のために、この記事では同一労働同一賃金に取り組むための手順をわかりやすく紹介します。
Contents
同一労働同一賃金の目的
パートタイムや有期雇用労働は、育児や介護などで働く時間に制約がある人に適しています。しかし、正社員として働く機会が得られず、やむを得ずこれらの働き方を選ぶこともあります。また、働きや貢献に見合った待遇が必ずしも確保されていない場合も見受けられます。
パートタイム・有期雇用労働法は、パートタイム労働者や有期雇用労働者の労働条件の改善を目的とした法律です。
この法律には、同一労働同一賃金という原則が盛り込まれており、同じ仕事をする労働者には、雇用形態にかかわらず、同じような待遇を与えることを求めています。この原則は、労働者の待遇格差を解消し、公正な労働環境を実現するための重要な要素です。
法律では、同一労働同一賃金を具体的に実現するための様々な施策が定められており、企業は職務内容の評価や待遇差の正当化について、より厳密な基準を満たす必要があります。
まだ取り組みを行っていない場合は、以下の手順で同一労働同一賃金に対応しましょう。
同一労働同一賃金取り組みの手順を確認
1 対象労働者の有無をチェック
法の対象となる労働者の有無をチェックします。短時間労働者・有期雇用労働者はいますか?
短時間労働者・有期雇用労働者はいない
対応の必要はありません。将来雇用の予定がある場合は、準備をしておきましょう。
短時間労働者・有期雇用労働者がいる
「いる」と答えた場合は、次の手順へ
2 待遇の状況を確認
待遇の状況を確認します。正社員と短時間労働者・有期雇用労働者の待遇に違いはありますか?
短時間労働者・有期雇用労働者の区分ごとに、賃金(賞与・手当を含む)や福利厚生などの待遇について、正社員と取扱いの違いがあるかどうか確認しましょう。書き出して、整理してみるとわかりやすいでしょう。
待遇の違いはない
今すぐ対応すべき課題はありません。
待遇の違いがある
「ある」と答えた場合は、次の手順へ
3 待遇の違いの説明
待遇の違いが働き方や役割の違いに応じたものであると説明できますか?
説明できる
労働者から説明を求められたときに待遇の違いの内容や不合理な待遇差ではない理由について説明できるよう、整理しておきましょう。
説明できない
待遇の違いが不合理であると判断される可能性があるので、不合理な待遇の違いの改善に向けて取組を進める必要があります。
待遇に違いがある場合、違いを設けている理由を確認しましょう。
短時間労働者・有期雇用労働者と正社員とでは、働き方や役割などが異なるのであれば、それに応じて賃金(賞与・手当を含む)や福利厚生などの待遇が異なることはあり得ます。そこで、待遇の違いは、働き方や役割などの違いに見合った「不合理ではない」ものと言えるか確認します。なぜ待遇の違いを設けているのか、それぞれの待遇ごとに改めて考え方を整理してみましょう。
均衡待遇と均等待遇
同じ企業で働く正社員と短時間労働者・有期雇用労働者との間で、基本給や賞与、手当などあらゆる待遇について、不合理な差を設けることが禁止されます。事業主は、正社員と短時間労働者・有期雇用労働者の働き方の違いに応じて、均衡な待遇(均等な待遇)の確保を図るための措置を講じなければなりません。
均衡待遇とは?(不合理な待遇差の禁止)
- 職務内容
- 職務内容・配置の変更の範囲
- その他の事情
上記の違いに応じた範囲内で待遇を決定する必要があります。
均等待遇とは?(差別的取扱いの禁止)
- 職務内容
- 職務内容・配置の変更の範囲
上記が同じ場合、待遇について同じ取扱いをする必要があります。
※ 職務内容とは、業務の内容及び責任の程度をいいます。
- 単に「パートだから」「将来の役割期待が異なるため」という主観的・抽象的理由では、待遇の違いについての説明にはなりません。
- 正社員と職務内容 (業務の内容及び責任の程度)及び職務内容・配置の変更の範囲が同じ短時間労働者・有期雇用労働者については、すべての待遇について差別的に取り扱うことが禁止されます。
- この取組手順書は、職務内容及び職務内容・配置の変更の範囲にかかわらず、すべての短時間労働者・有期雇用労働者の待遇について、その違いが不合理ではないかを確認するものです。
- 待遇差が不合理か否かや説明の方法、内容が適切であるか否かは、最終的に司法により判断されることに留意が必要です。
同一労働同一賃金に関する裁判例
以下は、運送会社で働く有期雇用労働者が、正社員との間に差を設けるのは無効であると訴えた裁判の判決例の抜粋です。
| 手当名 | 判断 | 本件の手当支給の目的 | 違いを設けている理由 |
| 無事故手当 | 不合理 | 優秀ドライバーの育成や安全な輸送による顧客の信頼の獲得が目的 | 正社員と契約社員の職務の内容が同じであり、安全運転およに事故防止の必要性は同じ。将来の転勤や出向の可能性の相違によって異なるものではない。 |
| 作業手当 | 不合理 | 特定の作業を行った対価として作業そのものを金銭的に評価して支給される性質の賃金 | 正社員と契約社員の職務の内容が同じであり、作業に対する金銭的評価は、職務内容・配置の変更範囲の相違によって異なるものではない。 |
| 給食手当 | 不合理 | 従業員の食事に関わる補助として支給 | 勤務中に食事をとる必要がある労働者に対して支給されるもので、正社員と契約社員の職務の内容が同じであるうえ、職務内容・配置の変更範囲の相違と勤務時間に食事をとる必要性には関係がない。 |
※以下、省略
「手順3まで進んだ場合」は、次の手順へ
同一労働同一賃金の手順.4 待遇の整理
待遇に違いがあった場合、その違いが「不合理ではない」ことを説明できるように整理しておきましょう。
事業主は、労働者の待遇の内容・待遇の決定に際して考慮した事項、正社員との待遇差の内容やその理由について、労働者から説明を求められた場合には説明することが義務付けられます。
短時間労働者・有期雇用労働者の社員タイプごとに正社員との待遇に違いがある場合、その違いが「不合理ではない」と説明できるよう、整理しましょう。労働者に説明する内容をあらかじめ文書に記してまとめておくと便利です。
文書例
| 違いを設けている待遇 | 違いを設けている理由 |
| 通勤手当 | 短時間労働者・有期雇用労働者は、労働契約の期間に定めがあり、職務内容が正社員と異なるため支給していない。 |
| 賞与 | 短時間労働者・有期雇用労働者の業務は提携業務であり、ノルマを課しておらず、業務による会社への貢献が一定のため、業務にかかわりなく一律の支給としている。 |
5 法違反疑われる場合の対応
「法違反」が疑われる状況からの早期の脱却を目指しましょう。
短時間労働者・有期雇用労働者と、正社員との待遇の違いが「不合理ではない」とは言いがたい場合は、改善に向けて検討を始めましょう。また「不合理ではない」と言える場合であっても、より望ましい雇用管理に向けて改善の必要はないか検討することもよいでしょう。
6 改善計画
改善計画を立てて取り組みましょう。
改善の必要がある場合は、労働者の意見も聴取しつつ、パートタイム・有期雇用 労働法の施行までに、計画的に取り組みましょう。
「同一労働同一賃金」取り組み手順をわかりやすく:まとめ
以前の日本の企業文化において、正社員と非正規雇用労働者(有期雇用労働者)との間の待遇差は当たり前とされてきました。もちろん、業務の難易度・能力・成果によって賃金額が異なることは当然ですが、同一労働同一賃金は、雇用形態・男女・国籍などの理由で待遇差をつけてはいけないとされます。
同一労働同一賃金は、賃金差の問題に限らず、ダイバーシティの推進にも繫がるという社会全体に関わる制度です。正規雇用と非正規雇用の壁がなくなることで、すべての従業員にとって働きがいやキャリアアップにもつながり、企業にとっても生産性の向上が期待できるでしょう。
厚生労働省「パートタイム・有期雇用労働法 対応のための取組手順書」(https://jsite.mhlw.go.jp/aomori-roudoukyoku/content/contents/000904994.pdf)を参照・加工し作成
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