副業解禁:リスクを抑えるガイドライン導入のポイント

副業

働き方の多様化に伴い、副業を解禁する企業が増えてきています。その一方で「情報漏洩のリスク、労働時間管理の難しさ、本業の集中力が欠ける」などの理由で、就業規則で副業を禁止する企業が多いのも実情です。

そこで、厚生労働省は「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を策定しました。社会のニーズの変化に合わせ改定を重ね、企業と労働者が安心して副業に取り組むための内容が盛り込まれています。
この記事では、副業解禁を検討している企業に、リスクを抑えるガイドライン導入のポイントを解説します。

副業の現状

副業を解禁している企業の割合

転職サービスdodaが行った社会人15,000人へのアンケート調査の結果、勤めている会社で副業が「認められている」と答えた人が27.5%。前回調査より2.2ptアップという結果となり、副業を解禁する企業が増えていることが分かりました。
副業が認められている人の割合は、禁止されている人の割合より低いものの、その差は縮まりつつあるようです。

出典:転職サービスdoda 副業の実態調査【最新版】(https://doda.jp/guide/fukugyo/)

副業を行う理由

このように副業を認める企業が増加している背景には、副業を行う理由が多様化していることがあります。副業を行う理由として、以下の点が挙げられます。

  • 収入を増やしたい
  • 1つの仕事だけでは生活できない
  • 自分が活躍できる場を広げる
  • 様々な分野の人とつながりができる
  • 時間のゆとりがある
  • 現在の仕事で必要な能力を活用・向上させる

副業のメリット

副業は、労働者と企業それぞれにメリットと注意すべき点があります。

労働者のメリット

  1. 離職せずとも別の仕事に就くことが可能となり、スキルや経験を得ることで、労働者が主体的にキャリアを形成することができる。
  2. 本業の所得を活かして、自分がやりたいことに挑戦でき、自己実現を追求することができる。
  3. 所得が増加する。
  4. 本業を続けつつ、よりリスクの小さい形で将来の起業・転職に向けた準備・試行ができる。

これらのメリットがある一方で、注意すべき点も存在します。

注意点

  1. 就業時間が長くなる可能性があるため、労働者自身による就業時間や健康の管理が必要です。
  2. 職務専念義務、秘密保持義務、競業避止義務を意識することが必要です。
  3. 1週間の所定労働時間が短い業務を複数行う場合には、雇用保険等が適用されない場合があります。

企業のメリット

副業を認めることは、企業にとっても多くのメリットがあります。具体的には以下のような点が挙げられます。

  1. 労働者が社内では得られない知識・スキルを獲得できます。
  2. 労働者の自律性・自主性を促すことができます。
  3. 優秀な人材の獲得・流出の防止ができ、競争力が向上します。
  4. 労働者が社外から新たな知識・情報や人脈を入れることで、事業機会の拡大につながります。

これらのメリットがある一方で、注意すべき点も存在します。

注意点

  1. 労働者の副業が本業に影響を与えないよう、必要な就業時間の把握・管理や健康管理への対応が求められます。
  2. 職務専念義務、秘密保持義務、競業避止義務を確保することが必要です。
  3. 副業による情報漏洩を避ける、また労働時間管理の難しさをクリアするために、明確なガイドラインや規定を設けることが重要です。

副業解禁によるリスクを抑える

確かに、副業には情報漏洩や労働時間管理の難しさ、本業への影響など、様々なリスクが伴います。しかし、これらのリスクを適切に管理し、労働者が安心して副業に取り組める環境を整えることで、企業は多くのメリットを享受できます。

副業解禁によるリスクを抑えるためには、厚生労働省が策定した「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を参考にすることで、企業は副業解禁に向けた具体的な方針を定めることができます。このガイドラインには、労働時間の管理や健康管理、就業規則の見直しに関する具体的な指針が含まれており、企業がリスクを抑えつつ副業を推進するための助けとなります。

副業の促進に関するガイドライン

就業規則等の整備

副業を禁止している企業や一律許可制にしている企業は、まずは、原則副業を認める方向で就業規則などの見直しを行い、労働者が副業を行える環境を整備しましょう。ガイドラインでは、就業規則等の見直しにあたってのポイントや留意点について解説しています。

【就業規則等の見直しにあたってのポイント】

  • 副業を原則認めることとします。
  • 労務提供上の支障がある場合などに、例外的に副業を禁止または制限など、必要に応じて規定します。
  • 副業の有無や内容を確認するための方法を、労働者からの届出に基づくこととします。

副業に伴う労務管理を適切に行うためには、届出制など副業の有無・内容を確認するための仕組みを設けておきましょう。

注意点

  • 労働者の心身の健康の確保、ゆとりある生活の実現の観点から法定労働時間が定められている趣旨も踏まえ、長時間労働にならないようにしましょう。

  • 労働基準法や労働安全衛生法による規制等を潜脱するような形態等で行われる副業は認められず、就労の実態に応じて、労働基準法や労働安全衛生法等における使用者責任が問われます。

  • 労働者が副業に係る相談・自己申告等をしやすい環境づくりが重要であり、労働者が相談・自己申告等を行ったことにより不利益な取扱いはできません。

モデル就業規則

以下は、モデル就業規則(令和3年4月版)の抜粋です。このモデル就業規則の規定例は、あくまでも副業に関する規定の一例であり、各企業において必ずこの規定例どおりの規定にしなければならないという性質のものではありません。

モデル就業規則 第68条
労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。
会社は、労働者からの前項の業務に従事する旨の届出に基づき、当該労働者が当該業務に従事することにより次の各号のいずれかに該当する場合には、これを禁止又は制限することができる。

  1. 労務提供上の支障がある場合
  2. 企業秘密が漏洩する恐れがある場合
  3. 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合
  4. 競業により、企業の利益を害する場合

副業における労働時間管理

副業解禁に際して問題となるのは、従業員の労働時間管理が複雑になることです。自社と副業先の所定労働時間を通算して、法定労働時間を超える部分がないか注意することが必要です。

副業における労働時間については、以下の記事で詳しく紹介しています。

【副業における労働時間】通算や上限規制を図解で解説

副業に関する情報の公表について

企業は、労働者の多様なキャリア形成を促進する観点から、副業を許容しているか否か、また条件付許容の場合はその条件について、自社のホームページ、採用パンフレット、会社案内などで公表しましょう。
公表の対象となる副業としては、例えば、他の会社等に雇用される形での副業が挙げられますが、副業の促進に関するガイドラインの趣旨に照らし、事業主となって行うものや、請負・委託・準委任契約により行うものについて公表することも考えられます。

自社のホームページで公表する場合の記載例

[例]副業・兼業について条件を設けず、許容している場合
「弊社では、従業員が副業・兼業を行うことについて、条件を設けることなく、認めています。」

[例]副業・兼業について条件を設けて、許容している場合
「弊社では、従業員が副業・兼業を行うことについて、原則認めています。ただし、長時間労働の回避をはじめとする安全配慮義務、秘密保持義務、競業避止義務及び誠実義務の履行が困難となる恐れがある場合には、認めていません。」

副業解禁:リスクを抑えるガイドライン導入のポイント:まとめ

「副業・兼業の促進に関するガイドライン」は、労働者が多様な働き方を選択できる環境を整えるための重要な枠組みです。企業はこのガイドラインを参考にし、副業を解禁することで、新たなスキルや知識を得る機会を提供し、労働者のモチベーションを向上させることが期待されます。

就業規則で副業を禁止する理由のひとつである、労働時間管理の難しさをクリアするためには、勤怠管理システムが役立ちます。マイページ機能では、打刻の他に勤怠状況の確認もできるため、労働者自身が自分の労働時間を把握することが可能です。
適切な就業規則を定め、正しい労務管理を行うことで、企業と労働者双方にとって有益な副業環境を築いていきましょう。

厚生労働省: 副業・兼業の促進に関するガイドライン(https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000996750.pdf)を省略・加工して作成

※厚生労働省: 「副業・兼業の促進に関するガイドライン」では、副業・兼業となっていますが、広辞苑では、【副業】本業のほかにする仕事。内職。「―に精を出す」【兼業】本業のほかに他の業務を兼ねること。また、その業務。副業。とされており、意味合いにおいてはほぼ同義であると考えられ、「副業」と「兼業」に法的な定義はないため、この記事では、まとめて「副業」としています。