有給休暇を申請した社員に、しつこく理由を聞いていませんか?

年次有給休暇を取得する日は、労働者が指定することによって決まり、使用者は指定された日に年次有給休暇を与えなければなりません。理由に関わらず、基本的に自分の希望する時期や付与日数内で有給をとるのは労働者の権利です。
働き方改革が進み、以前よりも有給休暇の申請がしやすくなりましたが、SNSでは有給休暇の申請は理由によって認めてもらえない、理由をしつこく聞かれ、言わなければ受理してもらえないなどの投稿が数多く見られることから、未だに旧態依然の会社があるようです。
この記事では有給休暇申請の理由に関する労働基準法を紹介します。
有給休暇の申請に理由は必要?
有給休暇申請の理由に悩んでいる人達のツイートをピックアップしてみました。
- 有給休暇申請書に理由を具体的に書かないと承認されない
- 有給休暇申請時の理由が「私用のため」では取得不可と言われた
- 取得日より二週間前までに有給休暇の申請をしないと休めない
- 上司に「来月の〇日に有給休暇もらいます。」と連絡したら「何で休むの?」としつこく理由を聞かれた
- 有給休暇申請時の理由に「私用」と書いたら「何かあった?」と聞かれた
等々。
労働者が使用者の対応に不満を持つと、こうしてすぐにSNSで広まってしまい、社名が公表されるリスクもあります。
そもそも有給休暇の申請に、理由は必要ありません。会社は労働者が有給休暇を申請したときに、その理由がわからない、また気に入らないからといって拒否することはできず、代替要員を配置をすることは会社の義務だと考えられています。
「業務ができる代わりの人員を探さないと休んではいけない」というのは労働基準法に反していますし、もちろん有給休暇を取得したからといって人事評価を下げたり減給することは不利益取扱いの禁止として労働基準法でも禁止されています。
【労働基準法附則第136条】
使用者は、第39条第1項から第4項までの規定による有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない。
使用者は、有給休暇に関する労働基準法をしっかり把握した上で、対応することが必要です。
有給休暇申請の理由を聞くことができる場合

労働者が請求した時季に年次有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合には、使用者は他の時期に年次有給休暇を変更することができる「時季変更権」が定められています。
原則的には会社側が有給休暇の理由を労働者に聞くことができませんが、会社に時季変更権の行使を判断する必要性がある場合には、会社が労働者に対して、有給休暇の取得理由を聞くことが認められる場合もあります。
【労働基準法第39条第5項】
(略)請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。
例えば、二人の労働者が同時期に有給休暇の連続・長期取得を申請した場合、それぞれの取得理由を考慮したうえで、どちらか一方に対して時季変更権を行使せざるを得ないこともあります。
一方の労働者は、家族の介護のための有給休暇であり、もう一方の労働者は旅行のための有給休暇であれば、後者の労働者に対して時季変更権を行使するという判断をすることが、適切な判断と言えるでしょう。
有給休暇申請した社員に、しつこく理由を聞いていませんか?:まとめ
基本的には時季変更権よりも、労働者の有給休暇取得の権利の方が優先されるため、使用者が時季変更権を行使するには、労働者からの合意を得なければなりません。
時季の変更の強制力はなく、自分の好きな時期に付与日数内で好きなだけ有給をとることができるのは労働者の権利ですが、属人的な仕事が多い職場では、正常な業務を妨げる可能性もあります。使用者は業務の滞りを防ごうと、つい、しつこく有給休暇申請の理由を聞いてしまう場合もありえます。
なるべくお互いにコミュニケーションをとり、計画的に有給休暇を取得させることが大切です。
使用者はいつでも労働者の有給休暇のスケジュールを把握できるようにすることも必要ですが、有給休暇の付与は、基準日や付与期間が労働者によって異なるので管理が煩雑です。有給休暇等の申請・承認・集計ができるクラウドサービスを利用するなど、正しい休暇管理を行いましょう。
