【みなし労働時間制】制度の種類・要件をわかりやすく解説

多様な働き方が進む中、効率的な働き方を実現するために注目されているのが、実際に働いた時間に関わらず、あらかじめ定めた時間を労働したものとみなす制度です。
この記事では、みなし労働時間制の種類や特徴、適切な勤怠管理方法について詳しく説明します。
Contents
みなし労働時間制の種類
みなし労働時間制には「事業場外みなし労働時間制」「裁量労働制」の2つがあり、裁量労働制はさらに「専門業務型裁量労働制」「企画業務型裁量労働制」に分けられます。
事業場外みなし労働時間制
事業場外みなし労働時間制とは、外回りの多い営業職など、労働者が事業場外で業務を行い、使用者の指揮監督が及ばないため業務に係る労働時間の算定が困難な場合に、その事業場外労働については労使であらかじめ定めた時間働いたものとみなす制度です。
「事業場外」とは、会社の事務所や工場といった通常の事業場以外の場所を指します。
「使用者の指揮監督が及ばない」とは、単に事業場の外で働くことだけでなく、使用者が労働者の業務遂行の方法や時間配分について、具体的な指示や管理を行うことが難しい状況を意味します。これが重要なポイントです。
事業場外みなし労働時間制の要件について
要件1:情報通信機器を通じた使用者の指示に即座に対応する義務がないこと
事業場外みなし労働時間制が適用されるには、労働者が使用者(会社)の指示にすぐ対応する必要がない状態であることが求められます。
例えば、会社が労働者に対してパソコンやスマートフォンなどを使って随時具体的な指示を出せる場合や、指示を受けるために待機しながら作業をしている場合は、この制度の適用対象にはなりません。
また、サテライトオフィス勤務などで、常にネットワークが接続されており、労働者が自由に通信を切ったり、デバイスから離れたりできない場合も、事業場外みなし労働時間制は適用されません。このような状態では「使用者が常に通信可能な状態にするよう求めている」と判断されるからです。
なお、「情報通信機器」とは、会社が支給したものだけでなく、個人所有のパソコンやスマートフォンなど、会社と連絡を取るために使う端末全般を指します。
要件2:使用者から随時具体的な指示を受けながら業務を行っていないこと
ここでいう「具体的な指示」とは、業務の目的や目標、期限など基本的な内容を伝えることではなく、作業の進め方について細かく指示を出すことを指します。
事業場外みなし労働時間制が適用されると、テレワーク中の労働者は、会社の就業規則などで定められた労働時間(例えば1日8時間)働いたとみなされます。ただし、業務の遂行に通常の所定労働時間を超える時間が必要な場合は、実際にその業務に必要な時間を働いたものとみなされます。
この2つの要件を満たしていなければ、「労働者が使用者の具体的な指揮監督を受けておらず、労働時間を算定するのが難しい」とは判断されません。そのため、テレワークで事業場外みなし労働時間制を適用するには、使用者の指示への即時対応義務がなく、随時具体的な指示を受けずに業務を進めている状態であることが必要です。
対象となる業務:具体例
顧客を訪問して行う営業活動。例えば、保険外交員、医薬品卸売販売担当者など
新聞社や出版社などに勤務し、事業場外で取材活動を行う記者
旅行会社などに所属し、ツアーに同行して顧客の世話や案内を行う添乗員
事業場外でお客様を乗せて走行するタクシー運転手
利用者の自宅を訪問して介護サービスを提供する介護員
顧客先に出張して機械や設備の修理を行う担当者
裁量労働制
裁量労働制は、労働基準法に定められた労働時間制度の一つであり、業務の性質上、その遂行方法や時間配分を労働者の裁量に委ねることが適切な業務を対象としています。裁量労働制が適用される労働者については、使用者は業務遂行の手段や時間配分に関して具体的な指示を行わず、労働者は自らの裁量によって業務を遂行します。
この場合、労使であらかじめ定めた時間を労働したものとみなす「みなし労働時間制」が適用されます。これにより、実際の労働時間に関わらず、一定の時間を労働時間として扱うことが可能となります。
裁量労働制は、大きく分けて専門業務型裁量労働制と企画業務型裁量労働制があります。どちらも労働時間の管理を柔軟にする制度ですが、以下のような違いがあります。
専門業務型 | 企画業務型 | |
| 対象業務 | 特定の専門的な業務(例:研究開発、情報システムの分析設計など)が対象 | 事業運営に関する企画、立案、調査、分析の業務が対象 |
| 対象事業場 | 対象業務のある事業場 | 事業運営上の重要な決定が行われる事業場 |
| 導入手続き | 労使協定の締結と労働基準監督署への届出 | 労使委員会の5分の4以上の多数による決議と労働基準監督署への届出 |
| 労働者の 同意 | 個別の同意は不要 | 対象労働者の個別同意が必要 |
| 対象労働者の 要件 | – | 対象業務を適切に遂行するための知識、経験等が必要 |
専門業務型裁量労働制
専門業務型裁量労働制の対象は、専門性が高い業務に従事する労働者であり、専門業務型裁量労働制を導入できる業務は法令で定められています。
例として、新商品や新技術の研究開発、人文科学や自然科学の研究、情報処理システムの設計、コピーライター、新聞記者等が挙げられます。
参照記事:【専門業務型裁量労働制とは】令和6年4月からの改正を併せて解説
企画業務型裁量労働制
企画業務型裁量労働制とは、特定の業務において、労働時間の算定方法を特別に定める制度です。
具体的には、業務の性質上、その遂行方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要がある業務について、労使間で協定を結ぶことで、実際の労働時間に関わらず、あらかじめ定めた時間を労働時間とみなすことができます。
対象となる業務:具体例
経営企画部署における経営状態・経営環境の調査分析や経営計画策定業務
人事・労務部署における人事制度の分析や新制度策定業務
社員教育・研修計画の策定業務
これらの業務は、以下の要件を満たす必要があります。
事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務であること
業務の性質上、遂行方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要があること
業務遂行の手段及び時間配分の決定等に関し、使用者が具体的な指示をしないこと
なお、対象となる労働者は、おおむね3年以上の職務経験を有する者に限られます。
裁量労働制のテレワークについて
事業場外みなし労働時間制については、情報通信機器が常時通信可能な状態におかれていないこと、使用者の具体的な指示に基づいて随時業務を行っていないことが条件であり、テレワークの場合、これらの条件を満たすのは難しい場合があります。
比較的、裁量労働制の方がテレワークとの親和性が高いと考えられます。
裁量労働制とテレワークの組み合わせ例
専門業務型裁量労働制の適用を受ける研究開発職の社員が、自宅やサテライトオフィスでテレワークを行う場合。
企画業務型裁量労働制が適用される新規事業部門の社員が、リモートで企画立案や戦略策定を行う場合。
システム開発やプログラミングなどのIT関連業務に従事する社員が、裁量労働制の下でテレワークを実施する場合。
ただし、企業は以下の点に注意する必要があります。
労働者の勤務状況を適切に把握すること
健康確保の観点から適正な労働時間管理を行うこと
パソコンのログや自己申告などを通じて労働時間を記録すること
これには、勤怠管理システムを利用することで、勤務状況を適切に把握することが可能となります。
また以下の点について、労使双方で確認し、その結果に基づいて業務量などを見直すことが適切です。
労使協定で規定された時間が業務遂行に本当に必要な時間であるか
業務量が過多になっていないか
期限が不適切で労働者が時間配分を実質的に決定できない状況でないか
裁量労働制とテレワークの組み合わせにより、労働時間管理の自己申告の度合いが強まる傾向があるため、企業は適正な労働時間管理を行い労働者の実際の労働時間と申告時間のギャップに注意を払う必要があります。
【みなし労働時間制】制度の種類・要件をわかりやすく解説:まとめ
みなし労働時間制は、時間管理が難しい専門的な業務や企画業務において、労働者の創造性や専門性を最大限に引き出し、効率的な働き方を促進することを目的としています。
みなし労働時間制は、企業側にとって給与計算が容易であり、同時に従業員側には自身のペースで仕事を進めるメリットがあります。しかし、みなし労働時間制を導入したとしても、従業員の労働時間を把握することは必要です。
従業員は、遠隔地であってもスマートフォンを用いて打刻が可能であり、各自で勤怠状況を確認できる勤怠管理システムを活用することで、労働時間を適切に把握することができます。事業場外みなし労働時間制や、裁量労働制においても、労働者の健康保護を考慮しつつ、取決めや協定で定められた通りに労働状況を確認し、適切な労働時間を管理することが大切です。
みなし労働時間制は、従来の労働時間管理の枠組みに捉われず、時間や場所にとらわれない柔軟な働き方を実現し、成果主義的な働き方を実現するための選択肢の一つです。適切な労働時間を管理のできる環境を整えた上で、導入を検討しましょう。
厚生労働省
テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン(https://www.mhlw.go.jp/content/11911500/000683359.pdf)
裁量労働制の概要(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudouzikan/sairyo.html)
を加工して作成
