シフト制の雇用管理:トラブルを防ぐために

シフト制は勤務日や出勤時間が週によって異なる交代制の働き方です。
営業時間が長い飲食・コンビニなどや、病院・介護施設などで多く導入されています。ただ、シフト制は労働日や労働時間が不定期であるため、シフトが原因で起きるトラブルも少なくありません。シフト制を導入する場合は、労働紛争を予防するためにも、適切な労務管理が必要です。
この記事では、シフト制の契約や雇用管理について、トラブルを未然に防ぐために知っておくべきポイントを解説します。
Contents
シフト制の働き方
シフト制は、労働契約の締結時点では労働日や労働時間を固定せずに、一定期間ごとに作成される勤務シフトなどにおいて、初めて具体的な労働日や労働時間が確定する働き方となります。
シフト制には、その時々の事情に応じて柔軟に労働日・労働時間を設定できるという点で契約当事者双方にメリットがあり得る一方、労働日数・時間の設定が複雑だったり、労働者の希望に沿わない働き方になる場合があり、数々労働紛争が発生しています。
労働紛争を未然に防止し、上記のような形態を契約当事者双方にとってメリットのあるものとするため、使用者が現行の労働関係法令等に照らして適切な雇用管理を行うことが必要です。
シフト制労働契約の締結
労働契約締結時に明示すべき労働条件
労働条件をあいまいにしたまま労働契約を締結したために、労働者が不本意な労働条件で働かされ、使用者及び労働者間のトラブルとなるといった事態を未然に防止する観点から、労働契約の締結時には、労働者に対して以下の労働条件を明示しなければなりません。(労基法第15条第1項、労基則第5条)
必ず明示しなければならない事項
契約期間
期間の定めがある契約を更新する場合の基準
就業場所、従事する業務
始業・終業時刻、休憩、休日など
賃金の決定方法、支払い時期など
退職(解雇の事由を含む)
昇給
シフト制労働契約についても、労働契約の締結時に労働基準法所定の事項を明示しなければなりません。その中でも特に問題となりやすい始業及び終業の時刻や休日に関する事項については、以下の点に留意する必要があります。
始業・終業時刻
労働契約の締結時点において、すでに始業及び終業時刻が確定している日については、その日の始業及び終業時刻を明示しなければなりませんので、労働条件通知書等には、単に「シフトによる」と記載するのでは不足です。
労働日ごとの始業及び終業時刻を明記するか、原則的な始業及び終業時刻を記載した上で労働契約の締結と同時に定める一定期間分のシフト表等をあわせて労働者に交付するなどの対応が必要となります。
休日
労働契約の締結時に休日が定まっている場合や、具体的な曜日等が確定していない場合は、休日の設定にかかる基本的な考え方などを明示する必要があります。
労働基準法では、使用者は、労働者に対して、毎週少なくとも1回又は4週間を通じて4日以上の休日を与えなければならないこととされています(労働基準法第35条)ので、最低でもこうした内容を満たすような考え方を明示する必要があります。
なお、4週間を通じて4日以上の休日とする場合には、4週間の起算日を就業規則等において明らかにしておくことが必要です(労働基準法施行規則第12条の2第2項)。
シフト制労働契約で定めるルール例
シフト制労働契約ではトラブルを防止する観点から、上記の明示事項に加え、シフトの作成・変更・設定などについても労使で話し合ってルールを定めることが必要です。
作成例
シフトの作成時に、事前に労働者の意見を聞くこと
シフトの通知期限 例:毎月○日
シフトの通知方法 例:電子メール等で通知
変更例
一旦確定したシフトの労働日、労働時間をシフト期間開始前に変更する場合に、使用者や労働者が申出を行う場合の期限や手続
シフト期間開始後、確定していた労働日、労働時間をキャンセル、変更する場合の期限や手続
設定例
作成・変更のルールに加えて、労働者の希望に応じて以下の内容についてあらかじめ合意します。
一定の期間中に労働日が設定される最大の日数、時間数、時間帯
例:毎週月、水、金曜日から勤務する日をシフトで指定する一定の期間中の目安となる労働日数、労働時間数
例:1か月○日程度勤務/1週間あたり平均○時間勤務これらに併せて、一定の期間において最低限労働する日数、時間数などを定める。
例:1か月○日以上勤務/少なくとも毎週月曜日はシフトに入る

就業規則の作成
常時10人以上の労働者を使用する使用者は、始業及び終業の時刻や休日に関する事項などについて、就業規則を作成し、労働基準監督署に届け出ることが必要です。(労基法第89条第1号等)
シフト制 就労時の注意点
労働時間・休憩
労働時間の上限は原則1日8時間、1週40時間であり、この上限を超えて働かせるには36協定が必要です。(労基法第32条、第36条)
1日の労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を、勤務時間の途中で与えることが必要です。(労基法第34条第1項)
年次有給休暇
シフト制労働者の場合であっても、雇入れの日から起算して6か月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤したときは、労働基準法所定の日数の年次有給休暇を付与しなければなりません。(労働基準法第39条第1項、第2項)
所定労働日数・労働時間数に応じて、労働者には法定の日数の年次有給休暇が発生します。(労基法第39条第3項、労基則第24条の3)
使用者は、原則として労働者の請求する時季に年次有給休暇を取得させます。(労基法第39条第5項)「シフトの調整をして働く日を決めたのだから、その日に年休は使わせない」といった取扱いは認められません。
休業手当
シフト制労働者を、使用者の責に帰すべき事由で休業させた場合は、平均賃金の60%以上の休業手当の支払いが必要です。(労基法第26条)
使用者自身の故意、過失等により労働者を休業させることになった場合は、賃金の全額を支払う必要があります。(民法第536条第2項)
安全・健康確保
労働安全衛生法に基づく安全衛生教育(安衛法第59条)や健康診断の実施(安衛法第66条)などの義務は、シフト制労働者に対しても同様に適用されます。
※特に、健康診断やストレスチェックについては、定期にこれを実施することにより、労働者の心身の健康状態を把握し、その結果を踏まえた対策を実施することが重要であるため、業務量の変動により、勤務日数や労働時間数が一時的に減少したシフト制労働者についても、実施対象に含めることが望まれる。
シフト制労働者の解雇や雇止め
解雇
シフト制労働者と「期間の定めがある労働契約」(有期労働契約)を締結している場合、期間中はやむを得ない事由がなければ解雇できません。
期間の定めがない場合でも、客観的に合理的な理由等がなければ解雇できません。(労契法第17条第1項、第16条)
解雇する場合は、30日以上前の予告、または解雇予告手当の支払い(平均賃金の30日分以上)のどちらかが必要です。(労基法第20条第1項)
雇止め
一定の場合には、雇止め(労働者からの有期労働契約の更新等の申込みを使用者が拒否すること)ができません。(労契法第19条)
契約が3回以上更新されているか、労働者が雇入れ日から1年を超えて継続勤務している場合、雇止めには契約満了日の30日前の予告が必要です。(有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準第1条。
募集・採用・待遇・保険関係など
募集
労働者を募集する際には、業務内容・賃金・労働時間等の労働条件を明示することが必要です。(職業安定法第5条の3第1項、第2項)募集時に示した労働条件を、労働契約締結までに変更する場合、変更内容の明示が必要となります。(職業安定法第5条の3第3項)
均衡待遇
シフト制労働者がパートタイム労働者や有期労働契約の労働者である場合には、通勤手当の支給やシフト減に伴う手当の支払いなどで、正社員と比べて不合理な待遇にしないように留意します。(パートタイム・有期雇用労働法第8条)
社会保険・労働保険
シフト制労働者も労災保険の適用、給付の対象です。また労働時間などの要件を満たせば、雇用保険や健康保険・厚生年金保険の被保険者になります。
シフト制の雇用管理:トラブルを防ぐために:まとめ
シフト制は労働日や労働時間が不定期であるため、シフトが原因で起きるトラブルも少なくありません。労働紛争を予防するためにも、適切な労務管理が必要です。
シフト制の雇用形態は、正社員・パートなどさまざまで、1日の勤務時間や一週間の出勤日数が、従業員により異なるため、勤怠管理が複雑になりがちです。
まずは、正確な労働時間を記録・把握し、従業員毎のマスタに基本勤務時間やシフトパターンを入力できる勤怠管理システムを利用するなど、シフト制の労務管理を正確・適切に行い、労働紛争を防ぎましょう。
厚生労働省「シフト制」労働者の雇用管理を適切に行うための留意事項(https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000870906.pdf)を加工して作成
