繊維工業の特定技能制度がスタート!特有の追加要件を詳しく解説

繊維工業の特定技能制度

繊維工業はこれまで特定技能制度の対象外とされていましたが、2024年9月30日より、外国人材の受け入れを促進するための特定技能制度がスタートしました。ただし、繊維工業の特有の課題に対処するため、他の製造業にはない追加要件が設けられています。
この記事では、繊維工業における特定技能制度の特有の追加要件を、詳しく解説します。

繊維工業における特定技能制度導入について

深刻化する人手不足に対応するため、生産性向上や国内人材確保に取り組んでもなお人材確保が困難な産業分野において、即戦力となる外国人を受け入れる「特定技能制度」が2019年4月から実施されています。 この制度では、「特定技能1号」と「特定技能2号」の2つの在留資格が設けられています。

特定技能1号は、特定産業分野において相当程度の知識や経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格です。2024年6月末現在で251,594人の在留者がいます。
特定技能2号は、特定産業分野において熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格で、2024年6月末現在で153人の在留者がいます。

特定技能制度では、介護、ビルクリーニング、工業製品製造業など16の産業分野が対象となっていますが、2024年9月30日より、繊維工業もこの制度の対象となりました。

繊維工業における特定技能制度の概要

特定技能1号への移行ルート

今後作成・実施予定の技能試験及び日本語能力試験に合格した外国人は、特定技能1号の在留資格を得ることが可能となります。また、技能実習2号移行対象職種において約3年間の実習期間を良好に修了した外国人は、技能及び日本語試験が免除され、特定技能1号の在留資格を得ることが可能です。

  1. 【試験ルート】技能試験と日本語能力試験に合格する必要があります。

  2. 【技能実習からの移行ルート】技能実習2号移行対象職種において約3年間の実習期間を良好に修了した者は、技能試験と日本語能力試験が免除されます。

移行ルート

技能実習2号移行対象職種と特定技能1号の対象業務区分

技能実習2号を良好に修了した者は、特定技能1号に移行することで、技能実習と異なり、より幅広い業務に従事することが可能になります。
例えば、婦人子供服製造で技能実習2号を修了した者が、特定技能1号(縫製)に移行すると、婦人子供服だけでなく、紳士服や下着類などの縫製業務を行うことも可能になります。

特定技能外国人の受け入れに必要な手続き

特定技能1号の外国人を雇用するには、以下の手続きが必要です。

  1. 【事業の該当性確認】 特定技能外国人が行う作業内容が対象業務であるか、事業所の売上が製造業分野に該当するかの確認

  2. 【制度の適正な運用に係る確認】 特定技能外国人を受け入れる事業所は、「製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会」への入会が必要です。

  3. 【雇用契約】 受け入れ予定の外国人(国内、国外)と特定技能雇用契約を締結する必要があります。

  4. 【日本語能力及び技能の確認】試験ルートの場合は、技能試験と日本語能力試験に合格する必要があります。技能実習からの移行ルートの場合は、試験が免除されます。

  5. 在留資格(特定技能1号)の申請: 入国管理局に在留資格の申請を行います。

繊維工業における特定技能外国人の受け入れのための追加要件

繊維工業では、技能実習制度における賃金支払いの違反が多いことから、特定技能制度の導入にあたって、追加要件が設定されました。

既存製造業の要件

繊維工業は「工業製品製造業分野」に入りますので、まず既存製造業の要件を満たす必要はあります。

  • 派遣契約ではないこと

  • 受入企業の産業分野(日本標準産業分類で限定)

  • 特定技能の「受入れ協議・連絡会」の構成員であること

  • 経産省、協議・連絡会の指導、報告徴収等に協力すること

繊維工業の追加要件

これらの要件に加え、「国際的な人権基準に適合し事業を行っていること」「勤怠管理を電子化していること」「パートナーシップ構築宣言の実施」「特定技能外国人の給与を月給制とすること」の4つが、繊維工業の要件として加わります。
以下に、4つの追加要件を詳しく紹介します。

1. 国際的な人権基準に適合し事業を行っていること

【国際的な人権基準とは】

「国際的な人権基準に適合し事業を行っていること」とは、公開された監査要求事項等に基づき、第三者による認証・監査機関の審査を受け適合していることを指します。公開された監査要求事項には、労働における基本的原則及び権利に関する国際労働機関宣言に掲げられた基本的権利に関する原則が含まれることが必須となります。

これらの原則は、世界人権宣言や国際人権規約といった国際的に認められた人権の基準に基づいています。具体的な審査事項は以下の通りです。

  1. GOTS、OEKO-TEX STeP、Bluesignなど、リストに掲載されている監査・認証のいずれかを取得していること

  2. 申請時点で有効期限が3ヶ月以上残っていること

  3. 受入れ事業所において取得していること

審査における提出書類は、1〜3に記載された監査・認証のレポートや認定証となります。

2. 勤怠管理を電子化していること

「勤怠管理の電子化」の審査では、以下のポイントが確認されます。

  1. 「勤怠管理の電子化要件 登録システム一覧」に掲載されているシステムのいずれか、または同等の仕組みを導入していること

  2. 受入れ事業所で活用されていること

導入するシステムは以下の要件を満たす必要があります。

  1. 電子的に出退勤を記録できること (職場設置の一台のタブレットで自分の名前をタップすることで出退勤を記録する仕組みも可)

  2. 手作業を介さずにPCやクラウド等に打刻データが送信されること (紙からPCへの転記は不可)

  3. タイムカードで打刻の場合は上記2の対応が可能となっていること

  4. 打刻時間の修正は、原則本人が行うが、本人の同意があれば管理者による修正も可能であること

  5. 打刻時間を修正する場合、実際の打刻時間と修正した打刻時間の両方を確認することができること

3. パートナーシップ構築宣言の実施

「パートナーシップ構築宣言」は、事業者が取引先との共存共栄を目指し、以下の項目に取り組むことを宣言し、ポータルサイトで公表するものです。

  1. サプライチェーン全体の付加価値増大と新たな連携 (IT実装、BCP策定、グリーン調達の支援等)

  2. 下請企業との望ましい取引慣行(「振興基準」)の遵守、特に、取引適正化の重点5分野 (①価格決定方法、②型管理の適正化、③現金払の原則の徹底、④知財・ノウハウの保護、 ⑤働き方改革に伴うしわ寄せ防止)

4. 特定技能外国人の給与を月給制とする

繊維工業では、季節的な要因等による仕事の繁閑により、外国人労働者の生活が不安定となることを避けるため、「月給制」が要件となっています。
月給制の要件は以下の通りです。

  • 受注量の減少といった会社都合等を理由とする休業や有給休暇の取得を欠勤として扱い基本給から控除することは認められない

  • 1カ月あたりの所定労働日数の変動や変形労働時間制を採用することにより1カ月の所定労働時間が変動する場合においても、「1カ月単位で算定される額」で報酬を支給しなければならない。

  • 受入れ企業で雇用している日本人等の他の職員が月給制でない場合においても、特定技能外国人に対しては、月給制による報酬の支払が必要となる。

追加要件「勤怠管理を電子化」で適切な労務管理が可能に

繊維工業追加要件2の、勤怠管理のIT化を進めることで、人手不足解消に留まらず、適切な労務管理が可能となるほか、労務管理業務の効率化や生産性向上等が期待されます(その効果として、労働関係法規の遵守徹底等)。特に、管理部門に従事する社員が少ない小規模企業にとっては、勤怠管理業務のIT化により、働き方改革の推進につながります。

小規模企業の勤怠管理システム導入事例

創業:1961年、従業員数:12名、事業内容:染色整理業、自社製品販売(2024年3月現在)

この繊維企業では、60代以上の従業員も多く、すべての従業員がスマホを所有していないという状況を踏まえて、会社内にタブレット1台を導入しました。

Before=勤怠管理はタイムカードで実施

  • タイムカードに打刻された時間から、経営者が一人で転記、給与計算を実施。

  • 雇用形態により計算方法が煩雑で苦労していた。

  • 毎月半日程度かけて手入力により給与計算。

After=クラウド型勤怠管理システムを導入。

  • 勤怠打刻用にタブレットを1台購入。

  • 打刻は顔写真をタップ→出退勤ボタンの2ステップ。

  • システムに紐づけして給与計算もPC上で計算。

導入後の改善結果

  • 毎月半日程度の手入力による給与計算がゼロになった。

  • 社内経理業務の引継ぎ・承継のスムーズな遂行が期待できる。

  • 法令で求められるタイムカードの適正な保管が管理が容易になる。

勤怠管理システムTime-Rは、特定技能制度(繊維工業)における勤怠管理の電子化要件を満たすシステムとして採択されました。

繊維工業界からの反応

日本繊維産業連盟は、特定技能制度への繊維工業の業種追加を歓迎するコメントを発表しました。 同時に、外国人労働者の活用の前提として、DX化等による生産性向上や人手不足を踏まえた賃上げ等の処遇改善など、国内人材確保のための取り組みをより一層進めていくことを表明しています。

繊維工業の特定技能制度がスタート!特有の追加要件を詳しく解説:まとめ

繊維工業における特定技能制度の導入は、人手不足解消への期待と同時に、業界の抱える課題に対する真摯な取り組みの始まりを示しています。追加要件の設定は、単なる労働力確保にとどまらず、業界全体の労働環境と企業文化の改善を促す契機となるでしょう。
国際的な人権基準の遵守、勤怠管理システムの導入、パートナーシップ構築宣言、月給制の導入は、繊維工業界の持続可能性と魅力向上につながる重要なステップです。この制度を通じて、繊維工業界が革新的で魅力的な産業へと進化し、さらには日本の労働市場全体の質的向上に貢献することが期待されます。

経済産業省:繊維工業の上乗せ4要件について(https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/fiber/pdf/240904-2.pdf)を加工して作成