今こそ導入すべきフレックスタイム制とは

フレックスタイム制

フレックスタイム制とは、一定の期間にあらかじめ定めた総労働時間の範囲内で、労働者が始業・終業時刻、労働時間を自ら決めることのできる制度です。2019年の法改正で、労働時間の調整を行うことのできる期間が延長されました。今、多くの企業でテレワークが導入されていますがフレックスタイム制も併用することで、より柔軟な働き方の選択が可能となります。
まず、フレックスタイム制の法令について確認していきたいと思います。

フレックスタイム制のメリット

フレックスタイム制のもとでは、あらかじめ働く時間の総量(総労働時間)を決めた上で、日々の出退勤時刻や働く長さを労働者が自由に決定することができます。労働者にとっては、日々の都合に合わせて、時間という限られた資源をプライベートと仕事に自由に配分することができるため、プライベートと仕事とのバランスがとりやすくなります。
今なら新型コロナウイルス対策としても有効です。ラッシュ時を避けるための時差出勤や、学校が休校になり子供の面倒を見なければいけない状況になった場合など、フレックスタイム制によりフレキシブルに対応することができます。

フレックスタイム制の基本的なルール

フレックスタイム制の導入に当たっては、以下の基本的なルールを守る必要がります。

1.就業規則等への規定と労使協定の締結

以下の2点を満たしていればフレックスタイム制を導入することができます。

(ⅰ)就業規則等に、始業・終業時刻を労働者の決定に委ねることを定めます。

フレックスタイム制を導入するためには、就業規則その他これに準ずるものにより、始業及び終業の時刻を労働者の決定に委ねる旨を定める必要があります。

(ⅱ)労使協定で制度の基本的枠組みを定めます。

さらに、労使協定で以下の事項を定める必要があります。

  1. 対象となる労働者の範囲
  2. 清算期間
  3. 清算期間における総労働時間(清算期間における所定労働時間)
  4. 標準となる1日の労働時間
  5. コアタイム(※任意)
  6. フレキシブルタイム(※任意)

コアタイム
労働者が1日のうちで必ず働かなければならない時間帯です。必ず設けなければならないものではありません。
フレキシブルタイム
労働者が自らの選択によって労働時間を決定することができる時間帯です。必ず設けなければならないものではありません。

2.導入に当たっての留意事項 : 時間外労働に関する取り扱い

フレックスタイム制を導入した場合には、時間外労働に関する取り扱いが通常とは異なります。

  • フレックスタイム制を導入した場合には、労働者が日々の労働時間を自ら決定することとなります。そのため、1日8時間・週40時間という法定労働時間を超えて労働しても、ただちに時間外労働とはなりません。逆に、1日の標準の労働時間に達しない時間も欠勤となるわけではありません。
  • フレックスタイム制を導入した場合には、清算期間における実際の労働時間のうち、清算期間における法定労働時間の総枠(※)を超えた時間数が時間外労働となります。

清算期間における 法定労働時間の総枠

例えば、1か月を清算期間とした場合、法定労働時間の総枠が以下のとおりとなるため、清算期間における総労働時間はこの範囲内としなければなりません。

【例】

清算期間の暦日数 1か月の法定労働時間の総枠
31日 177.1時間
30日 171.4時間
29日 165.7時間
28日 160.0時間

(※1)特例措置対象事業場(常時10人未満の労働者を使用する商業、映画・映画の製作の事業を除く演劇業、保健衛生業、接客娯楽業)については、週の法定労働時間が44時間となるため、上記の式において1週間の法定労働時間を44時間として計算します。ただし、清算期間が1か月を超える場合には、特例措置対象事業場であっても、週平均40時間を超えて労働させる場合には、(30万円以下の罰金)36協定の締結・届出と、割増賃金の支払が必要です。

3.導入に当たっての留意事項 : 過不足に応じた賃金の支払い

フレックスタイム制を採用した場合には、清算期間における総労働時間と実際の労働時間との過不足に応じて、以下のように賃金の清算を行う必要があります。
清算期間における総労働時間など
総労働時間を超過した場合など

フレックスタイム制は始業・終業時刻の決定を労働者に委ねる制度ですが、使用者が労働時間の管理をしなくてもよいわけではありません。実労働時間を把握して、適切な労働時間管理や賃金清算を行う必要があります。

フレックスタイム制の清算期間

改正前のフレックスタイム制は、清算期間の上限が「1か月」までとされていたため、労働者は1か月の中で生活に合わせた労働時間の調整を行うことはできましたが、1か月を超えた調整をすることはできませんでした。昨年の法改正によって、清算期間の上限が「3か月」に延長され、月をまたいだ労働時間の調整により柔軟な働き方が可能となっています。

1.フレックスタイム制の清算期間の上限

フレックスタイム制の清算期間の上限は3か月ですので、2か月、3か月といった期間の総労働時間の範囲内で、労働者の都合に応じた労働時間の調整が可能となります。
たとえば、共働きで子育てをする夫婦の場合などの例を以下の記事で紹介しています。

フレックスタイム制の清算期間延長のイメージ

フレックスタイム制の清算期間延長の イメージ

2.清算期間が1か月を超える場合

清算期間が1か月を超える場合でも、繁忙月に偏った労働時間とすることはできません
清算期間が1か月を超える場合には、

(ⅰ)清算期間における総労働時間が法定労働時間の総枠を超えないこと

(=清算期間全体の労働時間が、週平均40時間を超えないこと)
清算期間が1か月を超える場合に、中途入社や途中退職など実際に労働した期間が清算期間よりも短い労働者については、その期間に関して清算を行います。実際に労働した期間を平均して、週40時間を超えて労働していた場合には、その超えた時間について割増賃金の支払いが必要です。 (労働基準法第32条の3の2)
なお、特例措置対象事業場については、清算期間が1か月以内の場合には週平均44時間までとすることが可能ですが、清算期間が1か月を超える場合には、特例措置対象事業場であっても、週平均40時間を超えて労働させる場合には、36協定の締結・届出と、割増賃金の支払が必要です。(労働基準法施行規則第25条の2第4項)

(ⅱ)1か月ごとの労働時間が、週平均50時間を超えないこと

清算期間が月単位ではなく最後に1か月に満たない期間が生じた場合には、その期間について週平均50時間を超えないようにする必要があります。
上記を満たさなければならず、いずれかを超えた時間は時間外労働となります。このため、月によって繁閑差が大きい場合にも、繁忙月に過度に偏った労働時間とすることはできません。

3.労使協定の届出

清算期間が1か月を超えるフレックスタイム制の導入には、この3点が必要です。

  1. 就業規則等への規定
  2. 労使協定で所定の事項を定めること
  3. 労使協定を所轄労働基準監督署長に届出

清算期間が1か月を超える場合には、労使協定を所轄の労働基準監督署長に届け出る必要があり、これに違反すると罰則(30万円以下の罰金)が科せられることがあります。清算期間が1か月以内の場合には届出は不要です。

完全週休2日制の事業場におけるフレックスタイム制

完全週休2日制の事業場において、残業のない働き方をした場合に、曜日の巡りによって想定外の時間外労働が発生するという不都合が起こりますが、労使が書面で協定(労使協定)することによって、「清算期間内の所定労働日数×8時間」を労働時間の限度とすることが可能になります。

(例)土・日が休日の事業場において、標準となる1日の労働時間を7時間45分とするフレックスタイム制を導入。

CALENDAR

このカレンダーの場合、清算期間における総労働時間 = 7時間45分×23日 = 178時間15分 = 178.25時間に対し、法定労働時間の総枠 = 8時間×23日 = 184時間となり、清算期間における総労働時間が法定労働時間の総枠に収まります。

まとめ

今回はフレックスタイム制の法令について確認してきましたが、2019年の法改正により柔軟な対応ができるようになっており、導入しやすくなっています。
次回は具体的な実務について「労使協定の締結に当たって注意すべきポイント」を紹介していきたいと思います。

厚生労働省: フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引きを加工して作成