【1年単位の変形労働時間制】業務の繁忙・閑散がある企業におすすめ

1年単位の変形労働時間制は、1か月を超える1年以内の期間において、1週間あたりの労働時間が40時間を超えないことを条件に、労働時間の配分を行う制度です。
業務の繁閑に応じ労働時間を配分することが可能ですので、1年を通じて業務の繁忙・閑散がある企業は、ぜひ利用したい制度です。
この記事では、1年単位の変形労働時間制について解説します。
Contents
1年単位の変形労働時間制のメリット
業務量の変動に対応した生産性向上と残業代の削減
変形労働時間制は、忙しい時期と比較的余裕のある時期が明確な業界で使われています。繁忙期には労働時間を増やし、閑散期には労働時間を減らすことで、業務量の変化に柔軟に対応できます。これにより、生産性の向上が期待でき、年間を通じての残業代も削減できます。
効率的な人員管理と企業イメージの向上
労働時間を調整することで、適切な人員配置が可能になり、労働力の効率化と生産性の向上が期待されます。また、多様な働き方を推進する企業としての姿勢を示し、社会的な要請に応える企業としてのイメージ向上にもつながります。
従業員の健康維持とモチベーションアップ
スケジュールの調整が可能なため、従業員の健康管理や過労防止に役立ちます。閑散期には短時間勤務や休暇の取得を促進することで、リフレッシュの機会を提供し、会社全体のモチベーションアップにつながります。
このように、変形労働時間制は企業に多くのメリットをもたらします。また、従業員にとっても、繁忙期と閑散期のメリハリがついた働き方が可能になり、休暇の計画が立てやすくなります。結果として、ワークライフバランスの維持にも寄与します。
1年単位の変形労働時間制が適した業種
1年単位の変形労働時間制が適している具体的な業種としては、以下のようなものが挙げられます。
- 製造業
- 製造業では、製品の需要が季節や市場の動向に応じて変動することが多いため、繁忙期に合わせて労働時間を増やし、閑散期に減らすことで効率的に生産活動を行うことができます。
- 小売業
- 小売業では、年末年始やセール期間、クリスマスなどの繁忙期に人手が必要となる一方で、これらの時期を過ぎると客足が減少することがあります。このため、1年単位の変形労働時間制を利用して、ピーク時に労働時間を増やし、閑散期に労働時間を減らすことで労働力を効率的に管理できます。
- 建設業
- 天候や季節の影響を受けやすい建設業では、夏場の工事が進みやすい時期に労働時間を増やし、冬季の工事が減る時期に労働時間を減らすことで、業務を効率的に進めることが可能です。
- 農業
- 農業では、収穫期や栽培時期などに労働力が集中するため、その時期に労働時間を増やし、作業の少ない時期には労働時間を減らすことで、労働力の調整が容易になります。
- 宿泊・観光業
- 観光客が集中するシーズンやイベント時期に合わせて労働時間を増やし、閑散期には労働時間を減らすことで、スタッフの配置を効率的に行うことができます。
これらの業種では、季節や時期によって業務量が大きく変動するため、1年単位の変形労働時間制が非常に効果的です。
1年単位の変形労働時間制の導入
労使協定の締結
以下の事項すべてを、各事項に関する説明に適合するよう、労使協定において定めます。
〈1〉対象労働者の範囲
法令上、対象労働者の範囲について制限はありませんが、その範囲は明確に定める必要があります。労働した期間が、以下〈2〉の対象期間より短い労働者については、割増賃金の支払を要する場合があります。
〈2〉対象期間及び起算日
対象期間は、1か月を超え1年以内の期間に限ります。 対象期間を具体的な期日でなく期間で定める場合に限り、当該期間の起算日も必要です。
〈3〉特定期間
〈2〉の対象期間中の特に業務の繁忙な期間を特定期間として定めることができますが、この特定期間は連続して労働させる日数の限度に関係があります。なお、対象期間の相当部分を特定期間とすることは法の趣旨に反します。
〈4〉労働日及び労働日ごとの労働時間
労働日及び労働日ごとの労働時間は、〈2〉の対象期間を平均し1週間当たりの労働時間が40時間を超えないよう、また、限度に適合するよう設定しなければなりません。また、特定した労働日または労働日ごとの労働時間を任意に変更することはできません。
なお、労働日及び労働日ごとの労働時間は、対象期間中のすべての労働日及び労働日ごとの労働時間をあらかじめ労使協定で定める方法のほか、対象期間を区切って定める方法があります。
〈5〉労使協定の有効期間
労使協定そのものの有効期間は〈2〉の対象期間より長い期間とする必要がありますが、1年単位の変形労働時間制を適切に運用するためには対象期間と同じ1年程度とすることが望ましいものです。
労働日及び労働日ごとの労働時間に関する限度
労働日及び労働日ごとの労働時間に関しては、次のような限度があります。
〈1〉対象期間における労働日数の限度(労使協定の締結の〈1〉〈2〉の対象期間が3か月を超える場合に限る)
対象期間における労働日数の限度は、1年当たり280日です。
対象期間が3か月を超え1年未満である場合は、次の式により計算した日数(端数切り捨て)となります。
280日 × 対象期間の歴日数/365
ただし、次のA及びBのいずれにも該当する場合には、旧協定の対象期間について1年当たりの労働日数から1日を減じた日数又は280日のいずれか少ない日数です(対象期間が3か月を 超え1年未満である場合は、上記と同様に計算した日数)。
A
事業場に旧協定があるとき。(旧協定=労使協定の締結の〈1〉〈2〉の対象期間の初日の前1年以内の日を含む3か月を超える期間を対象期間として定める1年単位の変形労働時間制の労使協定)
B
労働時間を次のいずれかに該当するように定めることとしているとき。
- 1日の最長労働時間が、旧協定の1日の最長労働時間又は9時間のいずれか長い時間を超える。
- 1週間の最長労働時間が、旧協定の1週間の最長労働時間又は48時間のいずれか長い時間を超える。
(例) 対象期間が1年である旧協定が1日の最長労働時間9時間、1週間の最長労働時間48時間、労働日数260日であったところ、今回、対象期間を1年、1日の最長労働時間を10時間とするので あれば、労働日数の限度は259日。
〈2〉対象期間における1日及び1週間の労働時間の限度
1日の労働時間の限度は10時間、1週間の労働時間の限度は52時間です。
ただし、労使協定の締結の〈1〉〈2〉の対象期間が3箇月を超える場合は、次のいずれにも適合しなければなりません。
- 労働時間が48時間を超える週を連続させることができるのは3週以下。
- 対象期間を3箇月ごとに区分した各期間において、労働時間が48時間を超える週は、週の初日で数えて3回以下。
なお、積雪地域において一定の業務に従事する者については、上記1.及び2.の労働時間が48時間を超える週についての制限はありません。その他、隔日勤務のタクシー運転の業務に従事する労働者のうち一定のものについては、1日の労働時間の限度は16時間です。
〈3〉対象期間及び特定期間における連続して労働させる日数の限度
対象期間における連続して労働させる日数の限度は6日です。
特定期間における連続して労働させる日数の限度は1週間に1日の休日が確保できる日数です。
労働日及び労働日ごとの労働時間の特定の特例
労働日及び労働日ごとの労働時間の定め方は、対象期間中すべてについて定める方法と、対象期間を1か月以上の期間ごとに区分して、各期間が始まるまでに、その期間における労働日及び労働日ごとの労働時間を定める方法があります。
対象期間を1箇月以上の期間ごとに区分して定める場合、対象期間が始まるまでに、労使協定において、次の事項を定めます。
A
- 最初の期間における労働日及び労働日ごとの労働時間
- 1.の期間以外の各期間における労働日数及び総労働時間
B
Aの2.の各期間の初日の30日以上前に、当該各期間における労働日及び労働日ごとの労働時間(ただし、Aの2.の労働日数及び総労働時間の範囲内でなければなりません。)を、過半数労働組合又は労働者の過半数を代表する者の同意を得て書面で定めます。
〈4〉労働基準監督署への届出
労使協定を締結した場合は、様式第4号により所轄の労働基準監督署に届け出ます。
〈5〉割増賃金の支払い
労働基準法第37条の規定に基づく割増賃金のほか、次の1.の労働者に対しては2.の労働時間についての割増賃金を同法第32条の4の2の規定に基づく割増賃金として支払わなければなりません。
1. 清算が必要な労働者
1年単位の変形労働時間制の適用を受けて労働した期間(以下「実労働期間」といいます。)が労使協定の締結の対象期間より短い労働者(対象期間の途中で退職した者や採用された者、配置転換された者など)であって、実労働期間を平均して1週間当たり40時間を超えて労働したもの。
2. 割増賃金の支払を要する労働時間
途中退職者等については当該退職等の時点で、途中採用者等については対象期間の終了時点(当該途中採用者等が対象期間終了前に退職等した場合は当該退職等の時点)で、次のように計算した時間です。

〈6〉育児を行う者等に対する配慮
育児を行う者、老人等の介護を行う者、職業訓練又は教育を受ける者その他特別の配慮を要する者については、これらの者が育児等に必要な時間を確保できるような配慮をしなければなりません。
【1年単位の変形労働時間制】業務の繁忙・閑散がある企業におすすめ:まとめ
1年単位の変形労働時間制は、多くのメリットを提供しますが、その一方で、労働時間の管理が非常に複雑になるというデメリットがあります。特に、業務の繁閑が頻繁に変動する企業では、適切な労働時間の調整が難しく、ミスが生じやすいです。そのため、正確かつ効率的な勤怠管理が求められます。
このようなリスクを回避し、制度を円滑に運用するためには、勤怠管理システムの導入が効果的です。システムを活用することで、煩雑な労働時間管理が自動化され、法令遵守と労働環境の最適化が実現し、企業全体の効率化と成長につながるでしょう。
厚生労働省「1年単位の変形労働時間制」(https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/library/tokyo-roudoukyoku/jikanka/1nen.pdf)を加工して作成
