副業解禁!企業と労働者の付随義務とは?

副業解禁

2018年の副業解禁元年から数年、コロナ禍でさらに副業への関心が高まり、副業・兼業を許可する企業が大きく増えました。
ただ、実際に副業解禁を進めるに当たっては、企業と労働者は労働契約上の主たる義務(使用者の賃金支払義務、労働者の労務提供義務)の他にも、様々な義務を負います。

この記事では、副業解禁を実行する際の付随義務について、詳しく紹介します。

副業解禁に伴う付随義務とは

実際に副業解禁に当たっては、企業と労働者の双方が納得感を持って進めることができるよう、企業と労働者との間で十分にコミュニケーションをとることが重要です。

労働契約法第3条第4項において、「労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならない。」とされています(信義誠実の原則)。信義誠実の原則に基づき、使用者及び労働者は、労働契約上の主たる義務(使用者の賃金支払義務、労働者の労務提供義務)の他、以下のように多様な付随義務を負います。

【副業解禁の義務.1】安全配慮

労働契約法第5条において「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」とされており(安全配慮義務)、副業・兼業の場合には、副業・兼業を行う労働者を使用する全ての使用者が安全配慮義務を負っています。

    副業解禁に際し問題となるのは、使用者が労働者の全体としての業務量・時間が過重であることを把握しながら、何らの配慮をしないまま労働者の健康に支障が生ずる等が考えられます。

    このための措置としては、

    • 就業規則、労働契約等(以下この(1)において「就業規則等」という。)において、長時間労働等によって労務提供上の支障がある場合には、副業・兼業を禁止又は制限することができることとしておくこと
    • 副業・兼業の届出等の際に、副業・兼業の内容について労働者の安全や健 康に支障をもたらさないか確認するとともに、副業・兼業の状況の報告等について労働者と話し合っておくこと
    • 副業・兼業の開始後に、副業・兼業の状況について労働者からの報告等により把握し、労働者の健康状態に問題が認められた場合には適切な措置を講ずること

    【副業解禁の義務.2】秘密保持

    労働者は、使用者の業務上の秘密を守る義務を負っています(秘密保持義務)。
    副業・兼業に関して問題となり得る場合としては、自ら使用する労働者が業務上の秘密を他の使用者の下で漏洩する場合や、他の使用者の労働者(自らの労働者が副業・兼業として他の使用者の労働者である場合を含む。)が他の使用者の業務上の秘密を自らの下で漏洩する場合が考えられます。

    このための措置としては、

    • 就業規則等において、業務上の秘密が漏洩する場合には、副業・兼業を禁止又は制限することができることとしておくこと
    • 副業・兼業を行う労働者に対して、業務上の秘密となる情報の範囲や、業務上の秘密を漏洩しないことについて注意喚起すること

    【副業解禁の義務.3】競業避止

    労働者は、一般に、在職中、使用者と競合する業務を行わない義務を負っています(競業避止義務)。

    副業・兼業に関して問題となる場合としては、自ら使用する労働者が他の使用者の下でも労働することによって、自らに対して当該労働者が負う競業避止義務違反が生ずる場合や、他の使用者の労働者を自らの下でも労働させることによって、他の使用者に対して当該労働者が負う競業避止義務違反が生ずる場合があります。

    したがって、使用者は、競業避止の観点から、労働者の副業・兼業を禁止又は制限することができます。しかし、競業避止義務は、使用者の正当な利益を不当に侵害してはならないことを内容とする義務であり、使用者は、労働者の自らの事業場における業務の内容や副業・兼業の内容等に鑑み、その正当な利益が侵害されない場合には、同一の業種・職種であっても、副業・兼業を認めるべき場合も考えられます。

    このための措置としては、

    • 就業規則等において、競業により自社の正当な利益を害する場合には、副業・兼業を禁止又は制限することができることとしておくこと
    • 副業・兼業を行う労働者に対して、禁止される競業行為の範囲や、自社の正当な利益を害しないことについて注意喚起すること
    • 他社の労働者を自社でも使用する場合には、当該労働者が当該他社に対して負う競業避止義務に違反しないよう確認や注意喚起を行うこと

    【副業解禁の義務.4】誠実な行動

    誠実義務に基づき、労働者は秘密保持義務、競業避止義務を負うほか、使用者の名誉・信用を毀損しないなど誠実に行動することが要請されます。

    このための措置としては、

    • 就業規則等において、自社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合には、副業・兼業を禁止又は制限することができることとしておくこと
    • 副業・兼業の届出等の際に、それらのおそれがないか確認すること

    【副業解禁の義務.5】副業・兼業の禁止又は制限

    副業・兼業に関する裁判例においては、労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは、基本的には労働者の自由であることが認められていますが、例外的に、労働者の副業・兼業を禁止又は制限することができる場合として、労務提供上の支障がある・業務上の秘密が漏洩する・競業により自社の利益が害される・自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合が認められています。

    このため、就業規則において、

    • 原則として、労働者は副業・兼業を行うことができること
    • 例外的に、上記1~4のいずれかに該当する場合には、副業・兼業を禁止又は制限することができることとしておくこと

    等が考えられます。

    なお、副業・兼業に関する裁判例においては、就業規則において労働者が副業・兼業を行う際に許可等の手続を求め、これへの違反を懲戒事由としている場合において、形式的に就業規則の規定に抵触したとしても、職場秩序に影響せず、使用者に対する労務提供に支障を生じない程度・態様のものは、禁止違反に当たらないとし、懲戒処分を認めていません。

    このため、労働者の副業・兼業が形式的に就業規則の規定に抵触する場合であっても、懲戒処分を行うか否かについては、職場秩序に影響が及んだか否か等の実質的な要素を考慮した上で、あくまでも慎重に判断したほうが良いでしょう。

    副業解禁!企業と労働者の付随義務とは?:まとめ

    この数年の間に、多くの企業が副業解禁を行いましたが、その前から日本型の終身雇用制度の崩壊や人手不足などさまざまな背景があり、働き方が大きく変化してきていることから、取り組むべき課題でした。

    副業解禁は、労働者と使用者である企業、それぞれにメリットだけでなくデメリットもあります。実際に副業を進めるに当たっては、労働者と企業の双方が納得感を持って進めることができるよう、企業と労働者との間で十分にコミュニケーションをとることが重要です。

    企業にとっては、副業解禁に付随する義務に伴い、労働者の労務管理が複雑になっていきます。個人毎の集計ルールを、詳細に設定できる勤怠管理システムサービスを利用するなど、労働時間の管理を正確に行い、今後の新しい働き方に対応していくことが求められています。

    厚生労働省:副業・兼業の促進に関するガイドライン (https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000192188.html)を加工して作成