【副業における労働時間】通算や上限規制を図解で解説

副業の労働時間

副業解禁に際して問題となるのは、従業員の労働時間管理が複雑になることです。自社と副業先の所定労働時間を通算して、法定労働時間を超える部分がないか注意が必要になります。

この記事では、副業を行う際の企業と労働者の付随義務を踏まえた上、副業を始めるステップ毎に原則的な労働時間管理の方法を紹介します。

【副業における労働時間】副業を始める前に

副業に関する届出

  • 労働者は、まず自身が勤めている会社の副業に関するルールを確認します。
  • 副業選択時は、ハローワークも活用し、自社ルールに沿った業務内容や就業時間の副業を選ぶことが重要です。
  • 副業先が決まったら、就業規則に従って会社に副業内容を届け出ます。

副業内容の確認

  • 使用者は労働者の副業を知ることができないため、労働者からの申告等により、副業の有無・内容を確認する必要があります。
  • 使用者は、副業が労働者の安全や健康に影響を与えないか、禁止または制限されていないか、次のような事項を確認しましょう。

基本的な確認事項

  1. 副業先の事業内容
  2. 副業先で労働者が従事する業務内容
  3. 労働時間通算の対象となるか否かの確認

労働時間通算の対象となる場合に確認する事項

  1. 副業先との労働契約の締結日、期間
  2. 副業先での所定労働日、所定労働時間、始業・終業時刻
  3. 副業先での所定外労働の有無、見込み時間数、最大時間数
  4. 副業先における実労働時間等の報告の手続
  5. これらの事項について確認を行う頻度

所定労働時間の通算

労働時間の通算方法は、
(A)原則的な労働時間管理の方法
(B)簡便な労働時間管理の方法(以下「管理モデル」)
の二通りあるため、それぞれの方法について(A)と(B)として分けて紹介していきます。
どちらの方法にするかは、副業を行う労働者ごとに、自社で取り入れやすい方法を採用します。

(A)所定労働時間の通算(原則的な労働時間管理の方法)

  • 自社の所定労働時間と副業先の所定労働時間を通算し、時間外労働となる部分があるかを確認。
  • 所定労働時間を通算した結果、自社の労働時間制度における法定労働時間を超える部分がある場合は、その超えた部分が時間外労働となり、時間的に後から労働契約を締結した企業が自社の36協定で定めに従ってその時間外労働を行わせます。

所定労働時間の通算

(B)管理モデルの導入(簡便な労働時間管理の方法)

  • 副業を行う労働者に、管理モデルにより副業を行うことを求め、労働者と(労働者を通じて)副業先がそれに応じることによって、導入されることが想定されます。
  • 自社と副業先の労働時間を通算して、法定労働時間を超えた時間数が時間外労働の上限規制である単月100時間未満、複数月平均80時間以内となる範囲内において、各々の事業場における労働時間の上限を設定します。
管理モデルとは?

副業の日数が多い場合や、自社と副業先の双方で所定外労働がある場合などにおいては、労働時間の申告等や労働時間の通算管理において、労使双方の事務負担が高くなることが考えられます。管理モデルは、そのような場合において、労使双方の手続上の負荷を軽くしながら、労働基準法に定める最低労働条件が遵守されやすくなる方法で、具体的な方法は以下のとおりです。

  1. 副業の開始前に、(A)当該副業を行う労働者と時間的に先に労働契約を締結していた使用者(以下「使用者A」といいます。)の事業場における法定外労働時間
    (B)時間的に後から労働契約を締結した使用者(以下「使用者B」といいます。)の事業場における労働時間(所定労働時間及び所定外労働時間)
    (A)(B)を合計した時間数が時間外労働の上限規制である単月100時間未満、複数月平均80時間以内となる範囲内において、各々の使用者の事業場における労働時間の上限をそれぞれ設定する。
  2. 副業の開始後は、各々の使用者が 上記1.で設定した労働時間の上限の範囲内で労働させる。
  3. 使用者Aは自らの事業場における法定外労働時間の労働について、使用者Bは自らの事業場における労働時間の労働について、それぞれ自らの事業場における36協定の延長時間の範囲内とし、割増賃金を支払う。
管理モデルのイメージ
Aに所定外労働がある場合

(A・Bで所定外労働が発生しうる場合に、互いの影響を受けないようあらかじめ枠を設定)

管理モデルのイメージ

※ 上図で示している時間外労働の上限規制(月100時間未満、複数月平均80時間以内)は、あくまでも法律上の上限です。実際の副業によって、労働時間を通算して法定労働時間を超える場合には、長時間の時間外労働とならないようにすることが望ましいです。

Aに所定外労働がない場合

Aに所定外労働がない場合

※ 上図は、Aに所定外労働がない場合のイメージですが、Aが法定労働時間の範囲内で所定外労働の上限を設定するような場合においても、同様の考え方で対応することが可能です。

時間外労働の上限規制とは?

時間外労働の上限については、月45時間、年360時間を原則とし、臨時的な特別な事情がある場合でも年720時間、単月100時間未満(休日労働含む)、複数月平均80時間(休日労働含む)を限度とされています。

時間外労働の上限規制

【時間外労働の上限規制が適用猶予・除外されている事業・業務】

時間外労働の上限規制が適用猶予・除外されている事業・業務】

新技術・新商品等の研究開発業務については、上限規制の適用が除外されています。

【副業における労働時間管理】副業が始まったら

健康管理

副業の開始後は、自社と副業先の所定外労働時間とを、労働が行われる順に通算します。

上記の所定労働時間の通算では、労働契約締結の先後の順となっており、所定労働時間と所定外労働時間で通算の順序に関する考え方が異なる点に注意が必要です。

(A)所定外労働時間の通算(原則的な労働時間管理の方法)

自社と副業先のいずれかで所定外労働が発生しない場合の取扱いは、以下のとおりです。

  • 自社で所定外労働がない場合は、所定外労働時間の通算は不要・自社で所定外労働があるが、副業先で所定外労働がない場合は、自社分のみ通算する
  • 自社で所定外労働があるが、副業先では無い場合は、自社の所定外労働時間のみ通算する

通算した結果、自社の労働時間制度における法定労働時間を超える部分がある場合は、その超えた部分が時間外労働となり、そのうち自ら労働させた時間について、自社の36協定の延長時間の範囲内とする必要があるとともに、割増賃金を支払う必要があります。

割増賃金を支払う必要がある例:1

企業A
時間的に先に労働契約を締結
所定労働時間1日3時間(7:00~10:00)ー①
当日発生した所定外労働2時間(10:00~12:00)ー③

企業B
時間的に後に労働契約を締結
所定労働時間1日3時間(15:00~18:00)ー②
当日発生した所定外労働1時間(18:00~19:00)ー④

割増賃金を支払う必要例

①+②+③で法定労働時間に達するので、企業Bで行う1時間の所定外労働(18:00~19:00)は法定時間外労働となり、企業Bにおける36協定で定めるところにより行うこととなります。企業Bはその1時間について割増賃金を支払う必要があります。

割増賃金を支払う必要がある例:2

企業A
時間的に先に労働契約を締結
所定労働時間1日3時間(14:00~17:00)ー①
当日発生した所定外労働2時間(17:00~19:00)ー④

企業B
時間的に後に労働契約を締結
所定労働時間1日3時間(7:00~10:00)ー②
当日発生した所定外労働1時間(10:00~11:00)ー③

割増賃金を支払う必要例

①+②+③+(④のうち1時間)で法定労働時間に達するので、企業Aで行う1時間の所定外労働(18:00~19:00)は法定時間外労働となり、企業Aにおける36協定で定めるところにより行うこととなります。企業Aはその1時間について割増賃金を支払う必要があります。

(B)管理モデルの導入(簡便な労働時間管理の方法)

副業を始める前に:所定労働時間の通算で設定した労働時間の上限の範囲内において労働させます。

使用者Aはその法定外労働時間について、使用者Bはその労働時間について、それぞれ割増賃金を支払います。

健康管理の実施

企業と労働者はコミュニケーションをとることで、副業による過労や業務への支障がないかを確認し合いましょう。

使用者は、労使の話し合いなどを通じて、以下のような健康確保措置を実施することが重要です。

  • 労働者に対して、健康保持のため自己管理を行うよう指示する
  • 労働者に対して、心身の不調があれば都度相談を受けることを伝える
  • 副業の状況も踏まえ必要に応じ法律を超える健康確保措置を実施する
  • 自社での労務と副業先での労務との兼ね合いの中で、時間外・休日労働の免除や抑制を行う

使用者の指示により副業を行う場合

原則として、副業先の使用者との情報交換により労働時間を把握・通算し、健康確保措置を行います。

なお、健康診断や長時間労働者に対する面接指導などは各事業場において実施されるものであり、その実施対象者の選定にあたって、副業先の労働時間は通算されないことに注意が必要です。

【副業における労働時間】通算や上限規制を図解で解説:まとめ

副業における労働時間の通算や上限規制を解説してきましたが、注意すべきは所定労働時間と所定外労働時間で通算の順序に関する考え方が異なる点です。
副業開始前の所定労働時間の通算では、労働契約締結の先後の順、副業開始後は自社の所定外労働時間と副業先における所定外労働時間とを労働が行われる順に通算します。このように通算ルールが複雑なため、見直しが検討されています。

副業は、知識や経験を得ることで従業員のスキルアップにつながり、主体的に働けるようになるというメリットがあります。今後、副業における労働時間の通算ルールが見直されれば、企業が副業解禁しやすくなり、さらに注目が集まるでしょう。

副業・兼業の促進に関するガイドラインわかりやすい解説(https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000996750.pdf)を加工して作成