雇用形態の多様化と人事労務の重要性

雇用形態とは、企業と従業員が締結する雇用契約の採用種別を指しますが、働き方改革の推進や価値観の多様化、テクノロジーの発展などの影響によるワークスタイルの変化に伴い、雇用形態の多様化が広がりました。
この記事は、雇用形態の定義やそれぞれのメリット・デメリットについて解説します。
Contents
雇用形態の種類
雇用形態には、さまざまな種類があり、近年あらたに追加されたものもあります。
1. 正社員
一般的には正社員とは雇用期間が無期限、且つ所定労働時間がフルタイムである正規雇用された社員を指しますが、この名称は、法律的には正社員の定義は明確ではありません。
メリット
長期的に人材育成が可能。優秀な人材を確保しやすい。
デメリット
見込み違いの採用だった場合も、雇用契約を終了することはできない。
業績が悪化した場合、正社員へ支払う給与・社会保険などが企業の経営を圧迫する。
2. 契約社員(有期労働契約)
契約社員の場合は、正社員と違い労働契約にあらかじめ雇用期間が定められています。これを有期労働契約といいます。
このような期間の定めのある労働契約は、労働者と使用者の合意により契約期間を定めたものであり、契約期間の満了によって労働契約は自動的に終了することとなります。
1回当たりの契約期間の上限は一定の場合を除いて3年です。ただし、高度な専門的な知識や技術、または経験を有する者や、満60歳以上の者と有期労働契約を締結する場合、例外的に5年の契約期間が認められています。
高度の「専門的知識等」を有する者
- 博士の学位を有する者
- 公認会計士、医師、歯科医師、獣医師、弁護士、一級建築士、税理士、薬剤師、社会保険労務士、不動産鑑定士、技術士又は弁理士のいずれかの資格を有する者
- システムアナリスト試験又はアクチュアリー試験に合格している者
- 特許法に規定する特許発明の発明者、意匠法に規定する登録意匠を創作した者又は種苗法に規定する登録品種を育成した者
- 大学卒で実務経験5年以上、短大・高専卒で実務経験6年以上又は高卒で実務経験7年以上の農林水産業の技術者、鉱工業の技術者、機械・電気技術者、システムエンジニア又はデザイナーで、年収が1075万円以上の者
- システムエンジニアとしての実務経験5年以上を有するシステムコンサルタントで、年収が1075万円以上の者
- 国等によりその有する知識等が優れたものであると認定され、上記①から⑥までに掲げる者に準ずるものとして厚生労働省労働基準局長が認める者
メリット
専門知識や技術を持った社員を一時的に雇用することができる。
デメリット
契約を更新できない場合は、改めて人材を探さなければならなず、業務が滞る可能性がある。
3. 派遣労働者
労働者が人材派遣会社(派遣元)との間で労働契約を結んだ上で、派遣元が労働者派遣契約を結んでいる会社(派遣先)に労働者を派遣し、労働者は派遣先の指揮命令を受けて働きます。
労働者に賃金を支払う会社と指揮命令をする会社が異なるという複雑な労働形態となっていることから、労働者派遣法において派遣労働者のために細かいルールが定められています。
労働者派遣では、法律上の雇い主はあくまで人材派遣会社(派遣元の会社)になります。よって事故やトラブルが起きた際は、まず人材派遣会社が責任をもって対処しなければなりません。
しかし、実際に指揮命令をしている派遣先の会社が全く責任を負わないというのは妥当ではなく、労働者派遣法において派遣元と派遣先が責任を分担するべき事項が定められています。
メリット
人件費を削減できる。
派遣会社が希望に合う労働者を紹介してくれるため、募集の手間がなくすぐに雇用ができる。
デメリット
責任のある仕事を任せにくい。
4. パートタイム労働者
パートタイム労働者とは、1週間の所定労働時間が、同じ事業所に雇用されている正社員と比べて短い労働者をいいます(パートタイム労働法では、「短時間労働者」といいます)。「パートタイマー」や「アルバイト」など、呼び方は異なっても、この条件を満たせばパートタイム労働法上のパートタイム労働者となります。
パートタイム労働者を雇用する使用者は、パートタイム労働法に基づき、公正な待遇の確保や正社員への転換などに取り組むことが義務付けられています。
また、労働者を雇い入れる際、使用者は、労働条件を明示すること、特に重要な条件については文書を交付することが義務付けられていますが、パートタイム労働法では、労働契約の締結・就業規則・労働保険・社会保険・障害者の雇用義務等に加え、昇給・退職手当・賞与の有無についても文書の交付などによる明示を義務づけています。
メリット
比較的簡単な業務をパートタイム労働者に担ってもらうことで、正社員の業務を効率化できる。
デメリット
シフトの調整に手間がかかる。
5. 短時間正社員
短時間正社員とは、フルタイムの正社員と比べて、その所定労働時間(所定労働日数)が短い正社員であって、次のどちらにもあてはまる労働者をいいます。
- 期間の定めのない労働契約を結んでいる
- 時間あたりの基本給および賞与・退職金などの算定方法などが同じ事業所に雇用される同種のフルタイムの正社員と同等である。
企業内において、このような働き方を就業規則に制度化することを指して、「短時間正社員制度」と呼んでいます。
メリット
優秀な人材の獲得や社員の定着率の向上、採用コストや教育訓練コストの削減、社員のモチベーションアップ、外部に対するイメージアップといったメリットがある。
デメリット
正社員や他の雇用形態の労働者からの不満が起こる可能性がある。
その他 業務委託
1. 業務委託(請負)契約
正社員や、上の1~4にある派遣労働者、契約社員、パートタイム労働者、短時間正社員などは、「労働者」として、労働法の保護を受けることができますが、「業務委託」や「請負」といった形態で働く場合には、注文主から受けた仕事の完成に対して報酬が支払われるので、注文主の指揮命令を受けない「事業主」として扱われ、基本的には「労働者」としての保護を受けることはできません。
ただし、「業務委託」や「請負」契約をしていても、働き方の実態から「労働者」であると判断されれば、労働法規の保護を受けることができます。
2. 家内労働者
家内労働者とは、通常自宅を作業場として、委託者から部品や原材料の提供を受け、物品の製造や加工などを行いその労働に対して工賃を受け取る人をいいます。いわゆる内職者の多くも、家内労働者に含まれます。
委託者と家内労働者は、請負契約となり雇用関係ではないので、労働基準法の適用はありませんが、使用者と労働者の関係に似ていることから家内労働法が定められており、家内労働者に仕事を委託する場合には、家内労働手帳の交付や最低工賃の順守など、家内労働法に基づいた対応が求められます。
厚生労働省では、家内労働者の労働条件の向上と生活の安定を図るため、家内労働法等に基づく施策を行っています。
3. 自営型テレワーカー
自営型テレワーカーとは、注文者から委託を受け、情報通信機器を活用して主として自宅又は自宅に準じた自ら選択した場所において、成果物の作成又は役務の提供を行う人をいいます。
法人や他者を使用している場合などを除くということなので、個人事業主でありその中でもオンラインで業務を行うことができる人を自営型テレワーカーと言うようです。
厚生労働省「在宅就業者総合支援事業」サイトでは、以下の様に記載されています。
現在、自営型テレワーク(在宅ワーク)で行われている主な仕事は、次のようなものがあります。情報通信機器の発達や技術の進歩により、仕事の多様化・専門化の傾向がみられます。
- 事務系業務:データ入力、集計、プレゼンテーション資料作成、資料の電子化など
- 編集系業務:ライティング、テープ起こし、誌面の編集、コピー作成など
- ビジネス支援系業務:調査、マーケティング、カウンセリングなど
- Web関連系業務:ホームページ制作、Web管理、ネットショップ運営など
- 開発系業務:プログラミング、システム開発、ネットワーク管理など
- デザイン系業務: DTPデザイン、イラスト制作、動画制作・編集など
- 教育・語学系業務:eラーニングチューター、翻訳など
自営型テレワーク(在宅ワーク)の発注方法には、エージェント(仲介事業者)を利用、クラウドソーシングサイトへ募集を掲載する方法があります。
雇用形態の多様化と人事労務の重要性:まとめ
近い将来、日本の生産年齢人口は確実に減少し、フルタイムで働ける人々も同様に減るでしょう。このような状況下でも優秀な人材を確保するためには、従来の正社員中心の雇用形態だけでなく、契約、派遣、パートタイムなどの労働者、さらに業務委託も含めて、企業の発展を担う一員として様々な雇用形態を導入することが必要となります。
また、現在では終身雇用は過去のものとなりつつあり、転職が一般的になっています。これらの事情を考慮に入れ、企業に適した人材を採用し、正社員とその他の労働者とのバランスを保ちながら、新しい雇用形態の組み合わせを用いて事業を展開することが求められています。
そのためには、適切な勤怠管理や人事労務が重要です。入社前の経歴や保有資格を考慮に入れキャリアを最大限に活かしたり、入社後の能力育成やキャリアパスの策定を行うことが可能な人事労務を実現できる勤怠管理システムを利用することで、雇用形態の多様化に対応していきましょう。
厚生労働省: さまざまな雇用形態
(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudouseisaku/chushoukigyou/koyoukeitai.html)を参考に作成
