育成就労制度は特定技能制度へのステップ|技能実習に代わる新制度に期待

育成就労制度・特定技能制度

これまで長年にわたり問題視されてきた技能実習制度が2024年3月末に廃止が決定、新たに創設する育成就労制度が、2027年までに施行される見通しです。
育成就労制度は、人材不足解消だけでなく、外国人労働者の権利保護、スキル向上、長期的なキャリア形成を総合的に支援する制度です。育成就労制度は特定技能制度へのステップとして位置づけられています。
この記事では、新たな育成就労制度と、関連の深い特定技能制度について、詳しく解説します。

育成就労制度が創設された背景

技能実習制度の問題点

日本の技能実習制度は、1993年に「技能実習法(現:技能実習制度)」が制定され、外国人労働者を技能実習生として受け入れる体制が整備されました。当初は日本の技術を発展途上国に伝えることが目的でした。
しかし、実際には低賃金で働く外国人労働者を確保するための手段として利用されることが多く、その後、制度の目的が歪められていくことになります。特に2000年代後半から、技能実習生に対する人権侵害がメディアで取り上げられ、社会的な関心が高まりました。

2010年代に入ると、技能実習制度に対する批判が強まり、政府や関係機関は改善に向けた取り組みを始めました。特に2017年に改正された「技能実習法」では、実習生の保護を強化するための新たな規定が盛り込まれ、監視機関の強化や労働条件の改善が求められるようになりました。
ただ、これらの規定は、抜本的な解決には至らず、2022年に実施された監督指導では、技能実習を実施する事業場の73.7%で労働基準関係法令違反が認められたのです。

労働基準関係法令違反グラフ

何十年も問題視されてきた中で、やっと制度改革に踏み切ったきっかけは、人権侵害や労働搾取の問題が長年にわたって指摘され続けたことや、国際的な批判の高まり、また日本国内の深刻な人手不足により、日本の経済的利益と国際的評価を守るために抜本的な改革が急務となったためと思われます。

技能実習制度の廃止がようやく実現したことは、遅すぎたものの、新しく制定された育成就労制度は、外国人労働者が技術や知識を習得できて、安定した収入と労働権利を享受する機会を提供するものになります。
外国人労働者が日本の労働市場で活躍することで、産業ごとの人手不足を補い、経済の活性化に寄与することが、期待されています。

出典:技能実習生の実習実施者に対する監督指導、送検等の状況(令和4年)
(https://www.mhlw.go.jp/content/11202000/001154731.pdf)を加工して作成

育成就労制度〜特定技能へのステップ〜

2024年6月21日、「出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律」が公布されました。この改正により、従来の技能実習制度が廃止、新たに育成就労制度が創設されます。

施行後は、激変緩和措置として3年間の移行期間が設けられ、技能実習制度と育成就労制度が併存(技能実習生と育成就労外国人が混在)することとなります。

育成就労制度の目的

育成就労制度の目的は、日本の人手不足分野における人材の育成と確保です。具体的には、特定産業分野において、外国人材が3年間の就労を通じて特定技能1号水準の技能を習得し、将来的に日本で就労できるようにすることを目指しています。
新しい制度により、外国人労働者の人権を守りながら、日本の人手不足解消に貢献してもらうことが期待されています。

育成就労制度の概要

対象分野

育成就労制度の対象となるのは、「育成就労産業分野」と呼ばれる特定産業分野です。これは、特定技能制度の受入れ分野のうち、就労を通じて技能を修得させることが適切と判断された分野を指します。

制度の枠組み

育成就労制度では、以下の3つの段階が想定されています。

  • 育成就労(3年間): 特定技能1号取得を目指し、技能と日本語能力の習得に励みます。

  • 特定技能1号(5年間): 特定技能1号の資格を取得し、日本で就労します。

  • 特定技能2号(制限なし): 特定技能2号の資格を取得し、より高度な技能を活かして日本で就労します。

特定技能制度との関係

育成就労制度は、特定技能制度と密接に関係しています。
育成就労制度で3年間の就労を終えた外国人は、特定技能1号の試験を受けることができます。試験に合格すれば、特定技能1号の資格を取得し、引き続き日本で就労することができます。
特定技能1号の試験に不合格となった場合でも、再受験のための最長1年の在留継続が認められます。

育成就労制度と特定技能制度との関係

出典:出入国在留管理庁/特定技能制度の概要について
(https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/fiber/pdf/240904-1.pdf)を加工して作成

特定技能制度〜一定の技術や知識を持つ労働者を確保〜

特定技能制度とは?

特定技能制度は、国内人材を確保することが困難な状況にある産業分野において、一定の専門性・技能を有する外国人を受け入れることを目的とする制度です。改正出入国管理法により在留資格「特定技能」が創設され、2019年4月から受入れが可能となりました。

特定技能制度では、生産性向上や国内人材確保の取り組みをしてもなお人材を確保することが困難な状況にある産業分野において、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人を受け入れています。

2つの在留資格

特定技能制度では、外国人材の技能レベルや職種に応じて、二種類の在留資格が設けられています。

1.特定技能1号

特定産業分野における相当程度の知識や経験を必要とする業務に従事する外国人向けの資格です。

  • 在留期間は最長5年で、1年、6か月又は4か月ごとの更新が可能です。

  • 家族の帯同は原則認められていません。

  • 受入れ機関または登録支援機関による支援が必要です。

特定技能1号の受け入れ対象となる産業分野

介護 / ビルクリーニング / 工業製品製造業 / 建設 / 造船・舶用工業 / 自動車整備 / 航空 / 宿泊 / 自動車運送業 / 鉄道 / 農業 / 漁業 / 飲食料品製造業 / 外食業 / 林業 / 木材産業

2.特定技能2号

特定産業分野における熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの資格です。

  • 在留期間は3年以上で、3年、1年又は6か月ごとの更新が可能です。

  • 要件を満たせば家族(配偶者、子)の帯同が可能です。

  • 受入れ機関または登録支援機関による支援の対象外です。

特定技能2号の受け入れ対象となる産業分野

ビルクリーニング / 工業製品製造業 / 建設 / 造船・舶用工業 / 自動車整備 / 航空 / 宿泊 / 農業 / 漁業 / 飲食料品製造業 / 外食業

分野独自の要件

繊維工業の外国人実習生

特定技能制度の対象となる産業分野の中で、工業製品製造業には、独自の要件があります。

繊維工業(紡織製品製造区分及び縫製区分)

  1. 国際的な人権基準を遵守し事業を行っていること

  2. 勤怠管理を電子化していること
    参照:電子化の要件

  3. パートナーシップ構築宣言を実施していること

  4. 特定技能外国人の給与を月給制とすること

繊維工業の特定技能制度については、以下で詳しく解説していますので、ご覧ください。
繊維工業の特定技能制度がスタート!特有の追加要件を詳しく解説

印刷・同関連業(印刷・製本区分)

全日本印刷工業組合連合会、全国グラビア協同組合連合会、全日本製本工業組合連合会のいずれかに所属していること。

こん包業

日本梱包工業組合連合会に所属していること。

受入れ機関

特定技能を持つ外国人を実際に雇用する企業などの受入れ機関は、雇用契約を結び、適切な支援を行う義務があります。受入れ機関は、指定された基準や法令を遵守しなければならず、基準を満たさない場合は認可されません。

1.受入れ機関の基準

  1. 外国人と結ぶ雇用契約が適切(例:報酬額が日本人と同等以上)

  2. 機関自体が適切(例:5年以内に出入国・労働法令違反がない)

  3. 外国人を支援する体制あり(例:外国人が理解できる言語で支援できる)

  4. 外国人を支援する計画が適切(例:生活オリエンテーション等を含む)

2.受入れ機関の義務

  1. 外国人と結んだ雇用契約を確実に履行(例:報酬を適切に支払う)

  2. 外国人への支援を適切に実施 → 支援については、登録支援機関に委託も可。全部委託すれば、上記、受入れ機関の基準の3.も満たす。

  3. 出入国在留管理庁への各種届出

※1~3を怠ると外国人を受け入れられなくなるほか、出入国在留管理庁から指導、改善命令等を受けることがある。

登録支援機関

受入れ機関から委託を受けて、特定技能外国人への支援業務を行う企業や団体は、直接雇用は行わず、受入れ機関が果たすべき支援を代行します。登録支援機関は、出入国在留管理庁に登録されることで、その役割を正式に担います

1.登録を受けるための基準

  1. 機関自体が適切(例:5年以内に出入国・労働法令違反がない)

  2. 外国人を支援する体制あり(例:外国人が理解できる言語で支援できる)

2.登録支援機関の義務

  1. 外国人への支援を適切に実施

  2. 出入国在留管理庁への各種届出

※1.2.を怠ると登録を取り消されることがある。

支援計画の概要

「特定技能1号」の在留資格を持つ外国人労働者が、日本で安心して働き、生活できるようにするためには、受入れ機関による支援が不可欠です。この支援を実現するための計画が「支援計画」です。

支援計画は、特定技能1号の外国人労働者が、職場や日常生活、社会生活をスムーズに送るために必要な支援を実施するための計画です。受入れ機関は、この計画を作成し、実施することが義務づけられています。支援計画には、外国人労働者の支援内容を具体的に定めることが求められます。

支援計画に含まれる内容には、以下のような項目があります。

  • 職業生活や日常生活の支援内容

  • 支援責任者および支援担当者の情報

  • 支援の実施を委託する場合、委託先の情報

これらの情報を、外国人労働者の在留資格認定証明書の申請時などに提出しなければなりません。

支援計画に記載すべき10項目

支援計画には、外国人が日本で快適に過ごし、仕事に従事できるようにするために必要な10項目が記載されています。具体的には、以下の内容が含まれます。

事前ガイダンス外国人労働者が日本に来る前、または在留資格を変更する際に、労働条件や生活情報を説明します。
送迎の手配入国時に空港から住居まで、帰国時には空港の保安検査場までの送迎を行います。
住居確保・生活支援住居の手配や生活に必要な契約(銀行口座、携帯電話など)の支援を行います。
生活オリエンテーション日本での生活に必要なルールや公共機関の利用方法を説明します。
公的手続きへの同行住居や社会保障、税務などの手続きをサポートし、必要に応じて同行します。
日本語学習支援日本語教室への案内や学習教材の提供を行い、語学力向上のサポートをします。
相談・苦情対応職場や生活に関する相談を受け、必要な助言や指導を行います。
日本人との交流促進地域住民や自治会との交流を促進し、地域行事への参加支援を行います。
転職支援 受入れ機関の都合で雇用契約が解除された場合、転職先の紹介や求人活動の支援を行います。
定期的な面談と通報定期的な面談を実施し、労働環境に問題があれば適切に通報します。

支援計画の実施方法

受入れ機関は、支援計画の一部または全部を外部の支援機関に委託することができます。
例えば、登録支援機関に委託することも可能で、その場合、支援体制が整っているとみなされます。登録支援機関が担当する場合でも、受入れ機関は最終的な責任を負うことになりますので、計画的に支援を実施することが重要です。

支援計画がもたらす効果

支援計画がしっかりと作成され、実施されることで、外国人労働者が日本での生活を安心して送ることができます。これにより、外国人労働者が日本の職場で長期間安定して働くことができるようになります。
結果として、受入れ機関側も安定した労働力を確保でき、双方にとってメリットのある環境が整うのです。

施行までのスケジュール(技能実習制度からの移行)

技能実習制度から育成就労制度への移行は、段階的に進められる予定です。
改正法は成立後3年以内に施行されることとされており、2027年に施行となると見込まれています。

  • 2024年(令和6年): 基本方針、主務省令等の作成

  • 2025年(令和7年): 事前申請(監理支援機関の許可等)

  • 2026年(令和8年): 分野別運用方針の作成(育成就労産業分野の設定等)

  • 2027年(令和9年): 改正法施行

施行までのスケジュール

3年間の移行期間

施行後は、激変緩和措置として3年間の移行期間が設けられるため、概ね2030年までは技能実習制度と育成就労制度が併存し、技能実習生と育成就労外国人が混在することになります。
移行期間中、企業は現行の技能実習制度を通じて外国人材を受け入れることもできますが、同時に新制度である「育成就労制度」を見据えた準備を進める必要があります。

育成就労制度導入後、企業は従来以上に厳格なコンプライアンスが求められます。具体的には、長期的な人材育成計画の策定、日本語教育の提供、労働環境の改善、分野別協議会への参加、転籍時の適切な対応が必要となります。
また、外国人育成就労機構による監督指導が強化され、労働基準法や入管法の遵守がより厳しく評価されるため、企業は制度の要件を十分に理解し、適切な体制を整備することが重要となります。

育成就労制度は特定技能制度へのステップ|技能実習に代わる新制度に期待:まとめ

日本語試験や技能試験に合格した外国人材は限られており、特定技能外国人を雇用する場合は、外部に委託して雇用や支援計画を立てる必要があり、そのコストが中小企業にとって大きな負担となります。そのため、技能実習制度が、現実には安価な労働力を確保する手段として不正利用されてきました。

育成就労制度は、技能実習制度に代わる新たな枠組みとして、特定技能制度への重要なステップとなります。3年間の育成就労を経て高いスキルを身につけた労働者は、企業にとっての重要な戦力となります。

外国人労働者の受け入れにあたっては、新制度を視野に、法令遵守と権利保護に努め、外国人労働者が安心して働ける環境を提供することが重要です。これらの取り組みは、持続可能な雇用関係を築く鍵となり、企業の成長と日本社会の発展に大きく寄与することでしょう。

※この記事の情報は2024年11月時点のものです。随時、法務省、経済産業省の新着情報をご確認ください。